「志を同じくするパートナーとともに“ムーバーズ”となる」

「志を同じくするパートナーとともに“ムーバーズ”となる」

物流関連主要団体・企業の2025年頭所感・あいさつ その2(抜粋)(完)

「CLO連携推進会議」の展開など3点を活動方針に設定

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)・大橋徹二会長(コマツ会長)

JILSは「ロジスティクスコンセプト2030」や「メタ・ロジスティクス」において、企業価値の向上と社会課題の解決を目標とするロジスティクスの重要性を訴えてきており、2025年の活動方針として次の3つを掲げます。

①持続可能な社会の実現:物流統括管理者 連携推進会議
(J-CLOP:JILS CLO=Chief Logistics Officer=Partnership)
②HRM(Human Resource Management)の推進と企業価値向上
③LX(Logistics Transformation)による全体最適の実現、標準化の推進

喫緊の課題である「改正物流関連二法」への対応について、「物流統括管理者 連携推進会議(J-CLOP)」を展開し、産・学・官連携の下、検討を進めます。J-CLOPは行政の動向に合わせ、活動を整備、認知、遵守、成果/評価、発展の5つの段階に分け、産業界をはじめとする社会全体に対し、事業を通じた支援を継続的に行ってまいります。特に、経営層に対して全体最適の視点から物流・ロジスティクスの問題に目を向けるための活動を強化します。また、多重下請け問題については、関連団体と連携を図りながら対応策を検討してまいります。

2023年度から、企業の人的資本に関する情報を「有価証券報告書」に記載することが義務付けられております。JILSでは、人的資本経営推進委員会を設置し、「有価証券報告書」の開示項目の物流企業向けガイドライン(標準項目)の検討、作成を進め、物流企業の「人的資本経営」への対応を支援いたします。

ロジスティクスが「経営課題を解決する非常に強力な手段」として認識され、経営戦略の一つとしての地位を確立するため、経営課題の解決能力に優れた企業の特性を抽出し、そのデータを基に報告書を作成するとともに、広く企業に活用いただける手引書を作成いたします。

また、各種講座やセミナー等の人材育成事業を継続的に展開するとともに、採用、教育、人事評価、人材配置など、従業員を人的資源と捉えて有効活用するためのHRMについても検討を進めます。

AI技術の目覚ましい進歩とそれに伴うテクノロジーの進化によって、物流・ロジスティクスの効率化のための様々なソリューションが提案、実装されています。労働力不足への対応としてのオペレーション改革のみならず、テクノロジーを活用したデータドリブンなロジスティクスの構築により、企業の経営とロジスティクス戦略を連携させ、全体最適を実現することを目指します。

企業内、企業間をまたがってテクノロジーを有効に活用するためには、ハード、ソフトの標準化のみならず、用語や業務プロセスなどを含む広義の標準化が欠かせず、JILSは標準化活動にも注力してまいります。

トラック・物流Gメンの適切な機能を期待

日本倉庫協会・藤倉正夫会長(三菱倉庫会長)

今年も物流業界において最も注目を集めているのは「2024年問題」かと思います。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制がスタートしましたが、これまでのところ、荷主・トラック・倉庫事業者が比較的適切に対応したこともあり、急激に事業環境が変化したということは無いようです。

また、昨年6月から改正物効法に関し、国土交通省・経済産業省・農林水産省による3省合同会議が開催され、政省令のとりまとめが進められている状況です。本年4月には全ての事業者に対する努力義務が、また来年4月には特定事業者に対する義務が施行される予定となっております。とりまとめ案の趣旨に沿って倉庫事業者が責務を果たすとともに、それが実効性のあるものとなるよう、荷主企業の協力を求めていきたいと考えています。

既にご存知のこととは思いますが、昨年11月に「トラックGメン」が「トラック・物流Gメン」に改組されました。当協会では以前から物流Gメンの設置を要望してきており、今回の改組につきましては、国土交通省をはじめ、関係各所の皆さまに感謝しています。価格転嫁の促進や物流効率化のための連携を促し、法改正の実効性を担保するために、今後トラック・物流Gメンに適切に機能いただけることを期待しています。

