構内の荷物輸送にAGV導入、業務効率化図る
JR東日本は12月9日、岩手県の「盛岡新幹線車両センター」と東京の「東京新幹線車両センター」間で2026年3月23日に、E3系新幹線1編成の全号車を改造した荷物専用車両による運行を開始すると発表した。
併せて、車両センター内の荷物搬送にAGV(無人搬送車)を導入、業務効率化を図る。荷物専用新幹線の運行は国内で初めてという。
JR東は新幹線や在来線による列車荷物輸送サービス「はこビュン」を展開。新幹線のスピードの速さや定時運行が好評で、生鮮食品や地域の特産品、精密機器などの輸送ニーズを獲得している。今後も需要が見込めるため、対応を強化することにした。
荷物専用新幹線は平日に定期運行し、1~10号車は旅客、11~17号車は荷物の輸送にそれぞれ充てる。積載量は最大で17.4t(1000箱程度)を想定している。
正午前に盛岡新幹線車両センターを発車し、午後4時ごろに東京新幹線車両センターに到着するダイヤを予定。利用受け付けは26年2月9日に始める。運行時はE5系「やまびこ」と連結する。


今年4月18日には青森県やヤマト運輸などと組み、毎週金曜日に東北新幹線はやぶさ50号(E5系10両編成)の1号車、2号車を荷物専用車両として新青森~東京間の大口輸送を開始。26年1月23日まで実施している。

また、今年4月に臨時列車の一部客室を使用した大口輸送サービスもスタート。現在は毎週金曜日に最大200箱程度の輸送が可能になっている。ただ、より多量の荷物を高頻度で輸送してほしいとの声が上がっているのを考慮し、E3系新幹線1編成の全号車を荷物専用車両として改造することにした。
車両センターを活用することで旅客との接触を避け、安全確保に努めることで、かご台車のまま一度に多量の荷物を輸送することが可能になると想定。
さらに、車内電源を活用した冷温管理機器(業務用クーラーボックスなど)による冷蔵品の輸送を視野に入れるほか、今後は仙台エリアや新潟エリアへの輸送も目指す。

荷物専用新幹線の走行イメージ

輸送イメージ
車両は荷物搭載スペースを確保するため、客室内の座席を全て撤去。荷物をかご台車に載せたまま車内に搭載するため、床面をフラット化した上で鉄板を敷き、滑り止め加工を施している。また、車内に設置したベルトで荷崩れを防ぐ。

改造前の車両内

現在、改造中の車両内。鉄板敷設と滑り止め加工が済んでいる

改造後の車両内のイメージ


AGVは新幹線車両センター内の荷物搬送に際し、「120サイズ」(20kg相当)の箱約40個分まで牽引搬送し、車両センター内のスロープや狭小ルートも含め自動搬送を実現する。AGVの活用による荷扱い業務の省力化(4tトラックの荷物の場合、3~4往復程度で搬送)により、人手不足をカバーしたい考え。

AGV

AGVによる作業イメージ
新たな取り組みとして、JALグループと連携した新サービス「JAL de はこビュン」を商品化する予定。26年1月中旬の提供開始を準備している。新幹線のスピードに加え、新幹線・航空機での輸送と通関手続きをワンストップで行うことで各地域から目的地まで迅速に荷物を届けられるようにして、日本各地の優れた地産品の輸出拡大による地方創生も目指す。
輸送対象エリアはシンガポール、クアラルンプール、台北、香港を念頭に置いている。

24年2月に「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定を締結した日本郵政グループとも協力を進める。

連携イメージ




(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用



