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LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑨シモハナ物流

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ITで配送の効率と安全を大変革

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2017年5月号「配車が変わる」特集で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は掲載当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

土地勘のない関東への進出を契機として各拠点で配車を自動化。さらに自社開発した原価管理ツールと連携させ、収支管理徹底と顧客への見積もりの精度アップを可能にした。配送の進捗をリアルタイムで確認できるシステムも取り入れ、サービス水準向上を図り続けている。

外食の大量出店に迅速対応

広島に本拠を置くシモハナ物流は食品をメーンに扱い、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、外食チェーン、卸、ディスカウントストアなどを顧客に抱える。ルート配送や3PLなどを展開し、中四国や九州、関西、中部の各エリアに加え、2011年に神奈川県厚木市、14年にはさいたま市に物流センターをそれぞれ開設。関東でも外食を中心に業容拡大を図っている。16年3月期の売上高は前期比約1割増の351億円に上る。

同社は約1000台に上るトラックの配送業務にリアルタイムの運行管理システムをはじめITを積極的に採用し、かねてサービス品質向上と業務効率化を並行して進めている。現在は大手システムベンダーから購入した新たな自動配車のパッケージシステムを各拠点で活用している。

新システムは各エリアの道路状況やトラックの種類別台数、各車両の最大稼働可能時間などをマスターデータとして登録。顧客から入った配送オーダーをその都度分析して必要な台数や配送順、各配送先への到着予想時刻などを迅速にはじき出す。パッケージソフトが自社の業務に最適な機能を基本的に備えていたため、特段大きな改修は施さなかった。

新システム導入を後押ししたのが、関東エリア進出だった。同社企画部の大島慎介課長は「厚木のセンター開設を準備している際、担当者からお客さまへ配送ルートを提案するのに土地勘がなければ勝負にならない、競合は既に自動配車システムを入れているので、当社としても導入を検討してほしいと相談された」と振り返る。

担当者の提言を受け、自社業務に相性の良さそうなシステムをまず厚木に導入。そこで営業を後押しできる効果を確認できたため、システムを本格活用する方針を決定した。本社にサーバーを置き、各拠点で利用できる体制を徐々に整えていった。

大島課長は「1回マスターデータを入れておけば、条件を変えてもすぐに最適な配送ルートを再計算できる点が魅力だった。商談の中でお客さまが業務のエリア分け変更などを要望されても迅速に提案内容を修正できたため、好評価をいただき、非常に効果的な営業活動につなげられた」と語る。

今関東で主力分野の一つとなっている外食は成長しているチェーンが立て続けに新規出店したり、逆に不採算店舗を見直して閉店したりと動きが激しいだけに、店舗政策の影響で食材などの配送ルート修正を余儀なくされることがしばしば起こる。同社の藤田弘企画部長は「出店のたびにコースの見直しが入るため、大量に出店や閉店が出れば手作業では追い付かない。当社はシステムの活用で新規大量出店を見越したルートを事前に提案することもできるのが強みになっている。特に関東エリアでは必需品といえるのではないか」と指摘する。

シモハナ物流では今後も外食をはじめ食品輸配送の需要が見込めるとみて、さいたまのセンターに隣接して第2センターを建設するなど、関東での事業拡大に引き続き注力していく構えだ。同システムは既に巨大市場に打って出ていく同社を支えるパートナー的存在になっている。


リアルタイム運行管理システムの画面


システムで作成した配車ルート

原価計算のブラックボックス化回避

自動配車システムの活用と併せて、配送の原価計算ができるツールを自社で独自に開発、同システムと連動させて使うことをスタートした。自動配車システムがはじき出した最適な配送ルートの所要時間や距離などのデータに、燃料費や車両の定期検査費、人件費、タイヤの購入費用、損害保険料などの数値を細かく反映させ、各ルートの運行にどの程度コストを費やすかを表計算ソフトのエクセルで算定。精度の高い試算を可能にしている。

藤田部長は「当社では昔から拠点別や事業部門別で細かく収支管理をしているという下地がある。ただ、配送の原価計算は手法や単位となる数値が営業所ごとに異なっている部分もあったため、以前から基準を統一したいと思っていた。自動配車システムと原価計算ツールを結び付けたことで、自社の収支管理をより強化できる上、お客さまへの見積もりもより正確に作成できるようになった」と利点を強調する。

管理統括部の檀国友業務管理・監査統括マネージャーも「見積もりのスピードが拡大に上がり、お客さまへのレスポンスが早くなった。われわれも作業が楽になり、見積もり内容の精度も改善されている」と証言する。関東で業容を拡大する際にも、距離や時間の単価をきちんと算出した上で見積もりを出せるのがアピールポイントになっている。システムで新たに理想のルートを計算した際はトラックで試走し、必要に応じて配送順などを軌道修正。システムに頼り過ぎないよう心掛けている。

