【現地取材・動画】ジャパン・モビリティ・ショー、物流の脱炭素や効率化支えるトラックコンセプトカー登場

【現地取材・動画】ジャパン・モビリティ・ショー、物流の脱炭素や効率化支えるトラックコンセプトカー登場

水素活用の燃料電池車など

日本自動車工業会などは10月29日、東京・有明の東京ビッグサイトで、自動車などのモビリティに関する大規模な展示会「Japan Mobility Show2025」(ジャパン・モビリティ・ショー2025)を10月30日に始めるのを前に、メディア向けに展示内容を公開した。

ジャパン・モビリティ・ショーは2023年、それまでの東京モーターショーから名前を変えて刷新した上で開始。今年が2回目で、過去最多となる510以上の企業・団体が参加している。事業者向けの「プロセスイヤー」と一般向けの「ショーイヤー」を交互に開くことになっており、25年はショーイヤーと位置付けている。一般公開は10月31日から11月9日まで。




会場の東京ビッグサイト

トラックに関しては、国内大手メーカーがさまざまなコンセプトモデルや新車を出展。脱炭素のニーズの高まりに応えてEV(電気自動車)トラックや水素を活用する燃料電池トラックをお披露目した。「物流2024年問題」やトラックドライバー不足などの課題を抱える物流業界を支えるための工夫を凝らしていることを前面に打ち出している。    

いすゞ自動車とUDトラックスは共同で構えているブースで、コンセプトカー「VCCC」(Vertical Core Cycle Concept、ヴァーティカル・コア・サイクル・コンセプト)を出展。縦型という独特のフォルムをしたフレームを取り入れ、多彩な荷台を組み合わることで多様な荷物を適切かつ無駄なく運ぶことができると見込む。貨物と人間を同時に輸送することも可能という。

また、主力の大型トラック「ギガ」の外装を約10年ぶりに刷新、性能も改良したモデルを発表。全車にタイヤの脱輪を防止するシステムを標準装備している。


縦型のフレームを取り入れている「VCCC」

いすゞの南真介社長COO(最高執行責任者)は「当たり前のように届く荷物の裏には、物流を支える多くの人々の努力がある。そうした方々がより効率的に働ける仕組みを作りたい。物流に関わる全ての人が心躍る社会を実現したい」と語り、2027年度以降の自動運転実用化などを目指す方針をあらためて表明。



UDトラックスの伊藤公一社長兼CEO(最高経営責任者)は「いすゞグループとして商用車の在り方を変えていくことが、物流の可能性を広げることにつながる」と述べた。


撮影に応じる南氏(左)と伊藤氏

日野自動車は、今年10月に発売したばかりの燃料電池大型トラック「日野プロフィアZ FCV」を展示。22年6月の発売以来、累計で1600台以上を販売してきた小型のバッテリー式EV(BEV)トラック「日野デュトロ Z EV」と合わせて、物流業界の脱炭素への貢献をアピールしている。

加えて、2006年に発売した小型バス「ポンチョ」のEVのコンセプト車もお披露目。バスの用途に加え、農作物を運んだり買い物に行く人を乗せたりと幅広いシーンで地域の輸送を支えることを訴えた。

小木曽聡社長は「社会が移り変わっても、お客さまが頼ることができる存在であり続けたい。こだわりを詰め込んだ車を提供していく」と意気込みを示した。


「日野プロフィアZ FCV」




「ポンチョ」のEVコンセプト車


プレゼンテーションに臨む小木曽氏

三菱ふそうトラック・バスは、水素を動力に用いる大型トラック2種類を初めて公開。H2ICE(水素エンジン)を導入したタイプとH2FC(液体水素搭載燃料電池)を使うタイプで、このうち前者は既存のディーゼルエンジンをベースに開発しているため、既存エンジンの部品の80%を流用できるようにしているのが特徴だ。燃料電池車両への移行を円滑に行えるよう配慮している。

後者は液体水素を15分以内に急速充填することが可能で航続距離は最大1200kmを確保しているという。いずれもコンセプトモデルとして位置付けている。後者については岩谷産業と連携して早期の実用化を目指す。

このほか、積載効率や配送経路を自動的に最適化するスマート車体システム「COBODI」(コボディ)もお目見え。荷物を積み込むと自動的に配送順に荷台の中で並び替え、ドライバーが配送先でタブレットを操作、荷物をスムーズに取り出せるようになっている。

カール・デッペン社長CEOは水素を用いる大型トラック2種類について「カーボンニュートラル輸送に万能なソリューションは存在していない。多様な技術を並行して評価・開発し、顧客と社会に最適なものを提供していく」と強調した。


H2FCタイプの水素大型トラックと撮影に応じるデッペン氏


「COBODI」のイメージ

中国のEV(電気自動車)大手、比亜迪(BYD)の日本法人BYDジャパンは、日本向けに設計した新たな小型EVトラック「T35」シリーズを初めて発表した。車両総重量を3.5t未満に抑え、普通免許で運転できるよう配慮している。アルミバンと平ボディーの2種類で、最大積載量1t、航続距離は250kmと想定、ラストワンマイル領域の脱炭素に貢献できるとPRしている。

安全運転支援システムを標準装備するとともに、運転席に12.8インチの大型モニターを取り入れるなど、運転のしやすさや車内の快適性にも配慮している。


初お披露目の「T35」

(藤原秀行)

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