経営側の取締役再任や買収防衛策に反対表明
乾汽船の筆頭株主を務める資産運用会社のアルファレオホールディングス(東京)は6月3、7の両日、株式の大量保有報告書の記載内容修正に関する「変更報告書」を関東財務局に提出した。
アルファレオはこの中で、乾汽船株式の保有目的の欄に、兄弟である乾康之(社長)、乾隆志(取締役=グループのイヌイ運送社長を兼務)の両氏だけが常勤取締役を務めているのは経営体制が脆弱でガバナンスの観点から問題などと記載し、同社の経営を強く問題視。6月21日の同社定時株主総会で取締役の再任案や買収防衛策導入に反対する意向を表明した。株主が変更報告書で経営内容に反対する意思を示すのは異例とみられる。
これに対し、乾汽船は6月12日、「本来記載すべき保有目的の記載が欠けており、かつ事実と異なる内容が含まれている」などと反論する談話を発表。対立が鮮明になっている。
「取締役報酬は不公平」vs「健全な起業家精神の発揮促す」
アルファレオは6月14日時点で乾汽船株式の25・58%を保有している。アルファレオが2回にわたって提出した変更報告書は「取締役は注意義務・忠実義務を尽くしていないこと、および敵対的買収防衛策の導入は取締役の自己保身であると認められることから、定時株主総会で取締役の再任案および買収防衛策導入案に反対する」と明言。
その背景として、兄弟のみが常勤取締役を務めていることに加え、
・不公平な取締役報酬制度(18年3月期の有価証券報告書で2人の取締役報酬は計8200万円=1人当たり4100万円=に上り、総人件費の17%と同業他社の2倍以上の水準になっているが、報告書の人件費給与手当で単純計算した従業員1人当たりの平均給与はおよそ200万円にとどまっている)
・重要な財務情報の不開示(業績に多大な影響を与える会計上の計上方法変更が6カ月間開示されなかった)
・合理的理由のない買収防衛策(アルファレオ以外に30%の株式を保有している株主は存在しない中での導入提案は取締役の自己保身と言わざるを得ない)
――との見解を列挙。19年3月期に経常損益が赤字となった中で取締役報酬を増額しようとしているのは業績に見合わないとして、20年3月期以降に報酬総額引き下げの提案を検討する姿勢をのぞかせている。
一連の主張について、乾汽船は株式の保有目的欄で株主総会の議案への反対を表明したことに「大量保有報告書およびその変更報告書は、株主が、株主総会における個別の議案に対する賛否を広く開示するための書類でないことは明らかであり、当社としては本件変更報告書の記載は違法または著しく不適当であり、開示制度の濫用と考えている」と猛反発。
さらに、アルファレオが発表した乾汽船取締役の報酬算定要素に誤りがあると強調するとともに、「報酬は『健全な起業家精神の発揮を促す』ものであるべきであり、株主還元とは異なる目的・性質を有するため、取締役報酬および株主還元の算定に際して参照される指標を完全に一致させるべきものではない」とアルファレオの対応を批判した。
重要な財務情報の不開示についても、アルファレオ側の説明の中に事実と異なる箇所があるとの見解を表した。
アルファレオは6月12日と17日にも変更報告書を再度提出。この中で、定時株主総会では乾汽船が出している配当案とは別に、より増額した配当を実施する修正動議を提案することなどを表明している。
(藤原秀行)