原価計算ツールにエクセルを使っているのも、同社ならではのこだわりだ。大島課長は「自動化することで担当者が原価計算について深く考えなくなってしまうのが怖かった。その点、エクセルであれば計算式が分かるので、数値さえ入力してしまえば後はシステム任せというようなブラックボックスにならず、どういうふうに原価を考慮すべきかを理解できるため、原価管理の重要性を意識することが可能になる」と狙いを解説する。


原価管理ツールの画面。細かく車両別に金額をはじき出す

配送のサービスレベルを一段と高めるため、16年には新たにスマートフォンを生かした動態管理システムをスタートさせた。前述のリアルタイム運行管理システムからさらに機能を強化し、配送の進捗状況をより細かく把握できるようにした。

新システムはドライバーが持っているスマホのGPS機能を活用しながら、各車両に割り振っている配送ルートと現在位置をパソコンの地図上に表示。各配送先の100メートル圏内にトラックが入れば「到着」、止まった後に再び一定の速度で動き始めると「納品完了」とシステムが自動で判断し、その時間を登録する。

大島課長は「スマホのアプリでドライバーが店舗到着や納品完了のたびに操作するやり方ではどうしても操作のし忘れが起きる。そうなるとドライバーが運転中にスマホを操作しようとするので危険が生じてしまう。協力会社のドライバーさんにはそうした負担の掛かるやり方をなかなか頼みにくいため、トラックの走行状態から自動的に判断する方式を選んだ」と解説する。

新システムはさらに、カーナビゲーションシステム向けに提供されている交通情報データ(VICS=道路交通情報通信システム)を基に各車両の配送先への到着時間を予測。顧客から問い合わせがあった場合にも迅速に対応できるようにしている。以前から到着時間を予想する仕組みの導入を検討していたが、関東が大雪に見舞われ、配送が大混乱に陥ったのを契機に、より本気で取り組むようになったという。

藤田部長は「店舗到着の確認にしても、関東の場合はカバーしているお客さまの店舗が現状で1000を大きく超えている。そのうち1割の方から問い合わせがあるだけでも大変な事態になってしまう。関東のお客さまから当社の広島本社まで電話がかかってきたこともある。新システムの活用でお客さまの不安解消につながった」と話す。

配車―原価計算―動態管理という3つのシステムやツールを連動させることで、自社の配送業務の高い水準を顧客に強くアピールできるようになった。前述のように関東の事業拡大を後押しするのに加え、中四国などの既存顧客のサービスを盤石にすることにも役立てている。


動態管理システムの画面。配送の履歴を地図上で確認できる

社風がシステム化を後押し

ITは配送の安全管理にも投入されている。ドライバーが定められた時間以上に連続して運転しそうになると車載機が警告を発するとともに、運行管理システムの画面にも連続運転のリミットに近づいていることを表示して担当者に通知、対応を迫る。社内で定めている制限速度以上で一定時間走った場合は昼夜を問わず、安全管理の担当者らの携帯電話へメッセージで違反した事実を即座に通知する。アルコールチェッカーで反応があった場合も同様だ。

同社では各営業所にドライバーの教習を担う「ドライブマイスター」を配置し、実際にドライバーの隣に乗り込んで細かく安全運転を指導するなどの取り組みも続けている。管理統括部の松永政登安全教育・品質管理統括マネージャーは「ドライブレコーダーの映像でドライバーの運転姿勢が悪いことなどがスピードオーバーの原因になっているのではないかと分析、マイスターがドライバーに改善をアドバイスしている。今はフォークリフトにもドラレコを搭載している」と語り、ソフトとハードを組み合わせて安全基盤強化を図っていることを示す。

新たな取り組みとして、各営業所の点呼現場をウェブカメラで撮影、リアルタイムの画像を本社で確認できるようにした。檀統括マネージャーは「拠点を出発したらドライバー1人になる。事故を防ぐために点呼で時間を取ってきっちり確認しようと考えた。問題があればすぐその場で電話して指導している」と説明。さまざまな取り組みの結果、16年の事故件数は前年から3割減ったという。

配車業務に多様なITを組み合わせることで効率化と安全確保に成果を挙げている。藤田部長は「社風として、何かやったことが失敗してもとがめることはなく、むしろ現状で問題があるのに臭い物にふたをして赤字を垂れ流し続けていると非常に厳しく叱責される。そういう意味ではシステムも新しい物にチャレンジしやすい。トップの姿勢が大きい」と話している。


各拠点の点呼を本社で確認できる画面

(藤原秀行)

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