日本郵船と日本製紙など、木材チップ専用船で「掻き出しロボット」のトライアル実施

日本郵船と日本製紙など、木材チップ専用船で「掻き出しロボット」のトライアル実施

遠隔操作で安全・持続的な荷役の実現目指す

日本郵船と日本製紙は4月12日、知能技術、岩国産業運輸の両社とも連携し、4月5日に日本製紙岩国工場(山口県岩国市)で荷役中の木材チップ専用船の船倉内で、木材チップを掻き出すロボットの遠隔操作トライアルを実施したと発表した。

本トライアルは、船倉内の作業環境や労働安全性の向上に加え、働き手不足などの社会的課題の解決を図るのが狙い。

掻き出しロボットの開発により、さらに安全で持続的な荷役環境を整備し、将来は荷役現場から離れた場所でのロボット操作で男性・女性・高齢者・障がい者といった多様な人が従事できる仕事の在り方を実現していきたい考え。4社は2024年度中に初号機の完成と実荷役での使用を目標にしている。

本トライアルは日本郵船と日本製紙の長期輸送契約に従事する木材チップ専用船で掻き出しロボットの試作機による作業を行った。荷役中に船倉内で約2時間にわたって遠隔操作を行い、機能性や安全性を確認した。

各社の役割
社名 役割
日本郵船 ・木材チップ専用船の運航者
・ロボット開発の企画と統轄
日本製紙 ・木材チップ荷主
・掻き出し作業の機械化による船倉内の作業環境や労働安全性の向上という、社会的課題の解決を提起
知能技術 ・掻き出し機能の基本設計、およびロボット開発
岩国産業運輸 ・搔き出し作業実施者
・トライアルによるロボットの性能評価

木材チップ専用船では、船倉内に積載された木材チップをショベルカーで寄せ集め、クレーンにより荷揚げしている。船倉の隅に溜まり壁に付着した木材チップを回収する際は、重機が届かなかったり、そぎ落とす時に船倉壁を傷付けたりしてしまう危険があるため、作業員がスコップやフォークのような道具を使って掻き出し作業を行っている。

掻き出し作業には高さ10mほどの船倉内を上り下りする必要がある上、季節要因で船倉内が低温・高温になりやすく、木材チップが酸素を吸収するため酸欠のリスクもあるなど、現状の過酷な作業環境は改善する余地が大きい。作業員の高齢化に伴う将来の人員不足深刻化も懸念されている。


掻き出し作業を行う作業員

掻き出しロボットは、リモコンでの遠隔操作で油圧ショベルカーのアームと、取り付けられたスクレーパー(へら)とブラシを動かして木材チップを掻き出す。高さ3mまでアームを伸ばして壁に付着したチップをはがし取る。船倉の隅に溜まった木材チップはアームの位置を下げ、ブラシで直接寄せ集めるか、押し出している。

構造物の隙間など、狭い空間に挟まった木材チップを掻き出すことも可能。


船倉内で木材チップを掻き出すロボットの遠隔操作トライアルの様子


掻き出しロボットの先端部分

(藤原秀行)※いずれも日本郵船と日本製紙提供

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