国交省が官民研究会の提言公表、物効法の認定申請手続き簡素化など要請
国土交通省は6月21日、有識者らによる「共同物流等の促進に向けた研究会」(座長・矢野裕児流通経済大教授)が取りまとめた提言を公表した。
提言は物流現場が抱える人手不足などの課題を物流共同化で解決する際、短期的な経費削減のためだけでなく、中長期的に一段と物流コストが上昇したり商品を運べなくなるリスクが生じたりすることを避けるためにも必要との認識を荷主企業も含めて共有することが重要などと指摘。
物流事業者間での共同輸配送などの「ヨコの連携」にとどまらず、発着荷主や物流事業者が連携してサプライチェーン全体の効率化を進める「タテの連携」が必要との考えを明示した。各事業者による取り組み事例も数多く盛り込み、参考にするようアピールした。
その上で、国の施策として、物流総合効率化法(物効法)の認定申請手続きを最大限簡素化し企業による取り組みを後押しすることや、制度上・財政上の支援対象範囲を拡充して荷主と物流事業者の連携を促すことなどを要望した。
荷姿やシステム、納品条件などの見える化促進
提言は冒頭、人手不足の深刻化や頻発する災害、東京オリンピック・パラリンピックといった大規模イベントへの対応といった点から「持続的に物流がその機能を発揮するためには、各社の努力だけにとどまらず、各社の垣根を越えた協力による共同物流などがますます重要になると考えられる」と指摘。
「ヨコの連携」と「タテの連携」の必要性を記すとともに、中継輸送導入などによる幹線輸送の改善、地域における持続可能な物流確保についても必要性を明記した。
先行事例として、
・ビール大手4社が関西・中国エリアから九州方面へ共同でモーダルシフトを推進
・大手外食チェーンで店舗納品時間・日の平準化を推進
・大手加工食品メーカーが段ボール箱の外装デザインをガイドライン化し、共同輸配送に参加している6社に公開するとともに納品伝票を標準化
・パレットレンタル会社と加工食品、日用品のメーカーが関東~四国~九州間で海運ラウンド輸送を共同で実施
・大手運送事業者4社が関東~関西間で25メートルダブル連結トラックを活用した共同幹線輸送を実施
――といったケースを列挙。共同物流を進める上で、関係者の意識変革、荷姿やシステム、納品条件などの標準化、さまざまな情報の「見える化」などが必要と整理した。
国に期待する施策として、国がトラックドライバーの長時間労働是正へ物流業務効率化などを民間企業に呼び掛けている「ホワイト物流」推進に言及。官民で標準化を検討する協議会を業界ごとや業界横断的に創設したり、国などが進めている戦略的イノベーション創造プラグラム(SIP)で計画している通り、省力化・自動化につながる自動データ収集技術を開発してサプライチェーン全体で最適化を目指したりするよう訴えた。
さらに、共同物流の取り組みが独占禁止法に抵触しないか、分かりやすく情報整理して提示することを国交省に求めた。
(藤原秀行)
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