年末記者会見、ロジ・嶋本社長は2024年問題対応へ新輸配送システム拡大など明言
ニチレイは12月10日、東京都内の本社で、同社を含むグループ主要事業会社4社の社長会見を開催した。
ニチレイの大櫛顕也社長は、グループの低温物流事業に関し「食品事業とともに海外事業の推進を加速していく」と語り、欧州や東南アジアで物流施設開発など成長のための投資を続ける姿勢を強調した。
また、米トランプ次期大統領の就任に伴い、通商や関税の領域で大きな混乱が見込まれることについては「政治的な絡みが経済に影響してくるのはここ数年、痛感している。(影響が)出てきたらしなやかに対応していく。企業として活動していくには、目の前の課題に1つ1つ対応していくのが一番いいやり方だと思う」との持論を展開。短期的な動向にまどわされず着実に対策を講じていくとの考えを示した。
低温物流事業を担うニチレイロジグループ本社の嶋本和訓社長は、物流2024年問題の影響で24年度下半期から輸送トラックの確保が難しくなっていると指摘。「ゲームルールのチェンジに対応していかないといけない。そうしないと生き残っていけない。次のステージに変わってきたと感じている。当社は相当、集車力があると自負しているが、それでも苦労している。業界全体で顕在化していくのではないか」と懸念を見せた。
「車両台数を削減し、効率化して届けるソリューションを進めないと立ち行かなくなってくる」と展望。対応策として、ニチレイロジグループで既に展開している、荷台部分を切り離せるトレーラーの特性を生かして中継輸送を推進しトラックドライバーを物流拠点の積み下ろし作業から解放する輸配送システム「SULS(サルス)」の提供エリア拡大などを図っていく意向を示した。
会見する大櫛ニチレイ社長(上)と嶋本ニチレイロジグループ本社社長
大櫛社長は低温物流事業について「物流2024年問題を契機として、運送需要が全国で大きく伸長している」と説明。対応としてSULSに加え、他社の運営拠点の協力も得ながらより迅速かつ安定的な輸配送を可能にする新たな低温物流ネットワーク「エヌエルリンク」の構築を進めていることを挙げ、「まずこの2つのシステムに注力していく。広域に展開していくことと、路線数や台数を増やしていくことで幹を太くしていきたい」と述べ、サービス提供エリアを広げるなど、需要増に反応できる体制を作り上げていく姿勢をアピールした。
また、共同物流の要望が顧客から格段に増えていると明らかにし、「問題を解決できると思うのでしっかりやっていこうと思う」と決意を語った。
SULSについては、今年の4月に仙台、5月に静岡、8月に新潟方面のルートで新たに運行を始めており、2024年の末には自社で運行するトレーラーが50台に達する予定になってると説明。着実に拡大を図っていく考えを明示した。
エヌエルリンクも「これまでは(食品の)ベンダーが店舗の発注に応じてそれぞれTCに納品していただいていたところ、最寄りのTC(通過型センター)に持ち込んでもらえれば当社グループが他のTCまで輸送する。小売りの中間物流の効率化が目的であり、まず関東の拠点を起点にして北関東の12拠点をつなぐネットワークを構築した」と解説。顧客からも評価を得られていると自信を見せ、事業基盤強化を継続する方針をPRした。
併せて、2030年以降により深刻化していくと見込まれている人手不足を念頭に置きながら、低温物流の自動化・省人化にも、自動化設備のメーカーとタイアップしながら研究開発と実証を継続することに言及した。
(藤原秀行)