中継拠点設置の動きなど地区から報告も
日本倉庫協会は11月15日、東京都内で「第21回物流フォーラム」を開催し、全国13地区の実行委員がそれぞれの倉庫稼働状況などを報告した。
会場には300人余りが集まった。参加者からは賃貸型物流施設の供給が増えているとの声が複数の地区から出ていたほか、「物流2024年問題」を受けた長距離輸送効率化のための中継拠点設置の動きについても言及があった。併せて、倉庫の現場でも人手不足が見過ごせない問題となっているのを踏まえ、倉庫業界としても自動化に取り組んでいく必要性を指摘する向きがあった。
今回のフォーラムは「物流技術の進化とデジタル変革:倉庫業の将来」をテーマに設定。冒頭、同協会の松本年可フォーラム実行委員長(住友倉庫執行役員東京支店長)があいさつし、「多くの課題を抱える物流業では、デジタル技術を活用した課題解決は大きな業務変革のチャンスと言える。倉庫事業者においても、社会的ニーズのDXやGX(グリーントランスフォーメーション)について積極的に取り組んでいくことで(事業の)価値を高めていく必要がある」と参加者に呼び掛けた。
あいさつする松本委員長
300人余りが集まった会場
各地区の報告では、東北、関東、埼玉、兵庫、中国の5地区が大型物流施設の開発動向について触れており、都市部以外でも開発ラッシュが継続していることをあらためて印象付けた。
東北からは昨年3月に閉鎖となった宮城県大和町の競輪場外車券売り場跡地で大手デベロッパーが開発を計画していることなどを紹介。埼玉は物流施設の供給過剰に加え、作業員の確保競争激化で、関係者間では労働者不足に拍車が掛かることが危惧されていると指摘した。
また、中継拠点の動きについて、長距離輸送の中間エリアとなり得る中部や中国の地区担当から報告が寄せられた。
半導体関連の倉庫需要について、北海道と九州の担当が紹介。北海道は次世代半導体生産を手掛けるラピダスの進出で千歳市近郊は地価の高騰が始まっており、工場稼働開始後は交通渋滞発生などの問題を注視していく必要があると解説した。九州も熊本市で福岡地所や林倉庫、ジョイントが共同で物流施設開発プロジェクトを展開していることなどに触れた。
九州の代表は「われわれ倉庫事業者には今後、進出企業のサプライチェーン構築がもたらす物流需要への的確な対応が求められていると認識している」と訴えた。
物流DXの実態や必要性についても複数の地区が発言。関東は栃木県の宇都宮市で自動配送ロボットが自律的に次世代路面電車「LRT(ライトライン)」に乗って弁当を届ける実験が行われたことを解説した。
中部は今年10月に名古屋で開業した産学官連携のスタートアップ育成拠点「STATION Ai(ステーションAI)」で、革新的技術が生まれ、物流分野の課題解決にも貢献することに期待を寄せていると語った。近畿は滋賀で2年間の事業としてAI委員会を立ち上げたことを明らかにした。
報告の後、旧大蔵省出身で現在は嘉悦大学教授を務める政策工房会長の高橋洋一氏が「日本経済の現状とこれから」と題して基調講演を行った。併せて、人材採用や育成、物流DX、法律の各テーマで分科会も実施した。
(川本真希、藤原秀行)