LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編③センコーグループが私募リート拡大に注力

LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編③センコーグループが私募リート拡大に注力

自社物流施設専門で資産規模拡大目指す

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2017年7月号で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は雑誌発刊当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

センコーグループが2015年に組成した私募リート「センコー・プライベートリート投資法人」の規模拡大に注力している。同社グループが展開している既存の物流施設を私募リートに譲渡し、資産のオフバランス化による財務健全性向上と柔軟な資金調達の確立につなげるのが狙いだ。

センコーグループは17~21年度の5年間を対象とする新中期経営計画で、物流施設整備やM&Aなどに約1500億円を投じる方針を打ち出した。13~16年度の4年間で918億円だった前中計から相当額を上積みする。私募リートは成長戦略をファイナンスなどの面で支える重要な存在との位置付けだ。

私募リートを運用するセンコー・アセットマネジメント(大阪市)の久保潤社長(当時)は「資産規模を17年2月末時点の386億円(取得価格ベース)から中期的に1000億円まで高めたい。センコーグループが成長する上でわれわれが果たす役割は大きいと感じている」と優良な物流施設のポートフォリオ組み入れに意欲を示している。

私募リートは不動産を対象とする金融商品の一種。投資法人が投資家から集めた資金でオフィスビルやマンションなどを購入、賃料収入や売却益を投資家に分配する。証券取引所で広く取り扱われるJリートと異なり、売買できるのは機関投資家や大口投資家に限定されるが、価格の変動がJリートより小さいため、安定的な長期投資を望む投資家の間で注目度が高まっている。

物流施設を投資対象とする私募リートはSGホールディングスグループなども展開しているが、物流企業単独で立ち上げたのはセンコーグループが初めて。センコーの嘉永良樹取締役常務執行役員(現副社長執行役員)はその背景について「当時は有利子負債が1000億円を超えるなど財務基盤が弱点となっており、健全化が大きな課題だった」と振り返る。

私募リートに組み入れる物流施設はセンコーグループの物件に限定。エリアは関東、関西、地方主要都市に絞り込み、7割以上は関東と関西で占める方針だ。併せて、延べ床面積が原則1万平方メートル以上など汎用性の高いスペックを条件としている。ポートフォリオは17年2月末時点で千葉や埼玉、兵庫、愛知、福岡、北海道、宮城の11施設に上る。各施設のエンドユーザーはGMSや大手ディスカウントストアなど有力荷主企業がメーンだ。

当該施設はセンコーグループが1棟借りし、長期にわたる賃料固定・解約不可の定期借家契約を締結することでテナント退却リスクの回避を担保している点も大きな特徴だ。同社グループのバックアップで安定的なキャッシュフローが見込まれる点を評価し、国内30以上の大手銀行や有力地銀、信用金庫、信用組合、年金基金などが投資主として名を連ねている。私募リート組成の効果もあり、センコーグループの有利子負債は着実に圧縮されてきた。


私募リートに組み入れている埼玉県の「狭山PDセンター」(センコー提供)

ランテックの冷凍・冷蔵倉庫もポートフォリオ組み入れへ

センコーグループの既存物流施設に加え、コールドチェーン整備のニーズが高いことも踏まえ、14年にグループ入りした定温物流大手ランテックが全国で展開している冷凍・冷蔵倉庫もポートフォリオに追加していく見込みだ。久保社長は「18年ごろには私募リートにランテックの物件を組み入れられるよう調整、検討していく」と語る。

センコーグループは16年に不動産開発を担うセンコー・リアルエステート(大阪市)を立ち上げるなど、不動産分野の基盤強化を進めている。今後は同社が新規開発した先進物流施設を私募リートに譲渡することも想定している。

嘉永取締役常務執行役員は「われわれは物流施設の約4割が自社保有で有力企業の専用センターも数多い。そうした強みを生かしつつ、投資家の方々に評価いただける施設を今後も供給していきたい」と話している。

(藤原秀行)

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