【独自取材】「物流施設市場の成長は必ず踊り場が来る、その備えが不可欠」

【独自取材】「物流施設市場の成長は必ず踊り場が来る、その備えが不可欠」

大和ハウス工業・浦川取締役常務執行役員インタビュー(後編)

大和ハウス工業で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員(建築事業推進部長)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

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浦川氏は物流施設の差別化戦略として、今後もコールドチェーン需要が見込まれることを踏まえ、冷凍・冷蔵倉庫への対応を引き続き重視する姿勢を示した。

また、中長期的には人口減少による国内の物流需要減で市場成長が踊り場を迎える局面が必ず来ると予想。その対応として海外展開に注力する必要性を強調した。インタビューの後編を掲載する。


海外展開などについて語る浦川氏

日本と海外の物流を組み合わせて「食の安全」に貢献

―物流施設も近年は開発競争が激しい中、機能などの面で差別化がますます重要になってきています。御社はどのような取り組みをされていますか。

「冷凍・冷蔵関係の開発はおそらく当社が日本のデベロッパーの中でも最も多く手掛けてきたうちの1社ではないでしょうか。前半でもお話ししましたが、グローバルサプライチェーンの拡大という中にはコールドチェーンも含まれており、当社としても対応に注力しています。例えば当社は今年4月、沖縄で初めてBTS型物流施設の開発に着手していますが、これはテナントのお客さまが東南アジアで加工された食品を沖縄経由で日本へ輸入することを計画されています。別のお客さまは日本から東南アジアの4温度帯倉庫へ輸出しており、その海外の拠点展開を当社がお手伝いしています」

「冷凍・冷蔵倉庫は管理の難易度が非常に高いですが、当社は日本国内でもマルチテナント型施設の中でドライと冷凍・冷蔵を併設したり、4温度帯倉庫を手掛けたりしていますし、国際基準を満たした冷凍・冷蔵倉庫の開発・運営でも実績を重ねています。きっちりとニーズにお応えしていくのがわれわれの使命だと思っています」


沖縄県浦添市で開発する「Dプロジェクト沖縄浦添」(大和ハウス工業提供)

―コールドチェーンの需要は引き続き見込まれるとみていますか。

「現状を見れば、間違いなくそうだと思いますね。これはかねて申し上げていることですが、残念ながら日本の農林水産業は後継者不足などから元気がなく、生産高は大きく落ち込んでいます。食料自給率も4割を割り込んでいます。漁業もここ20年で漁獲高が激減しました。この先も生産の担い手が少子高齢化で増えないとなればますます輸入に頼らざるを得ない」

「併せて、国や民間企業などは高品質な農水産物の輸出を増やそうと取り組んでいます。そうした状況を考えれば、穀物も含めて温度管理が不要な食品はほとんどありませんから、輸入元の現地と受け入れる日本の双方で鮮度管理、品質管理、温度管理がきちんとなされていなければ日本の食の安全を保てません。日本の物流と海外の物流をうまく組み合わせていかなければ駄目な時代になってきています」

―最近は物流施設の中でも生産業務を取り込むなど機能の複合化が目立ちます。御社はその点についてどうお考えですか。

「まさにマルチファンクション化は当社でも非常に意識しているところです。一例を挙げれば、東京・有明のユニクロ向け『Dプロジェクト有明Ⅰ』は店舗のバックヤード機能を備えるとともに、オーダーに合わせた流通加工も担う高機能型物流センターとして稼働しています。オフィス機能も備え、従来の倉庫、店舗、オフィスの垣根を越えた未来志向の拠点と位置付けています。他にもさまざまなケースに対応してきています」

―物流業界ではトラックドライバーをはじめ人手不足かあちこちで叫ばれています。御社は以前からスタートアップ企業とも連携し、物流ロボットなど先進技術の導入支援に積極的ですが、今後デベロッパーとしてどのように対応されますか。

「AI(人工知能)の活用や自動化はさらに力を入れていく必要があると感じています。それに加えて、今後は物流業界の働き方改革が進む中で、長距離輸送の際の『中継物流』が増えてくると思いますので、当社としても中継物流を意識した物流施設を造っています。埼玉県で開発している『DPL坂戸』などは高速道路のスマートICに直結させる計画です。中継物流に関しては、今はまだ物流事業者の方々より当社の方が必要だと主張する声が大きいかもしれませんが、いずれは広く必要とされてくると期待しています」

ターニングポイントは50年100年先の出来事ではない

―御社はグループ全体で海外事業拡大を目指しています。物流施設については今後どのように展開していきますか。

「サプライチェーンのグローバル化を受けて、既にベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアで事業化しており、先ほどのお話にも出てきたようにコールドチェーン対応にも注力しています。日系企業の需要は非常に旺盛です。他にシンガポールで開発の準備を進めているほか、ミャンマーで用地を確保しました。米国も用地の選定を進めています。人口が増え、経済も成長を続けていますから北米は決して無視できないマーケットです。きっちりと研究し、後発でも可能な開発のやり方を探っていきたいと思います」


マレーシアのクアラルンプールで同国初のマルチテナント型施設となる「Dプロジェクト マレーシアⅠ」の完成イメージ(大和ハウス工業提供)

―2019年以降も物流施設の大量供給が見込まれていますが、中長期的に市場をどうご覧になりますか。

「今は需要がありますから、日本の物流施設開発に専念していても問題はありませんが、やがて人口が減り内需が縮小して生産設備が今以上に海外へ移っていけば、日本に果たしてこれほど多くの物流施設が必要ですか?と問われてしまうターニングポイントを必ず迎えます。その時期が遅いか早いかという問題だけであって、ずっと右肩上がりで物流施設の需要が伸びていくことなどあり得ないでしょう。いつか踊り場を迎える時が来ます」

―そのターニングポイントはいつごろ来るとみていますか。

「来年なのか10年後なのか、はっきりしたことは申し上げられませんが、少なくとも50年も100年も先の出来事という感じではないでしょう。供給過剰の時が来てもあわてないような開発の仕方を今のうちから準備しておくべきです。それがグローバルサプライチェーンへの対応であり、海外事業拡大です。これからも変わり続けている日本のものづくりをサポートしていきます」

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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