物流効率化へ新たな法的規制導入の方向性固まる★続報

物流効率化へ新たな法的規制導入の方向性固まる★続報

官民検討会で政府が「最終取りまとめ」原案提示、大筋で了承

国土交通、経済産業、農林水産の3省は5月19日、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催し、物流が直面しているトラックドライバーの長時間労働規制強化に伴い物流の混乱が懸念される「2024年問題」をはじめ、人手不足などの諸課題を解決し、持続可能な物流を実現するための具体策に関する議論の「最終取りまとめ」の原案を提示した。

2月8日に策定した「中間取りまとめ」の方向性を踏襲。物流効率化の促進へ一定規模以上の荷物を扱う荷主企業や物流事業者を対象に、非効率な商慣習の改正などに関する中長期の計画作成と進捗の定期報告を義務付け、取り組みが著しく不十分な場合は国が是正を勧告・措置命令できるようにする法的措置の具体的な検討を進めるべきだと明言した。

併せて、荷主や元請けの運送事業者が実運送事業者を把握できるようにするための「運送体制台帳(下請け事業者リスト)」の作成などを求めることも打ち出した。

原案は大枠で了承され、新たな法的規制導入の方向性が固まった。検討会は6月16日の次回会合で、最終取りまとめの修正案を議論する。

「物流改善が消費者や市場に評価される仕組み作りを」

原案は「2024年を前に諸課題が先鋭化・鮮明化している中、これまで規定してきたことの実効性を確保するため取り組むべき政策について提示する」と趣旨を説明。「2024年で対策が終わりということではなく『始まり』であり、これから提示した政策について、継続的に取り組む必要がある」と強調している。

その上で、荷主企業や物流事業者の物流業務改善の進捗状況が消費者や市場から評価されるよう、物流改善のランク評価付けなどの仕組みを創設することなどを提案。消費者の意識を変革するため、荷物配達日を分散した場合にインセンティブを付与するといった施策を実施すべきだとの見解を示した。

大きな焦点となってきた、物流改善を後押しするための法的な規制に関しては、一定規模以上の荷物を扱う荷主企業や物流事業者を対象に、中長期で改善を目指す計画作成と進捗の定期報告を義務化し、その進捗が著しく不十分な場合は国が是正を勧告・措置命令できるようにする法的措置を検討すべきだと主張した。同時に、トラックドライバーらの労働時間をより正確に管理し、荷主側と情報共通できるシステムの導入なども提案した。

企業に対し化石由来ではないエネルギー使用の拡大を求める改正エネルギー使用合理化法(省エネ法)の仕組みを参考にしている。法的措置の具体的な枠組みについては最終取りまとめで明記しておらず、今後の関係省庁などの検討に委ねている。

また、かねてから問題点として指摘されてきた、運送業界の下請け構造是正や運送業務の契約条件明確化のため、同じく下請け構造が状態化している建設業界を参考に、元請けの運送事業者に対し、下請け運送事業者の名称や各事業者が担っている運送業務の内容を記載した「運送体制台帳(下請け運送事業者リスト)」の作成を義務付けることを打ち出した。

さらに、発荷主企業と着荷主企業の間の商取引で商品販売価格に物流費を含める商慣行 (店着価格制)が存在する実態に言及。「着荷主にとって、繁忙期を避けた発注や発注の大ロット化やパレチゼーション等の物流負荷軽減に資する取り組みを行うインセンティブが働かない状態となっている」と懸念を表明。

基準となる商品価格を設定し、物流サービスに応じて価格を変動させる「メニュープライシング」など、商取引における物流コストの見える化を促進する施策を主張した。

ドライバーの賃金水準向上に関し、改正貨物自動車運送事業法に基づく不当行為をしていると疑われる荷主への働き掛け制度や、国交相が告示する「標準的な運賃」制度の期限を延長することなども含めた、「改善に向けた取り組みがより一層進むような施策を検討すべき」と明記。中小・零細事業者の事業承継を円滑に進めるための支援も求めた。

このほか、デジタル技術を活用した共同輸配送や帰り荷の確保、官民連携の物流資機材などの標準化も引き続き促進することを要望した。

(藤原秀行)

原案はコチラから(経産省ホームページ)

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