防衛力強化へ有事に備え整備する「特定利用空港・港湾」、全国16カ所指定

防衛力強化へ有事に備え整備する「特定利用空港・港湾」、全国16カ所指定

政府が関係閣僚会議で決定、滑走路延長など自衛隊や海保が使いやすく改修

政府は4月1日、「総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議」(議長・林芳正官房長官)を持ち回りで開催し、防衛力を抜本的に強化するために平時から必要な整備を進めておくインフラ設備「特定利用空港・港湾」に、全国の空港と港湾16カ所を指定することを決めた。

対象は空港が北九州、長崎、福江(長崎県)、宮崎、那覇の5カ所。港湾が苫小牧、釧路、室蘭、留萌、石狩港新湾、高松、高知、須崎(高知県)、宿毛湾(同)、博多、石垣の11カ所。

通常は民間用をメーンとして運用することを前提にした上で、海外からの攻撃など有事に備え、自衛隊や海上保安庁が訓練や物資の輸送をしやすくなるよう改修する。


指定を決めた空港・港湾の一覧(同会議資料より引用

既に特定公共施設利用法で有事の際、民間の空港や港湾を自衛隊や米軍が優先的に使えるようにする仕組みを設けているものの、平時に空港や港湾を整備できる明確な根拠がなかった。北朝鮮による弾道ミサイル発射や中国の覇権主義の動きなどを警戒し、備えを強化する狙いがある。

政府は2024年度予算で370億円を充て、滑走路の延長や港湾の海底部分掘り下げなどに着手する予定。

政府は特定利用空港・港湾の選定に当たって10道府県の33カ所を候補に挙げ、地元自治体と調整を続けてきたが、同意を得られなかったところもあった。

林官房長官は4月1日の記者会見で「政府としては、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を踏まえれば、国民保護や部隊の展開、災害時の対応などにおいて、自衛隊・海上保安庁の能力を最大限発揮するため、平素から訓練を行う必要があると考えており、わが国防衛上、多様な空港・港湾を平素から円滑に利用できることが重要。今回は、このような国家安全保障戦略を踏まえた取組の第一歩となるもの」と強調した。

(藤原秀行)

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