優遇税制の計算誤り、損金過大に参入と判断か
日本郵船、商船三井、NSユナイテッド海運の大手3社が、東京国税局から外航海運事業者を対象とした法人税の優遇措置を受ける際、誤った税務申告があったとして、合計約60億円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。
関係者によると、申告漏れの額は2023年3月期までの数年間で日本郵船が約9億円、商船三井が約21億円、NSユナイテッド海運が約30億円に上るもよう。東京国税局は3社に過少申告加算税を含めた約12億円を追徴課税し、3社は応じた。
日本郵船と商船三井はロジビズ・オンラインの取材に対し「指摘を受けて既に適切に納税を済ませた」と説明している。
関係者によると、申告漏れを指摘されたのは、2008年に始まった、外航海運事業者を対象とする制度「トン数標準税制」。国土交通大臣が認定した外航海運事業者に関し、船舶の純トン数や稼働日数などから算出する「みなし利益」を基に法人税を計算する。
海運市況は大きく変動し、外航海運事業者の利益も年ごとに上下が激しい傾向があるため、同税制を採用することで税額を安定させ、外航海運事業者が中長期的な船舶や船員確保などの経営計画を立てやすくするのが狙い。
外航海運事業者が実際に稼いだ利益がみなし利益を上回った場合は、上回った分を損金に算入、課税対象となる所得を減らせるメリットがある。
3社は申告漏れを指摘された期間中、誤って利益を多めに計算していたため、東京国税局は損金を実態より多く算入したと判断したもようだ。
(藤原秀行)