世界銀行が2018年版物流報告書

世界銀行が2018年版物流報告書

日本はインフラや通関高評価で5位へ躍進

 世界銀行は7月24日、世界168カ国・地域ごとに物流サービスの品質やインフラの整備状況などを評価、順位付けした報告書「物流と競争2018:グローバル経済の中の貿易・物流」を公表した。

 総合評価で日本は5位となり、前回16年の調査時(12位)から7つ順位を上げ、アジアでシンガポールや香港を抜いてトップとなった。また、物流が抱えるグローバルな課題として人材不足や環境問題などを挙げ、対策の必要性を指摘した。

 報告書は「通関」「インフラ」「国際輸送」「物流品質」「貨物追跡」「定時性」の6項目に関し、フォワーダーなど各地の物流事業者にアンケートを実施するとともに、コストやリードタイム、輸出入品に関する諸手続きなどサプライチェーンの効率性に関する定量的データを収集。5段階で評価し、LPI(ロジスティクス・パフォーマンス・インデックス)として算出している。今年で6回目となり、最近は2年に1回公表している。

 日本は07年の第1回調査から前々回の14回調査まで総合評価でトップ10にランクインしてきたが、前回16年調査は初めて外れた。

 今回は返り咲き、過去最高位を記録した。項目別ではインフラが2位、通関が3位、物流品質が4位と高評価を獲得、日本の物流の強みといえる結果となった。一方、貨物追跡と定時性は10位、国際輸送は14位となり、上位の先進国との差が目立った。

 総合評価の1位は3回連続でドイツ、2位はスウェーデンが前回の3位から1つ順位を上げた。ドイツは総合評価の点数でも過去最高となった。3位はベルギー、4位はオーストリアだった。米国は定時性などの評価が下がったのが響き、前回調査の10位から14位にダウンした。

 アジア諸国ではシンガポールが7位、香港が12位、韓国が25位、中国が26位となった。タイは前回調査の45位から32位、ベトナムは64位から39位、インドネシアは63位から46位へと躍進が目立った。半面、マレーシアは32位から41位、インドも35位から44位へと後退した。

人材不足は世界共通の課題に

 報告書は、先進国がランキング上位を占めている一方、開発途上国は後れを取り物流の効率性に課題が残っていると分析。また、先進国と途上国の双方で人材不足が課題になっているとの見方を示した。途上国は管理職レベル、先進国はトラックドライバーといったブルーカラー層の確保がそれぞれ難しくなっているという。

 このほか、先進国の傾向として、途上国よりサイバーテロへの対応でより対応を強化していることや、CO2排出量が少ないなど環境負荷の低いサービスを求めていることなどを挙げている。

 世界銀行エコノミストのクリスティーナ・ウィーデラー氏は「国際貿易がグローバルなバリューチェーンを通じて拡大しているのに伴い、質の高い物流が従来以上に重要度を増している。サプライチェーン上で起こる小さな混乱が他の国・地域へと急速に広がる可能性がある」と解説。世界規模で物流の効率性を高めていくことを提唱した。

(藤原秀行)

LPIの上位10カ国・地域

総合評価前回点数国・地域通関インフラ国際輸送物流品質貨物追跡定時性
114.20ドイツ114123
234.05スウェーデン23210177
364.04ベルギー14141291
474.03オーストリア12536712
5124.03日本321441010
644.02オランダ541151111
754.00シンガポール6615386
8173.99デンマーク41719932
983.99英国11813745
10153.97フィンランド811161518
出所)世界銀行報告書より抜粋

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