テイケイワークス東京
独自スキームで障がい者や高齢者を戦力化
3PLの人手不足対策と労働法令順守を支援
一般社団法人 日本3PL協会
加藤 進一郎 専務理事
テイケイワークス東京
若月 学 代表取締役
物流系総合人材企業のテイケイワークス東京は、障がい者や高齢者を戦力に育てる独自の人材育成法を作り上げることで、3PLの人手確保と労働法令順守を支援している。さらに今年12月、障がい者就労支援事業者のリハスおよび日本GLPとの3社共同で「GLP ALFALINK流山2」に「見える・見守る就労支援施設」を開設する。(進行:本誌編集部)
未経験者を経験者に育てる
──まずは日本3PL協会の活動状況から。
日本3PL協会 加藤進一郎 専務理事(以下、3PL協会・加藤)「日本3PL協会は『協創と実践』をコンセプトに掲げて2005年に設立されました。ハマキョウレックスの大須賀正孝会長CEOが初代会長を務め、当初は84社が参加する任意団体としてスタートしました。2009年に一般社団法人化して、2017年からはAZ-COM丸和ホールディングスの和佐見勝社長に会長を務めてもらっています」
「3PL協会の会員数は一貫して増え続けており、2024年2月現在302社に上っています。そのうち約6割が3PLを含む『運輸・倉庫』事業者ですが、他にも荷主企業やマテハンメーカー、IT、物流不動産、人材派遣、コンサルなど、サプライチェーン全域を網羅する業種が集まっています。3PL協会を舞台に、業界内の横のつながりと業種の多様性がもたらす『協創』が生まれています」
テイケイワークス東京 若月学 代表取締役(以下、TW東京・若月)「当社は現在、『協業と探究』をテーマに掲げています。そのため3PL協会の『協創と実践』という考え方にとても共感して、従来から協会の活動に積極的に参加してきました。今年7月には3PL協会の『改善ソリューション委員会』から依頼を受けて、当社の取り組みを発表する機会もいただきました」
3PL協会・加藤「3PL協会では現在、『EC物流委員会』『改善ソリューション委員会』『現場見学会』の3つのワーキンググループを設けて、それぞれ月に1回の勉強会と年1回の『成果発表会』を開催しています。その発表会でテイケイワークス東京が障がい者や高齢者を対象に行っている就労支援の取り組みについて、若月さんに報告してもらいました」
「近年『人的資本経営』という考え方が急速に浸透してきています。〝人財〟を〝資源〟ではなく〝資本〟として捉え、その価値を最大限引き出すことで企業価値向上につなげています。つまり、人財・ノウハウなど、非財務情報が重視されてきています。既に海外のグローバル企業の統合報告書は非財務情報についての説明が内容の大半を占めるようになっています。日本のプライム市場でもその開示が求められるようになりました」
「物流改革も今後は人事戦略と連動させていく必要があると考えます。『CLO』と共に『CHRO(チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー)』が重要になってくる。人財をコストと考えて使い捨てるのではなく、教育に投資をしてリターンを得るという発想の転換が必要です。テイケイワークス東京をはじめ協会メンバーの人材系企業には、そうした視点からの協創を大変期待しています」
──物流企業の人材育成の現状をどうご覧になっていますか。
TW東京・若月「ご存知の通り、今はあらゆる企業が人手不足に苦しんでいます。これからますます厳しくなっていくというネガティブな見方ばかりです。しかし、それは経験者に固執し過ぎているせいだと思います。いない人をどれだけ募集しても効果はありません。そうではなく、未経験者を経験者に育てることを考えるべきです。教育に投資をすれば先々は経験者を抱えることができます。未経験者を経験者に育成するトレーナーも育つ。好循環が生まれます。そうした取り組みの一環として当社は障がい者や高齢者を庫内作業の経験者に育てる就労支援事業に取り組んでいます」
──今年4月1日から障がい者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられました。当然ながら3PLにも対策が求められます。
TW東京・若月「40名以上が働く企業は1名以上の障がい者雇用(編集部注:障がいの程度と週の労働時間に応じて計算され、週30時間以上常時雇用する場合、重度でない障がい者は1名1カウント、週20時間以上30時間未満は0.5カウント)が義務付けられ、さらに26年度には法定雇用率が2.7%に引き上げられることが決まっています」
「これを順守しようと、多くの企業がカウントを稼ぐことばかりに目が向いてしまい、障がい者を戦力化することができていません。障がい者を現場に出さず、ほとんど付加価値のないことばかりに従事させている。あるいは法定雇用率を満たせずに、ペナルティを支払っている。しかし、法定雇用率の未達企業の企業名を公表する制度が始まっていますから、ESGやブランディングを重視する企業はそれもできなくなってきた」
3PL協会・加藤「2024年問題でも省庁が連携して、悪質な荷主の企業名を公表するようになったのと同じ流れですね。それもまた『人的資本経営』の一つの側面なのだと思います」
「見える・見守る就労支援施設」開設
TW東京・若月「そこで当社は今年6月、千葉県流山市の『GLP ALFALINK流山6』に、『施設外就労先(就労支援施設の障がい者などが企業から請け負った業務を出向いて行う現場)』となる寄託倉庫を設けました。当社が施設内のテナントから受託した業務を通じて、ラベル貼りや袋詰め、箱作りなどの作業を障がい者や高齢者の方にも行っていただきます」
「3PLや荷主には現場を公開しています。障がい者の方でも十分に戦力になることを理解してもらうためです。現場を視察した3PLから要請があれば、そのスタッフを当社が紹介することもできます。それによって、そのスタッフは不安なく職に就けるし、3PLは法定雇用率をクリアし、かつ即戦力を確保できる」
「さらに今年12月には『ALFALINK流山2』にスペースを確保して、障がい者就労支援センターを運営するリハスと日本GLPの3社共同で『見える・見守る就労支援施設』を開設します。その利用者の方たちも『ALFALINK流山6』で業務に当たっていただきます。そうしたステップを設けることで未経験の障がい者を経験者に育成して、物流業界で活躍するという流れを作っていきます」
──『見守る』というのは?
「障がい者のケアはご家族にとって大きな問題です。本人が就労すれば家族の負担は軽減されるかも知れないけれど、心配は増える。そこで障がい者の家族の方にも同じ施設内で働いてもらう。ずっと横に張りついているわけではなく、何かあったらすぐに駆けつけることのできる状態で働くことで、本人も家族も安心できます」
3PL協会・加藤「障がい者雇用については、これまで3PL協会で本格的に取り上げたことがありませんでした。私自身、学ばないとけないことがたくさんあります。若月さんの情報発信には今後も期待しています」
お問い合わせ先
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