就任後初会見で表明、民営化は推進必要と強調
1月6日に就任した日本郵政グループ3社の新社長が同9日、東京都内で記者会見した。グループを司る日本郵政の増田寛也社長は傘下のかんぽ生命保険による商品不適切販売をあらためて謝罪した上で「グループ創立以来、最大の危機にある」と強調。「お客さまの不利益は一刻も早く解消していく」と語り、被害を被った保険契約者への対応に万全を期すとともに、問題の調査対象となる契約を拡大し全容解明を急ぐ姿勢を示した。
また、実効性ある再発防止策を講じるため、コンプライアンス(法令順守)やガバナンス(企業統治)の専門家からも意見を聴取していく意向を明らかにした。
会見に同席した日本郵便の衣川一秀社長は「郵便局の社員の皆さんのことを考え、グループ各社と連携しながら組織風土を風通しの良いものに変えていきたい」と表明。かんぽ生命の千田哲也社長も「郵便局、そしてその先のお客さまを何よりも大切にする組織に変わっていかなければならない。増田、衣川の両社長とも連携していく」との決意を述べた。
会見に臨む増田社長
「悪いニュースこそすぐに共有」
3氏は問題の責任を取り、前社長が1月5日付で辞任したのに伴い、後任に就いた。会見で増田社長は営業現場の動きを経営層が把握していなかった点が問題の背景にあるとの指摘がされていることに関連し「悪いニュースこそすぐに共有し、克服策を考えていく」と説明。問題の再発防止策に関しては「マイナスをゼロに戻すだけではなく、外部の専門家にも話を聞きながらプラスに転換できるような施策を考え、着実に実行していきたい」との考えを語った。
今後の成長戦略を聞かれたのに対し、増田社長は「(金融庁や総務省から)業務停止命令を受けている当社グループが今、投資家に将来の夢を語るのは余計信頼を損ねる。会社としての成長戦略はきちんと表明できる時点で言うべき」と述べるにとどめ、問題の全容解明と損害への対応を最優先させる姿勢を重ねて訴えた。
郵政民営化については「確実に推進していかなければならない。早く(政府保有の日本郵政や、日本郵政が保有しているゆうちょ銀行、かんぽ生命の)株式を売却することが国民へのサービス改善につながる」と力説。旧郵政省出身の衣川、千田両氏が経営トップとなったことなどから民営化後退の懸念が出ていることに反論した。ただ、政府保有株の売却時期については「時間軸は明示できない」として、保険不適切販売の問題解決を最優先するスタンスを重ねて訴えた。
経営戦略をめぐっては「今の郵便局ネットワーク維持を前提として(個々の郵便局の)価値向上を考えていく。公共性の高いサービスで地域から支持されるものはできるだけ残すべき」との見解を示し、郵便局の統廃合には消極的な姿勢をのぞかせた。また、日本郵便の収益拡大を図る上で「物流はもっと活躍できる部分があるのではないか」と分析、BtoBの物流需要獲得などに期待を示した。
これに対し、衣川社長はこれまで簡易保険分野がキャリアの中心で郵便や物流の経験が豊富ではないことを認めた上で「副社長らとよく相談しながらやっていくしかない。早急に現状把握し対策を考える」と述べるにとどめ、先行きに不安を残した。
会見に出席した日本郵便・衣川氏(左)とかんぽ生命・千田氏
(藤原秀行)