JLL・内藤リサーチディレクターが指摘、25年も資金流入予想
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は11月27日、日本の不動産市場に関するメディア向け説明会を東京都内で開催した。
この中で、不動産への投資状況について、国内の不動産取引高は既に2023年通年の規模を上回り、2024年としては約10年ぶりに5兆円に到達する可能性が大きいと指摘。物流施設は大型の取引案件が減って金額は前年から縮小しているが、取引自体は活発化しており、25年も海外投資家から優良な案件への投資が見込まれると展望した。
JLLによると、セクター別の取引高の比率を見た場合、24年の第1~3四半期累計(1~9月)では、物流施設が2割弱で、23年からは下がっているものの、オフィスビルやホテルに次ぐ位置にある。
地域別では、特に名古屋圏で、過去に竣工した大型案件の取引が成約したことなどで、物流施設が投資の約6割と最多を占めており、他の首都圏や大阪・関西圏、福岡・北部九州圏よりも比率が大きくなっている。
日本銀行が大規模な金融緩和からスタンスを修正し、金融政策の正常化に向け利上げを図っているが、説明会に登壇したJLL日本のキャピタルマーケット事業部の内藤康二リサーチディレクターは、今年7月末に日銀が利上げした際、金融市場が大混乱したことに触れ「日銀はさらなる金利引き上げには慎重にならざるを得ない」と予測。
低金利の結果、日本の資金借り入れコストは欧米などよりも以前低水準なことなどから、引き続き海外投資家は日本の不動産市場に注目するとの見方を示した。
また、24年のセクター別の、海外投資家の物件取得割合は、物流施設で7割を超え、20年の3割から大きく拡大し、他のセクターも大きく引き離していることを紹介。
最近は海外投資家がまだ不動産投資に回していない「待機資金」(ドライパウダー)が、特に価格変動のリスクが比較的少なく、安定的な収益を上げると見込まれているオフィスビルなどの「コア資産」を対象とした領域で積み上がっており、今後はドライパウダー消化のため、日本のオフィスビルや物流施設などに資金が向かうとみられると予想した。
内藤氏は、物流施設がこれまでオフィスビルなどの伝統的なコア資産の代替的存在「オポチュニスティック資産」として位置付けられてきたが「海外投資家の間では、日本の物流施設は既にコア系資産として受け止められている」と展望し、引き続き投資資金の流入が見込まれるとの見解を示した。
(藤原秀行)