物流連賀詞交歓会で流経大・矢野、敬愛大・根本の両氏が講演
日本物流団体連合会(物流連)は1月27日、東京都内で開いた賀詞交歓会の中で、有識者による特別講演会を実施した。
登壇した流通経済大の矢野裕児教授と敬愛大の根本敏則教授は、国内外の物流の効率向上への行動が重要と指摘。企業間での情報共有、コールドチェーンの国際標準化への積極的な関与などを強く訴えた。また、開催まで約半年と迫った東京オリンピック・パラリンピックの際に渋滞を回避するため物流面での対応にも協力を呼び掛けた。
講演の会場
矢野教授は「2020物流業界の課題と展望 先を読んだロジスティクスへの転換」と題し、物流分野が抱える課題と進むべき方向について語った。
トラックドライバー不足や積載効率低迷などの諸課題に関し、サプライチェーン全体が抱えている非効率性が背景にあると分析。企業内の生産性向上は相当程度進んでいるものの、企業間で情報共有がされず標準化が遅れていることなどから全体最適が進まず問題のしわ寄せが物流現場に集中している点などを列挙し、「こうした点の見直しをしなければ本当のロジスティクス改革にならない」と強調。解決の前提として、デジタル化が必須とアピールした。
このほか、地方経済の活性化にもつなげるため、中距離貨物輸送ネットワークの構築が求められると解説。東京オリンピック・パラリンピックを前に、流通経済大が2019年9月に東京都トラック協会会員約3300社に対して実施したアンケート調査結果に言及し、まだ共同物流などの対応が進んでいない実態を基に「今大会での取り組みが今後の物流のレガシー(遺産)になる」と語り、来場者へ積極的な対応を要望した。
講演する矢野教授
根本教授は「コールドチェーン物流サービスの国際標準化」について講演。アジアは経済成長で冷凍・冷凍が必要な食品のニーズが高まっているほか、食料廃棄の9割が製造・流通団体で起こっていることなどを紹介。コールドチェーン需要が期待できるとの見解を示した。
既に日系物流企業がアジア各国に進出、冷凍・冷蔵倉庫の整備などを進めていることに触れた一方、アジアでは小口保冷配送サービスがまだ普及していない現状も取り上げ、日本の高品質なコールドチェーンが展開できる余地が大きいとの見方をにじませた。
ISO(国際標準化機構)のサービス分野で小口保冷配送サービスの国際規格策定が進められる中、日本が主導する標準化提案がなされていると報告。現状では20年の発効が見込まれていることなどを説明した。
その上で、アジアでは物流事業に対する外資規制が存在しているのが日本流のコールドチェーン物流サービスを展開していく上で見逃せない点となっていることも取り上げ、「規制緩和を実現したい」と語り、政府や業界団体などが現地政府に規制緩和のメリットを説明するなどの取り組みを進めることに期待感を示した。
講演する根本教授
(藤原秀行)