本年は倉庫税制延長のために活動していく年ではありますが、倉庫税制に関する動きとして、昨年10月から国土交通省において「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」が開催されています。同検討会の目的は、営業倉庫を含めた物流拠点に係る政策のあり方の検討であり、「業」としての営業倉庫だけでなく、「機能」としての物流拠点全般に関する政策について議論されています。同検討会での検討結果を踏まえ、今後の行政による支援方針が打ち出されることから、当協会として、営業倉庫の社会インフラとしての役割を説明し、その機能の維持、強化に必要な税制特例、予算、融資制度などの支援や規制緩和を訴えてまいります。

勝ち筋を見極めて人財や資金などの経営資源を投入する

商船三井・橋本剛社長

2025年は「BLUE ACTION 2035」 Phase 1の最終年度となり、2026年度から始まるPhase 2の詳細を設計していく大変重要な1年になります。当社グループの資産規模は既に4兆円を超え、ここからは急拡大するステージではなくなっていくでしょう。その中でも成長を続けるためには、強い部門をより強く、世界の中で競争優位に立てる事業領域を少しでも増やしていくことが必要です。必ずしも事業全体で一位になることができずとも、特定の分野で、もしくは特定の地域でトップというものを積み上げていきたい。漫然と既存のビジネスを継続していくのではなく、勝ち筋を見極めて、そこに人財や資金などの経営資源を投入していきます。

また、株主還元を積み増していく必要があることも考えると、毎年2000億~3000億円の利益を得たとしても、自己資本は1000億~1500億円程度しか積み上がらない状況になっていきます。効率よく利益を積み重ねていくためには、資産の売却や入れ替えも重要になります。単なる事業拡大にとどまらない、より多様な戦術が求められるでしょう。

さらなる成長のためには、人財ポートフォリオの強化も大きな課題です。当社は伝統的にオペレーションフェイズに入ったものを安全に上手に回していくことが得意です。そういった領域で活躍できる人財は豊富なものの、新しく事業を始める、既存の事業を作り変える、といったことができる人財、いわばハンターマインドを持った人をもう少し増やす必要があると感じています。欧米のオイルメジャーなどを見ていると人財配置を大変うまくやっていて、自分たちが特定の事業領域において「開拓→立ち上げ→守り・育てる」のどのステージにいるのか的確に判断した上で、適切な人財を割り当てているようです。

当社では2025年度に人事制度改革を予定していますが、一度で完璧に機能するものができるとは考えておらず、導入後も必要な手直しを続けながら、2~3年程度かけて理想形に近づけたいと考えています。現状、海外拠点とグループ会社は基本的に個別最適を目指して運営されており、本人にとっても会社にとってもその能力を最大限には活かしきれていない面があります。将来的には、幹部人材が本社からグループ会社に異動するだけでなく、グループ会社から本社へ、あるいはグループ会社間で横異動も出来るような、柔軟な人事制度運用によって全体最適の実現を目指していきます。

これらの改革を通じて、コーポレート部門の強化も成し遂げたいと考えています。これまでコーポレート部門は主としてビジネスのサポート役を期待されてきましたが、今後はむしろ営業部門や各地域の成長を引っ張っていく司令塔のような、存在になってほしいと考えています。

当社グループの主要な経営課題でもある地球環境問題に目を転じると、世界から2021年のグラスゴー合意の頃にあった熱気はすっかり薄らぎ、水素、バイオ燃料などグリーン燃料が急速に普及して化石燃料に置き換わる、というシナリオは描きにくくなってきています。一方で、気候変動問題自体は全く解決していないので、当社グループとしては、地味であっても省エネ、運航効率改善といった実績がありかつ実行可能な、小さな努力を代替燃料の活用と組み合わせ対応していく必要があります。当社はファーストムーバーズの一員であることを標榜していますが、先行することを求めるあまり突出して後ろが続いてこないようなやり方ではだめで、志を同じくするパートナーとともに“ムーバーズ”となってトレンドを作り出していく必要があります。そうした取り組みを通じて、鉄鋼業界、電力業界、自動車業界、資源メジャー、オイルメジャーをはじめとした大手顧客のニーズに応えていきたいと思います。

