【独自取材】三菱商事、トラックの輸配送効率化支援に本腰

【独自取材】三菱商事、トラックの輸配送効率化支援に本腰

名大発スタートアップ企業オプティマインドと資本・業務提携、BtoB向け配車システム提供目指す

三菱商事は物流分野への取り組み強化の一環として、トラックによる輸配送の効率化支援に本腰を入れている。配送ルート最適化のアルゴリズム開発を手掛ける名古屋大発のスタートアップ企業オプティマインド(名古屋市)と2019年に資本・業務提携した。先進技術をベースに据え、BtoB領域を手掛ける企業向けに新たな配車システムの提供を目指している。

輸配送分野は深刻なトラックドライバー不足に加え、営業用トラックの積載効率が平均で40%程度にとどまるなど課題が山積している。三菱商事はオプティマインドと連携しながら輸配送現場へのデジタル技術導入を積極的に後押しし、効率化や省力化に貢献していきたい考えだ。


オプティマインドのロゴマーク(同社提供)

プラットフォームを随時提供する「PaaS」実現視野に

三菱商事は現在、コンビニや食品卸などを担当しているコンシューマー産業グループの物流事業本部を軸として、物流分野が抱える労働力不足やIT導入の遅れといった多岐にわたる問題の解決に取り組んでいる。輸配送効率化もその一環と位置付けており、大手商社としてさまざまな企業や団体などとパートナーシップを構築、多種多様なリソースを駆使できる点を生かそうと検討している。

オプティマインドは15年6月設立。名古屋大に在籍していた松下健社長らを中心に、AI(人工知能)を活用した配送ルート最適化に取り組んでおり、日本郵便と起業支援を手掛けるサムライインキュベート(東京)が先進技術で郵便・物流分野を大きく変革する新事業創出を促すプロジェクト「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM2018」で最優秀賞を獲得するなど、物流業界関係者らの注目を集めている。

トヨタ自動車やKDDI、寺田倉庫なども出資。「ルート最適化で街を支えるインフラ企業」を将来像に掲げ、現在はラストワンマイル領域に特化したクラウドベースの配送経路最適化サービス「Loogia(ルージア)」を展開している。

同サービスは走行時間だけでなく配送先の時間指定や道路事情など30以上の制約条件を考慮し、個々の現場に即した最適化を実現するのに加え、AIが実際にトラックの走ったルートのビッグデータを学習、精度を向上していくことも大きなメリットとなっている。既に宅配事業者や酒・食品卸、日雑卸などへの導入実績を重ねている。


「ルージア」の専用ウェブサイト※クリックで拡大

三菱商事はオプティマインドの卓越した組み合わせ最適化アルゴリズムをAIも活用してクラウドベースで実用展開する技術開発力に着目。ラストワンマイルに加え、BtoB分野の輸配送も効率化できると期待している。三菱商事としてはさまざまなシステムと連携して機能を共有する「API連携」を利用し、企業が持つ既存の配車システムなどから最適化のアルゴリズムやルージアの中核機能を使えるようにすることを想定。同社とオプティマインドがタッグを組み、インターネットを介して必要な時にプラットフォームを利用できる「PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」を展開することを視野に入れている。

三菱商事は「ラストワンマイルの分野が注目されることが多く、実際課題解決のやりがいは大きいが、BtoBの分野も同様にわれわれがお手伝いできる余地は非常にある」との見方を示す。

同社の物流事業本部は他にも物流施設へのロボット導入支援を本格的にスタートするなど、入庫から出庫、配車、経路作成、配送、返品に至るまで一連の物流過程全てでデジタル技術を浸透させ、革新していく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現を目指している。輸配送の分野でもオプティマインドの先端技術を生かし、DXを着実に進めていく方針だ。

(藤原秀行)

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