パーソル総研と中央大が共同研究結果公表、産業全体で1.85倍深刻化見込む
パーソル総合研究所と中央大学は10月17日、共同研究「労働市場の未来推計2035」を公表した。
現状の経済状況が続くと仮定した場合、2035年にかけてシニア層や女性、外国人の労働参加が進み就業者数は増えるものの、1日当たり1775万時間、労働力に換算して384万人相当が不足すると試算。23年と比較すると、労働力不足は1.85倍深刻化するとみている。
産業別では、最も労働力が不足するのは「サービス業」で1日当たり115万人相当(532万時間)、「卸売・小売業」(77万人相当・354万時間)や「医療・福祉」(49万人相当・226万時間)、「建設」(44万人相当・203万時間)なども厳しい状態になると見込んでいる。「運輸・郵便」は23万人相当(108万時間)と予測している。
(共同研究資料より引用)
両者によると、就業者数(労働供給)は23年時点の6747万人から30年は6959万人、35年は7122万人に増加していくと想定。特に女性の労働力率(労働参加率)の上昇幅が大きく、60代前半の女性は65.3%から85.7%、60代後半の女性も43.7%から69.8%へ上昇すると見積もっている。
外国人就業者数(労働供給)は23年時点の205万人から30年に305万人、35年には377万人へ拡大していくと予想している。
その一方で就業者1人当たりの年間労働時間は、政府の一連の働き方改革の影響などで23年の1850時間から30年に1776時間、35年に1687時間まで減少していく見通しを立てている。その結果、トータルで見れば人手不足が深刻化していくと判断している。
両者は対応として、時間にしばられない柔軟な働き方が当たり前になることを視野に入れて、労働市場の推計や施策の検討の際は「(働く)人数×時間」の観点で捉えることが重要と指摘。
シニア層やパートタイムの就業者、副業希望の就業者など多様なショートワーカーの「働きたい」に基づく労働市場整備、人的資本投資や新たなテクノロジーを活用した労働生産性の向上を図るよう提案している。
(藤原秀行)