【独自】鹿児島・喜界島で出荷マンゴーの鮮度保持し廃棄大幅削減

【独自】鹿児島・喜界島で出荷マンゴーの鮮度保持し廃棄大幅削減

南日本運輸倉庫など合弁のDENBA DISS独自技術を活用

食品輸送に強みを持つ南日本運輸倉庫と食品の鮮度保持技術開発を手掛けるDENBA JAPAN(デンバジャパン)が2020年に共同で設立、伊藤忠商事も出資している「DENBA DISS(デンバダイス)」が展開している、生鮮食品をマイナス温度帯で冷凍させずに鮮度を保つ独自の保存システムが、鹿児島県の喜界島で青果物の保管・輸送に採用され、効果を発揮している。

海上輸送コンテナに同システムを取り付け、喜界島で採れたマンゴーを鹿児島本土に輸送。鮮度を保ち、廃棄量を劇的に減らせているという。離島の農業を変革できる可能性を秘めた技術に、地元のJAあまみ喜界事業本部は他の作物にも広げていきたいと期待を込めている。

2週間以上品質をキープ



DENBA DISSが取り扱っている保存システムは冷蔵庫内に電気の力が加わっている「電場」を創り出し、食材中の水分子に微細な振動を与えることで、0℃からマイナス4℃の氷点下領域でも水の分子が凍結しない環境を実現している。食材の劣化や細菌の発生を防ぎ、解凍しても味を保つことができるという。

DENBA DISSは冷蔵倉庫に保存システムを設置した場合、例えばカット野菜を1カ月間、新鮮な状態でキープできると強調。既存のコンテナに後付けで装置を導入することも可能で、設備投資の抑制につなげられるとアピールしている。

南日本運輸倉庫は19年に栃木県佐野市で開設した物流拠点「佐野チルドフローズン物流センター」に保存システムを設置。大手スーパー向けに冷凍鶏肉を出荷する際の解凍に用いており、水分やうまみが流れ出る「ドリップ」を大きく減らせている上、解凍のスピードも短縮できているという。

JAあまみ喜界事業本部が所有する冷蔵庫に保存システムを導入し、試験的に野菜を保管してみたところ、鮮度を通常より長くキープできる効果を確認したため、喜界島から鹿児島本土に出荷するマンゴーを、保存システムを取り入れた海上コンテナで輸送し始めた。

同本部の竹下繁樹営業本部営農販売課長は「海上輸送はどうしても天候に影響されやすく、台風で海が荒れた場合は船便がストップするため、せっかく収穫したマンゴーが傷んでしまい廃棄せざるを得ないことがよく起きていた。DENBA DISSの保存システムを使うと2週間以上鮮度を維持しながら保管することができた。廃棄を劇的に減らせている」と語る。

収穫から10日後に出荷したマンゴーも返品されず、通常通り市場の競りに参加することができたという。竹下課長は夏場に出荷するマンゴーのほか、パッションフルーツなどにも保存システムを使えるのではないかとみている。




保存システムを搭載した海上コンテナのイメージ(DENBA DISSウェブサイトより引用)

3年間の実証を経て、JAあまみ喜界事業本部は今年、海上コンテナをレンタルから購入に切り替え、3基を導入。マンゴーに加え、トマトやカボチャも保存システムを使った輸送に本腰を入れていく構えだ。トマトはこれまで、海上輸送時に鮮度を失うリスクを考慮し、熟する前の青い状態で収穫、出荷していたが、せっかくのおいしさを損なってしまうという課題も抱えていた。保存システムを使えばきちんと熟してから輸送することが可能になり、市場へより品質の良いトマトを提供できるのではないかと考えている。

鹿児島中央青果に約20年間勤務した後、昨年3月にDENBA DISSの保存システムの販売代理店を務めるAll Round Solution(オール・ラウンド・ソリューション)を創業した山里賢悟社長は「品質の良い野菜や果物をロスなく出荷できるのは離島の農家の皆さんにとって非常に意義が大きい。保存システムの初期投資は必要だが、長期的に見れば非常に価値があり、決して費用は高くない」と語る。

台風などで定期船がストップして島外から生活物資が入らなくなってしまった場合でも、喜界島内で保存システムを使えば生鮮品などをより高品質で保存、村民が安心して生活できるようになることも期待できる。竹下氏と山里氏は「これまで鮮度を維持するのが難しく、島外に出荷できていなかった作物も鹿児島本土などに売り込むことができるようになる」と指摘。農業振興につなげられると見込んでいる。

(藤原秀行)

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