郵便物不配達「過去の事案も公表」、総務省に従う姿勢強調
日本郵政の根岸一行社長は10月8日の定例記者会見で、傘下の日本郵便が全国の郵便局で不適切な点呼が日常化していた問題を受け、軽貨物車両による輸送事業で車両使用停止の行政処分を国土交通省から順次受ける見通しになっていることについて「まずは再発防止に全力で取り組む」と強調した。
その上で、「個別の郵便局ごとにどういうことが(代替で)できるか、いろんなシミュレーションをしている。何とかお客様にご迷惑をお掛けすることなく年末の忙しいところを乗り切ることができると考えている」と語り、同業他社への業務委託や郵便局間の車両融通でカバーは可能との見通しを明かした。
国交省は10月1日、全国の郵便局111カ所に対し、保有している軽バンなどの軽貨物車両188台を対象にそれぞれ15~160日間、使用を提示する行政処分を科した。今後も順次、問題を確認した郵便局に同様の処分を科していく見通し。
行政処分が業績に及ぼす影響に関しては「(今後出る行政処分の)スケジュールや時期によって対応が変わるので、もう少し(処分を受ける郵便局の)数が増えてくれば全体像が推計でもお話できる」と語り、算出にはもう少し時間を要するとの見解をあらためて表明した。
会見する根岸社長
日本郵便が郵便物を配達せずに廃棄するなど適切に届けなかった事案を一部公表していなかったのに対し、総務省が原則として公表するよう行政指導した点については「過去の事案についても公表すべきだと考えており、今準備をしている。(公表の基準に関して)視野を小さく捉えていたことは反省すべき点だ」と語り、総務省の指導に従う姿勢を示した。
日本郵便がロジスティードホールディングスに1割超出資する方針を決めたことに対しては「(ロジスティードを傘下に収めている投資ファンドの)KKRさんやロジスティードさんとの議論の中で、私どもとしてもシナジー効果を出し、きちんと手を握り合うには一定の出資比率が必要ということで、総合的に判断した。それ以上にはなかなか言いようがない」と説明。「1年程度でまずはきちんと(資本・業務提携の)成果を出していきたい」と話した。
政府からの出資が残り、郵便局運営への財政支援を政府が検討するなど政府の関与が強い日本郵便が民間企業に出資したり買収したりすることに物流業界などで反発がある点に対しては「政府の出資を受けている一方で、当社は上場しており、株主に対する責任も負っている。政府の株式保有があるからといって事業の発展を考えないのも責務に違反する。他の民営化企業も、政府出資が残っているところでも積極的に事業展開し、株主や利用者への還元を図る取り組みをされているので、それはわれわれも同じだ」と語った。
(藤原秀行)