全流協、物流センターへのトラック予約受付システム導入の指針を作成

全流協、物流センターへのトラック予約受付システム導入の指針を作成

関係者への丁寧な事前説明が不可欠と強調

特積み運送事業者らが加盟している全国物流ネットワーク協会(全流協)は1月15日、東京都内で開いた賀詞交歓会の席上、荷主企業や物流事業者ら向けに、物流センターでトラック予約受付システムを導入する際のガイドライン(指針)を公表した。

ガイドラインはかねて問題となってきたトラックドライバーの荷待ち時間を解消するため、同システムの積極的な活用を提唱。その前提として、まず待機時間をどの程度削減するのかといった目的・目標を明確にした上で現状を把握、待機が生じるボトルネックがどこにあるかを押さえるとの流れを重視するよう要望している。

また、同システムの導入・定着には仕入れ先や配送事業者、センター管理者、警備員といった多岐にわたる関係者へ丁寧に狙いや段取りを事前説明していくことが不可欠と強調している。

全流協はウェブサイトでガイドラインを公開するなど、運送・倉庫事業者と荷主企業が連携して現場の生産性向上に当たることができる環境整備に努める構え。

「待機状況の可視化」「接岸時間の短縮」「接岸指示の効率化」でチェック

ガイドラインは全流協が研究会を設置、内容を詰めてきた。研究会メンバーの小路健祐ヤマトロジスティクス営業企画部マネージャーは同日の賀詞交歓会で、議論を進める上で参考とするため荷主を対象に行ったアンケート調査で、回答した14社のうち、センターへの接車時間が集中し待機時間が発生していると説明したのが半数の7社に上ったことなどを説明。回答内容からは予約受付システム活用の余地が大きいことをうかがわせた。

ガイドラインでは、トラックの路上待機が発生してセンターの近隣住民に迷惑を掛け、製品のブランドイメージを毀損していたり、荷積みや荷下ろしが場当たり的に行われドライバーに作業の手伝いをさせていたりとさまざまな問題が発生している可能性を指摘。そうなればドライバーの間で「納品に行きたくないセンター」との不評が立ってしまうと警告し、待機時間短縮を図る重要性をアピールしている。

その上で、問題把握のため「待機状況の可視化」「接岸時間の短縮」「接岸指示の効率化」の3項目ごとにチェックリストを作成、1つでも該当する場合は同システム活用が有効とアドバイスしている。

導入のステップとして、目的・目標を明確にした上でトラックの台数やバース数、入荷受付時間、トラックの動線といった諸条件を把握。解決すべき問題点を明らかにして取り入れるべきソリューションを選び、関係者への入念な説明、推進や導入実務を担当するスタッフの任命、マニュアル作成などのプロセスを列挙している。

アスクルが事例説明、「必要なのは推進部門の“覚悟”と関係者の“共感”」

発表に合わせて、アスクルの桜井秀雄執行役員が同社での待機トラック改善の取り組み状況を報告した。かつてはセンターでの荷待ち時間が非常に長く、納品を拒否されるケースもあるなど深刻な事態に陥っていたため、専任の事業部を設置して予算も確保し、2018年から同システム導入に本格着手した経緯を紹介。

最初に関西の同社センターでシステムを導入したものの、従来の先着順での受け付けモデルと混在していたことなどから明確な効果を確認できなかったため、派遣社員4人を採用して1日当たり1000台に上っていた全トラックに関する待機時間や作業時間、車格、荷物量などのデータを紙の入荷簿からエクセル表に入力、デジタル化。バース数や荷受け人員の不足が待機につながっていると推測するなどの作業を図っていったことを明らかにした。

データの見える化を進めた結果、対策をどの箇所に講じるかの当たりを付けることが可能となり、9カ月で待機時間を約4割減らせたという。その後は「平均待機時間半減」「1時間以上の待機ゼロ」とより高度な目標を設定し、同システムもスタートアップ企業のHacobuが手掛けているより高機能なものに入れ替えたところ、平均待機時間は3分の1以下、1時間以上の待機発生割合も4分の1以下に抑えるなどの成果を達成した。

桜井氏は「システムはただのツールであり、導入するだけでは問題は解決しない。導入に当たって必要なのは推進部門の“覚悟”と関係者の“共感”」と持論を展開。Hacobuのシステム導入に際しては関係者への説明会を20回重ねて理解を得ていったことに言及。20年は全センターに同システムを取り入れることなどを目指していると語った。


アスクルの説明に聞き入る来場者

(藤原秀行)

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