現地メーカーと共同で、故障リスク低減などに期待
Terra Drone(テラドローン)は5月29日、インドネシアの子会社Terra Drone Indonesia(テラドローン・インドネシア)が、先進素材の開発を手掛けるMidwest Composites(ミッドウェスト・コンポジッツ)と共同で、パーム油産業における農業用ドローンに適した機体カバーを開発、正式運用を開始したと発表した。
従来のプラスチック製カバーに代わり、製造時に最大73.2%のCO2排出削減が可能なバイオ複合素材を使用。熱帯地域の過酷な農業環境でも高い耐久性を備え、環境負荷の低減と安定的な現場運用を両立できると見込む。
(テラドローン提供)
東南アジアを中心に拡大を続けるパーム油産業は、森林伐採や温室効果ガスの排出といった環境課題を抱えている。テラドローンは、ドローンを活用した農薬散布サービスを提供しており、人力での散布に比べて作業者の農薬接触リスクを低減し、必要最小限の農薬を効率的に散布できるようにしている。
その結果、アブラヤシ1本当たりの収穫量向上にもつながり、不必要な森林伐採の抑制といった、より広い視点での環境保全にも貢献できているとみている。
その一環として、テラドローン・インドネシアはミッドウェストと組み、農業用ドローンの機体カバーに、再生可能な天然繊維を用いたバイオ複合素材を採用する取り組みを進めてきた。今年2月に両社間でR&Dに関するMOU(覚書)を締結し、ミッドウェストが素材開発・成形を、テラドローン・インドネシアが飛行試験・構造評価をそれぞれ担当。その結果、農業現場で求められる耐久性と環境性能の両立を実現した新製品の開発にこぎ着けた。
ドローンカバーは、バッテリーやセンサー、GPSなどドローンに搭載している電子機器を含む機体を外部の衝撃や雨水、直射日光から保護する。特に農業分野は高温・多湿・強い日射しといった過酷な環境にさらされるため、高い耐久性が求められる。
従来のプラスチック製カバーは変形やひび割れを起こしやすく、電子機器の故障リスクを高める原因となっていたため、再生可能な天然繊維のEFB(パーム果房繊維)、ジュート、ケナフなどを原料としたバイオ複合素材を採用した。
従来のプラスチックと比べて柔軟性・耐候性・構造強度に優れ、熱帯環境下でも長期間安定して使用することが可能。ドローンに搭載した電子機器を効果的に保護し、現場での故障リスクを低減するとともに、メンテナンス工数の削減にもつながると想定している。
(藤原秀行)