スマホ普及が利用に拍車、書籍・アパレル・食品で需要増
市場リサーチなど総合マーケティングビジネスを手掛ける富士経済が6月20日に発表した最新リポート「通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2019」によると、近年急速に拡大しているEC市場は20年にも10兆円を突破すると予測している。
幅広いカテゴリーの商品をワンストップで購入できる仮想ショッピングモールが消費者から支持されていることに加え、スマートフォンの普及によって中高年やシニア層でも利用が拡大。これに併せて販路を広げようと出店する企業も増加していることを主な要因に挙げた。モールにおける取扱品目の拡充、利便性の向上、サービスの充実化が進み、パソコンやスマホから発注する消費者の増加がEC市場を押し上げていることがうかがえる。
調査はEC、カタログ、テレビ、ラジオなどの各通販形態を対象として18年11月~19年2月にかけて実施。通販市場を形態別・商品カテゴリー別、主要企業の事例などを基に市場トレンドを分析した。
富士経済プレスリリースより
18年見込みの商品カテゴリー別EC市場はアパレル1.7兆円、家電製品・パソコン1.6兆円、書籍・ソフト1.4兆円、またEC構成比率では書籍・ソフト98.9%、家電製品・パソコン92.3%、生活雑貨88.0%が上位に付けた。
書籍・ソフトは幅広いタイトルの取り扱いと電子書籍や音楽・映像配信への需要シフト、アパレルは試着・返品サービスによる需要の取り込み、また食品・産直品は時短を求める共働き世帯、最寄り店舗での買い物が困難な高齢者世帯のネットスーパー利用で今後もEC化が進むと予想している。
富士経済プレスリリースより
17~18年はトラックドライバー不足に伴う輸送能力の逼迫を理由に物流業界から運賃改定の動きが相次いだものの、物流危機に対する消費者の理解が広がったことで需要減退の影響は軽微だったと考察。他方、これまで送料無料で差別化を図っていた企業は新たな差別化ポイントを打ち出す必要に迫られていると指摘する。
通販プレーヤーの動向ではサービス統合により上位企業への集約が加速。グループで展開する携帯キャリア事業のユーザー取り込み、プレミアム会員の獲得に向けたコンテンツ強化など各社独自の顧客囲い込み策を進めているほか、楽天の携帯キャリア参入により競争は今後激化するとみている。
(鳥羽俊一)