【独自取材】豪金融大手Challenger、日本の物流施設に本格投資へ

【独自取材】豪金融大手Challenger、日本の物流施設に本格投資へ

第1弾は流通大手の冷凍・冷蔵倉庫、商業施設関連の案件に着目

オーストラリアの金融大手Challenger(チャレンジャー)が、日本の物流施設への投資を本格的にスタートした。2017年に設立した日本法人はこれまで日本で商業施設への投資・運用を軸に据えてきたが、国内外の投資家からの関心が高いことを踏まえ、ポートフォリオに物流施設を追加。機関投資家らに対し、中長期的に手堅くリターンを得られるアセットとしてアピールしていく構えだ。

第1弾として、今年9月に中部圏で流通大手が展開している冷凍・冷蔵倉庫を取得した。購入額は開示していないが、10億円規模とみられる。日本法人は商業施設と密接に関連した冷凍・冷蔵倉庫やプロセスセンターといった「リテールロジスティクス」が今後も日本では底堅い需要があるとみて、重視する戦略を打ち出している。引き続き、地域の中核都市およびその周辺で優良物件を厳選していく方針だ。

「リテールロジスティクス」に特化

 
 

Challengerは1985年発足。オーストラリアで個人年金商品販売業やファンドマネジメント業務を展開しており、19年6月期の連結運用資産規模は818億オーストラリアドル(約6兆1350億円)に上る。

日本においては個人年金の資金運用先として、「スーパーマーケットなどをアンカーテナントに擁する商業施設」をメーンターゲットに据え、06年より不動産投資を本格化。18年までは日系の運用会社と連携し、投資のノウハウを蓄積してきた。

現在、主軸の商業施設は全国で計17棟を運用している。首都圏など3大都市圏に加え、北海道や宮城、広島などの地方圏を含む全国をカバーしており、フィットネスジムなども対象に含めている。資産規模は約600億円に上る。

年金商品の資金運用だけに、中長期で安定した収益を上げるアセットが重視される。日本法人の松澤裕代表取締役は「必ずしも大規模な施設だけというわけではなく、地域に密着して顧客を獲得し、長期的に安定したキャッシュフローが見込まれる物件を選定してきた」と戦略を強調。今年3月には初めて大手食品メーカー向け物流施設の運用を外部の機関投資家から受託した。

本格的な投資案件の第1弾として選んだ物件は名古屋圏に位置し、延べ床面積が1500坪程度で、大手3PL事業者が物流のオペレーションを担っており、野菜や乳製品、総菜、弁当などを0度、5度、15度の3温度帯で管理している。松澤氏は「小売業の店舗運営を支える基幹施設であり、今後も中長期的に利用が見込まれている。まさに当社が重視している『リテールロジスティクス』という投資戦略に合致した物件だった」と意義を強調する。

プロセスセンターや冷凍・冷蔵倉庫を有望視

物流施設は近年、高機能で大規模なマルチテナント型が開発の主流となっているが、Challengerとしてはあくまで安定したキャッシュフローが見込まれる「リテールロジスティクス」に主眼を置くとの戦略を変えない姿勢だ。

 
 

eコマースの成長で実店舗を構える小売事業者の苦境が盛んに伝えられるが、同社は生活に密着し優良な品ぞろえとサービスを提供する商業施設は今後も消費者に支持され続ける有望なアセットとみている。それだけに、生鮮品などを迅速に加工し、顧客のニーズに合った商品を提供する上で重要な役割を占めるプロセスセンターや冷凍・冷蔵倉庫は重要な投資対象と位置付けている。

物流施設投資に関する定量的な目標は特段設けていないが、松澤氏は「商業施設で磨いてきたわれわれの“目利き”の力は『リテールロジスティクス』の分野でも十分に発揮できる」と資産規模拡大に自信を示す。調理済み食品を自宅で食べる「中食」の需要が伸びていることや、高品質な農産品を海外へ輸出する機運が高まっていることなどを追い風として、コールドチェーンのニーズが拡大しているだけに、Challengerが物流施設投資で存在感を高めてくる可能性は大きそうだ。

(藤原秀行)

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