【動画】プロに見せたい物流拠点④エレコム・神奈川物流センター(後編)

【動画】プロに見せたい物流拠点④エレコム・神奈川物流センター(後編)

機械化で“働きやすい倉庫”実現、ロボットの精度向上にも挑み続ける

プロに見せたい物流拠点④エレコム・神奈川物流センター(前編)

未曾有の人手不足など課題山積の物流業界でピンチをチャンスに変えようと、省力化や生産性向上などに果敢に取り組む物流施設を紹介するロジビズ・オンライン独自リポート。第4回はマウスやスマートフォン用カバーといったパソコン周辺機器、スマホ関連商品を手掛けるエレコムが神奈川県相模原市に構えている「神奈川物流センター」を前後編の2回にわたって取り上げている。

2014年6月に本格稼働を始めた同センターは、トヨタ自動車流の「カイゼン」と積極的な自動化を両輪として業務効率化を推進している。今回は機械化の部分などにスポットを当てる。


「神奈川センター」の外観(エレコムプレスリリースより引用・14年の稼働開始当時のもののため、現在は一時デザインが変わっています)

倉庫空間の保管効率にこだわる

エレコムはもともと、事業を進める上で物流効率化にきめ細かく配慮することが根底の思想として存在している。東日本エリアの出荷拠点として展開している神奈川物流センターも、入荷した商品をストックしておくエリアに足を踏み入れると、そうした思想を肌で感じることができる。

例えば、製品梱包に使う段ボールはパレタイズを前提として、保管効率が良くなるサイズを委託生産会社とも連携して独自に設計、日々使い込んでいる。パレットに積載したり、ラックで保管したりする際、無駄なスペースが生じないのが強みだ。10年以上前から続けている取り組みという。エレコムの町一浩物流部長は「食品業界の倉庫を見学した際、梱包にもこだわっている点を見て、ぜひ当社の物流センターでもやってみたいと思い工夫を重ねた」と語る。


パレットにぴったり合った梱包サイズ

センターはラサール不動産投資顧問と三菱地所が共同開発した先進的な物流施設「ロジポート相模原」の最上階・5階に入居しているため、フロアの上部空間をうまく使い、4段積みを行っている。出荷量が多い製品をストックしているエリアはリーチフォークリフトが円滑に走行できる通路幅を十分確保し、出荷作業に支障が出ないよう配慮。それほど出荷量が多くない製品のストックエリアとは通路幅を変え、全体としてストックの量を極大化できるよう計算しているという。

他にも、ロケーション番号は遠くからでもすぐに分かるほどの大きなサイズで掲示するなど、細かい配慮が随所に施されている。町部長は「当社の商品の多くは販売単価が非常に低いので、物流費も絞らなければならない。機械化投資を慎重に検討して行うのと同時に、業務効率化でコストを抑えるよう日々努めている」との心構えを強調する。


4段積みを実現し天井高を有効活用、通路幅も確保


ロケ番号は目立つ大きさ

ソーター4ラインをフル活用し迅速出荷実現

同時に、神奈川物流センターは立ち上げ当初から自動化が大きなテーマであり続けている。前編でも触れた通り、多岐にわたるパソコンの周辺機器やスマートフォンの関連アイテムを家電量販店などに日々大量出荷している上、その9割が注文ごとにばらで詰め合わせるパターンという実情が背景にある。

町部長は「多品種を在庫し、さらに詰め合わせて出荷している。量販店の店舗ごとに梱包を分けないといけない。こうした作業を完全に手作業でやるとなると、相当な人員を要する上に当然出荷能力も限られてしまう」と指摘、機械化の意義を強調する。

センター内で目を引くのが、イトーキ製の立体高速ピッキング仕分け機システマストリーマー(SAS)だ。まず商品ごとに総量をトータルピッキングし、折り畳みコンテナ(オリコン)に収めるとSASの内部に一時保管。その後、オーダーを受けた順に再び出庫し、クロスベルトソーターに向けて供給する。

SAS内には1100以上のオリコンを格納しておくことが可能だ。併せて、保管棚の下3段は人手による入出庫用のピッキング棚に充てており、空間の利用効率を高めている。

オリコンは1個当たりの重量が数キログラムとなり、人手で扱うと持ち運びや積み重ねはかなりの重労働になる。SASを有効活用することで働きやすい環境整備を図っている。昨今のように労働力不足が深刻化している現状では、獲得できた貴重な人材をつなぎとめる上で大いに役立っているようだ。


オリコンを大量格納可能なSAS


随所に作業のアドバイスを掲示しスタッフに配慮

SASと合わせて強力に威力を発揮しているのがピースピッキングを担うソーターだ。現在はホクショーと仏フィブイントラロジスティクスの計4ラインを日々稼働させており、設計と施工監理は三菱化学エンジニアリングが担当。いずれのラインも投入できる商品の重量は5キログラムまで対応していることなどもあって、ソーターの採用で取り扱えるアイテム数を増やせたほか、時間当たりの出荷能力も従来の2倍程度まで高まった。投入した商品のバーコードをコンベヤー上で自動的に認識、出荷データを読み込むことで、処理能力拡大と作業スタッフの手間抑制につなげられている。

神奈川物流センターではさらに、稼働当初からロボティクスにもチャレンジし続けている。SASから供給したオリコンの中から商品をソーターに投入する際、人力に加え、一部はアームロボットが作業を担当。上部に取り付けたカメラでオリコンの中の商品を認識、個別に取り出し、コンベヤーに乗せている。取り扱う商品群が頻繁に変わり、デザインなども変更になることが珍しくないだけに、画像認識の精度を上げることが課題だ。

町部長は「昔は認識がまだまだ荒く、取り出すスピードは速いがキャッチングミスが多い上、壊してしまうこともあった。そこれから考えればだいぶ性能は改良されてきたが、まだ商品をキャッチするスピードに100%満足はできていない」と説明、今後もロボットメーカーと調整を続けていく方針だ。


コンベヤー上でバーコードを自動認識し作業のスピード確保


ソーターで細かく仕分け


商品を取り出すロボットアーム


上部のカメラから商品を画像認識


作業の進捗を各所のディスプレーで共有

同センターは午後3時までに注文を受ければ当日中に出荷、翌日には客先へ配達している。こうした顧客のニーズに対応した迅速な出荷も、エレコムの成長を下支えしているようだ。同社は20年3月期に連結売上高が前期比3・7%増の1030億円、営業利益が5・7%増の134億円と、1986年の会社設立以来初の売上高1000億円の大台に乗る見込み。今後も同社の神奈川物流センターが果たす役割は大きそうだ。

(藤原秀行)

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