【独自取材】JUIDA、ドローンの産業利用促進へ用途ごとの「上級技能証明証」展開

【独自取材】JUIDA、ドローンの産業利用促進へ用途ごとの「上級技能証明証」展開

第1弾はプラント点検と林業、物流の検討も期待

ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、ドローンの用途ごとに専門の高度な操縦技能を備えていることを証明する「上級技能証明証」を展開する方針だ。昨年12月にオンラインで開催したイベントで方針を公表した。

JUIDAは2015年、ドローンの安全運航に必要な知識や技能を持つ人材を育成する民間のスクールを認定する制度を開始。所定の講習を経て、操縦技能を備えたことを証明する「操縦技能証明証」、適切な運航管理ができると認める「安全運航管理者証明証」のライセンスをそれぞれ付与している。ライセンスを保有していると、国のドローンの飛行申請をする際に手続きを一部簡便化する優遇措置を受けられる。

20年11月時点で認定スクールは全国235に上り、「操縦技能証明証」の取得者は1万3411人、「安全運航管理者証明証」は1万1747人に達している。認定講師も1332人に及んでいる。

JUIDAでは既に空撮や測量、農業などさまざまな用途でドローンが使われており、今後も利用拡大が続くと予想。ドローンの操縦者らが基本的な技能や知識に加え、各用途に求められる高度な技能や知識を備えることを後押しする必要があると判断した。

JUIDAは「操縦技能証明証」を樹木の根、「安全運航管理者証明証」を幹にそれぞれ例えており、「上級技能証明証」はその上の葉として位置付け、3つのライセンスを組み合わせることでドローンの産業利用を後押ししていきたい考え。第1弾として、石油化学プラントの点検と林業を対象に設定。本格的に展開していく方針だ。今後は物流などの用途に関しても上級技能証明証を検討することが期待される。


3つのライセンスのイメージ(JUIDA作成資料より引用・クリックで拡大)

ドローンを使ったプラント点検に関しては、既に経済産業省と厚生労働省、総務省消防庁が19年に共同でガイドラインを設定。悪天候を避け、落下事故に備えることなどを打ち出している。JUIDAも204月、東日本大震災の復興支援促進を目指す福島イノベーション・コースト構想推進機構(RTF)と連携し、ドローンを使ったプラント点検の現場作業に関する実務マニュアルと考慮すべき点を盛り込んだチェックリスト、人材育成用の教育カリキュラムをそれぞれ作成した。

現状は「JUIDAプラント点検専門操縦士」の名称でライセンスを発行。希望する認定スクールの中で要件を満たすところに、国のガイドラインなどの内容を生かしたカリキュラムを提供、講習を行ってもらう方針だ。

林業に関しては、林野庁の補助事業として、全国の林業従事者ら向けのライセンスを整備する。ドローンの操縦や上空からの画像撮影・解析などのノウハウを効率的に取得してもらうことが主眼。林野庁は民間事業者らの森林整備を支援するに当たり、山林の現状を把握するための写真や図面を添付するよう定めているが、国内の林業は高齢化や人手不足が進んでいるため、ドローンが写真撮影などを担うことで作業負荷軽減を図る狙いだ。

政府も物流などへのドローン活用促進に向け、操縦の国家免許制度を創設することなどを盛り込んだ航空法改正案を1月18日召集の通常国会に提出する予定。

(藤原秀行)

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