アジアを中心にグローバルな事業展開をさらに推進

川崎汽船・明珍幸一社長

当社グループの強みである「安全・船舶品質管理」「環境・技術」「デジタルトランスフォーメーション」という3つの機能と、それらを支える「人材・組織」を更に強化していくことは、中期経営計画を進めていくために大変重要な鍵となります。海運会社にとって安全運航は一丁目一番地であり継続的かつ徹底した取り組みが求められます。当社の重大事故発生件数は昨年も0件でしたが、これも海上乗組員をはじめ、全ての役職員が意識を高く持って取り組んだ成果です。船舶管理システムを統合した上でグローバル・モニタリング体制を整備し、全世界で運航されている当社船を24時間365日サポートできる体制の構築を進めています。新燃料対応など新たな技術の習得も求められる中、優秀な船員を確保、育成するためマニラやインドでの研修所の一層の拡充も進めていきます。

「環境・技術」の分野では、2050年GHG(温室効果ガス)排出ネットゼロに向けて、当社グループでは、重油に代わる次世代ゼロエミッション燃料であるアンモニアやメタノールや、既存船で焚けるバイオ燃料などの実装に向けた取り組みも加速化しています。加えて、様々な省エネ技術の研究、導入を図るとともに、風力の活用による燃費削減を目指す自動カイトシステム「Seawing」の技術確立および製品化にも取り組んでいます。ハード面に加え、「デジタルトランスフォーメーション」にも関連しますが、本船からの運航情報や気象海象などの様々なビッグデータを統合船舶運航・性能管理システム「K-IMS」にて運用するなどのソフト面の両面からの取り組みにより、多様な選択肢に備えて、当社サービスに最適なものを採用すべく、全社の環境戦略を推進していきます。

最後に「人材・組織」については、事業の成長に必要な質と量の確保を進めるとともに、当社が重点事項として取り組む3つの機能の強化を可能とする人材の育成に取り組んでいます。今後成長が見込まれるアジアを中心にグローバルな事業展開をさらに推進するため、ナショナルスタッフも含めた中核となる人材の育成により一層力を入れていきます。

2025年は「乙巳」(きのと・み)の年です。「乙」は困難があっても紆余曲折しながら進むことを表し、「巳」は脱皮し強く成長する蛇のイメージから「再生と変化」を意味し、組み合わせた「乙巳」には「努力を重ね物事を安定していく」といった意味があるそうです。社会情勢が刻々と変化する中、お客様が求めていることは何か、当社として提供できる価値は何かをとことん考え抜いて解決策を提示する、その解決策を当社グループの仲間とチームワークを組んで展開し実現する、そして中長期的にお客様とのパートナーシップを通じて成長機会を追求しながら、持続的な成長と企業価値の最大化に取り組んでまいりましょう。

ビジネス拡大のチャンスと捉えて変化を楽しみたい

SBSホールディングス・鎌田正彦社長

ここ2年ほど、業績面では厳しい状況が続いています。私は、コロナ禍が沈静化した一昨年から、世界中の拠点と国内の赤字拠点をくまなく視察してきましたが、そこで、倉庫内の有効面積をフル活用できていないことが業績悪化の主要因となっていることをあらためて認識しました。一方で輸送に関しては、トラックの積載率がまだ低い現場もあります。また、各支店では社員比率が高い現場も散見されますが、現場の仕事はパート従業員の皆さんを信頼し任せて、社員の皆さんは、現場の人たちがより働きやすくなる仕組みを考えたり、生産性を高める仕事に向かうべきです。そうしたことの積み重ねが利益を最大化し、コンペで勝ち抜く源泉となっていくのです。

