運送業の多重下請け構造是正へ官民検討会が対策議論開始

運送業の多重下請け構造是正へ官民検討会が対策議論開始

国交省、マッチングサービスや「水屋」含めた実態調査へ

国土交通省は8月23日、「トラック運送業における多重下請構造検討会」の初会合を東京・霞が関の同省内で開いた。

検討会は有識者のほか、オブザーバーとして業界団体や労働組合、関係省庁の幹部らが参加。

トラック運送業界などから運賃適正化を妨げている要因の1つとして、何重にもわたる多重の下請け構造が挙げられているのを考慮。現状の下請け構造の実態を調査で明らかにした上で、多重下請けの是正に向け、法規制の可否などを議論し、2024年度中にも最終取りまとめを策定する。

実態調査は今年8~11月にかけて実施することを想定。下請けの運送事業者に加え、荷物とトラックを仲介する求貨求車のマッチングサービス運営事業者や、車両を保有せず運送案件の仲介を担い、手数料を得ている「専業水屋」と呼ばれる仲介事業者も調査対象に加え、何次まで請負が発生しているのかや下請け先をどのように選定しているのか、マッチングや仲介の手数料がどの程度の水準なのかといった項目を調査することを念頭に置いている。

トラック運送業界には、マッチングサービスや専業水屋が、国土交通省が設定している「標準的運賃」とかけ離れた安値で車両を確保していることなどから運賃相場を引き下げる要因になっているとの反発が根強い。国交省は調査によって実態を正しく把握し、適正な対策を講じられるようにしたい考え。

初会合の冒頭、国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は多重下請け構造の実情をアンケート調査で明らかにしていくことに強い意欲を表明。検討会座長に就いた野尻俊明流通経済大学名誉教授は「下請け構造もどんどん深刻化、多層化してきたが、いままでなかなか真正面から切り込むことが難しかった。現実がどうなっているのか把握した上であるべき姿を検討しようと(検討会事務局に)依頼している。より良い成果を挙げられるようにしたい」と強調した。


検討会の初会合

「2024年問題」対策の一環として政府が物流施設でのトラックの荷待ちや荷役時間短縮などを図るため、今年の通常国会に提出した改正2法が可決された際、衆参両院で出された付帯決議では、多重下請け構造の是正と運賃適正化を図るため、専業水屋の実態を把握し、規制措置の導入も含めて必要な対策を講じるよう求めていた。

初会合では全日本トラック協会の幹部が、今年3月に策定した多重下請け構造是正に関する提言を紹介。実運送を担う事業者は2次下請けまでにとどめたり、マッチングサービスや水屋への規制を導入したりすることなどを求めている点に言及し、対応を講じるようあらためて呼び掛けた。

国交省からは、23年に実施したトラック運送事業者へのアンケート調査結果で、業務を下請けに出す際は3割が請け負った金額の9割に満たない水準で委託していることや、専業水屋に該当する第1種利用運送事業者に運送仲介を依頼する際も同様の傾向が見られることなどを紹介した。

また、建設業法や測量法で、建設業者や測量業者が請け負った業務を下請けに丸投げすることを禁じている点や、米国では運送事業者として業務を受注した場合、別の事業者に再委託することを禁止している点も報告した。

(藤原秀行)

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