当社グループの営業利益は、不動産を除くと、業界水準を下回る状態が続いていますが、物流事業の営業利益率を早期に5%台に高めるべく、2025 年は利益率の向上をテーマとして、全力で取り組みたいと考えます。ただし、利益率を求める一方で、会社は社会の変化に置いていかれたら存続できないことを忘れてはいけません。社会が変化するにつれて、会社の立ち位置や企業体質を変えていかねばならないとの思いが私にはあります。こうした変化をむしろビジネス拡大のチャンスと捉えて、皆さんと一緒に変化を楽しめたらと思います。今年が皆さんにとって良い年となることを願います。

従業員への「リスペクト」を忘れずに

三井倉庫ホールディングス・古賀博文社長(グループCEO=最高経営責任者)

これまでの皆様の頑張りによって当社グループは厳しい状況の中でも安定的な成長を見込める体質に変貌を遂げてまいりました。安定的な成長と一言で言うのは簡単ですが、それはお客様の抱える課題に最前線で対応している世界中の各現場の、まさに血のにじむような努力の積み重ねの結果である、ということを忘れてはいけないと思います。

(グループで重視する)4つのバリューの一つに「リスペクト」がありますが、そういう意味でも私は従業員の皆様に対する「リスペクト」を忘れてはいけない、といつも思っています。少しの配慮やコミュニケーションがあれば、防ぐことができたであろう小さなミスで、皆様の努力を無にしてしまうようなことがあってはならないと肝に銘じています。皆様にもこれまで同様の真摯な取組みを続けていただくとともに、脇をしっかりと締めて業務に当たっていただきたいと思います。

この1年は私たちのこれからの成長を占う本当に大事なピリオドになると思っています。これまで進めてきた取り組みを緩めることなく、自信を持ってグループ一丸となってこの新しい年に新しい価値を創り出していきましょう。そして当社グループの新たな歴史の 1 ページをともに描いていきましょう!

供給力を持つ企業が競争優位となり勝ち残る

鈴与・鈴木健一郎社長

世界的にもインフレが続く国が多いと思いますが、日本においても人手不足が課題となり、間違いなくインフレが続きます。このような状況下においては供給力をもつ企業が競争優位となり勝ち残ります。鈴与グループは昨年に引き続き供給力を高め、顧客への供給責任を果たした上で事業拡大を狙います。そのためには、人を惹きつける魅力的な業界、魅力的な会社にしていくことが絶対条件です。競争優位となる水準で賃上げを行い、Well-being の取り組みもさらに進めていきましょう。

東北の基盤を保持していく中で活路を見いだす

第一貨物・米田総一郎社長

今年 4 月から始まる新年度では、新たに第 14 次中期経営計画がスタートしますが、何をなすべきか、現場にこそ答えがあると思います。各事業所で、お客様や同業他社の状況を分析し、個別の収支改善策を検討してください。

大きな方向性としては、まず、特積み事業の収支改善が必要です。特積み事業はネットワーク維持にコストが伴いますが、ネットワークの強みとして、発送顧客だけで約 2万社のお客様との接点という財産があります。

業界全体としては、協業・分業の潮流がありますが、当社は東北の基盤を保持していく中で活路を見いだすべきであり、この財産を活かし、特積み以外にも、利用や区域といった、お客様の多様なニーズをとらえ、出来るものは内製化しつつ、輸送事業全体の収支改善を加速させて行きましょう。

また、お客様の物流ニーズには、倉庫や3PLのニーズ等もあるはずです。ぜひ各事業所でお客様が困っていらっしゃることを徹底的に伺い、懇切丁寧に対応していってください。

お客様の全ての物流ニーズに対応し、元請けセールスを展開していくことがとても重要であると考えています。今年1年が、当社にとって重要な転換期になりますが、全社一体となって頑張っていきましょう。

(藤原秀行)

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