「Xのごとく、多様な物流機能を掛け合わせる」

「Xのごとく、多様な物流機能を掛け合わせる」

SGHDグループの大型拠点「Xフロンティア」発表会見詳報①

SGホールディングス(HD)は1月29日、東京・新砂の本社隣接地で新たに開発した大型物流拠点「Xフロンティア」の建屋を報道陣に公開した。地上7階建て(うち倉庫部分は6階建て)、延べ床面積は17万1029平方メートル。同社としては過去最大規模となる。今年4月以降、順次稼働を始める計画だ。

同社の荒木秀夫社長らSGHDグループ幹部が同日行ったXフロンティアに関する発表記者会見の内容を詳報する。


会見に臨む荒木社長

顧客への提供価値を何倍にも拡大できる

【Xフロンティアの機能説明】

SGHD・荒木秀夫社長

まず前提として、SGHDグループのビジネスモデルと戦略についてご説明する。SGHDが目指す事業領域は、約2・4兆円の宅配便事業だけではなく、もっと川上の、約24兆円の市場規模がある物流領域全般だ。私たちの強みはソリューション、インフラ、パフォーマンスの3点だと考えている。SGHDグループでは宅配便のネットワークと2万人のセールスドライバー(SD)を軸に、お客さまのサプライチェーンに最適な物流ソリューションをオーダーメイドで提供することが可能。それを支えるインフラの特徴としては、手積み手卸しによる積載効率を高めるマルチコンテナローディングや、大型や特殊貨物まで幅広い物流機能を有していることが挙げられる。また、全てを自社で行うのではなく、幹線輸送や特殊輸送などを豊富なパートナーと連携しながら行うことで、費用を変動費化し、効率的な事業運営を可能にしている。

SGHDグループの強みについていくつかご紹介する。まず皆さんよくご存じのSDだ。私たちのビジネスモデルは、全国に2万人いるSDが現場の最前線で、お客さまとの会話の中から、お困りごとを敏感にキャッチし、それを上司へ報告し、GOALへつなげてソリューション提案を行うというものだ。今後はこのビジネスモデルをさらに進化させるために、しょうたる分離を行い、SDが営業に専念できる時間を創出する。また、SDのスキルアップを実施することで、お客さまの潜在的課題の発掘を行い、最適なソリューション提案につなげていく。

また、コストコントロールもSGHDグループの大きな強みとなっている。幹線輸送や配送の部分には、パートナー企業の力を借りて取り扱い個数の増減に合わせて、変動費化している。これにより、個数に左右されない経営体質を構築することが可能になっている。さらに、これからは他社とのアライアンスを進めていくことで、輸送の効率化も実現していく。

次に、Xフロンティアのロゴに込めたコンセプトをご紹介する。Xフロンティアのコンセプトは、Xの文字のように、さまざまな機能が交わることだ。基本的な物流センター機能に加え、国際物流や大型・特殊輸送の拠点、ECプラットフォームも併設している。これらの機能を掛け合わせたソリューションを提案していくことで、お客さまへの提供価値を何倍にもすることが可能となる。そして、物流の新たな可能性を切り開くことこそが、私たちがXフロンティアで実現していきたいことだ。


「Xフロンティア」のコンセプト(SGホールディングス資料より引用)※クリックで拡大

3つの存在価値を強調

次に、Xフロンティアがお客さまや社会に提供していく価値について具体的に説明する。まず前提として、皆さんもよくご存じだと思うが、物流業界を取り巻く問題について整理した。消費人口が今後ますます減少していくが、まだまだEC増加の傾向は続く。これに伴う物量増加への対応、製造工程の海外流出によるグローバル対応は、実は私たち物流事業者への課題でもあると考えている。また、労働人口減少によるドライバー不足は顕著であり、環境負荷低減への対応も不可欠。これらの課題への対応は急務となっている。

そこでこれら課題への対応を検討し、社会へ、お客さまに対するXフロンティアの存在価値を3つに定義した。1つ目は輸送能力の進化だ。佐川急便の大型センターとして、これまで以上に強い物流インフラを提供していく。2つ目は新たなソリューションだ。中継センターの機能を核として、ロジスティクス、国際物流、大型・特殊輸送などの機能を掛け合わせることで物流ソリューションを進化させる。3つ目はSDGsへの貢献だ。Xフロンティアを通じて、環境負荷低減や働き方改革に取り組んでいく。

まず輸送能力の進化について。Xフロンティアの通過型物流センター機能、スーパーハブはこれまでにない規模と高い処理能力を持つ、これまでを超える中継センターとなる。これにより、スピード、品質、そして波動対応力の向上を実現する。スピードアップとはどういうことか。Xフロンティアがなかった場合、関東内での輸配送について、複数の中継センターを使用して幹線輸送を行っている。しかし、Xフロンティアは規模が大きいため、関東圏の複数の中継拠点を集約することが可能だ。それにより、輸送効率と積載効率が向上し、輸送のスピードをアップさせることができる。

次に、品質と波動対応力について。Xフロンティアではこれまでの中継センターと比較して、施設規模を大きくすることで、着車台数を拡充するとともに、荷物を仕分けるためのマテハン処理能力を高めている。着車バースでは到着60台、発送236台と、これまでにない規模であることに加え、車両の待機スペースが約250台となっており、車両の待ち時間短縮と周辺道路の渋滞緩和が可能になると試算している。また、複数のソーターや小物仕分け機などを導入することで、手作業を減らし、マテハンの高い処理能力を実現した。これらにより、繁忙期や突発的に荷物が増えた場合でも、均一的な品質で滞りのない物流をご提供できると考えている。

1階と3階の仕分けがつながることで、どちらで荷物を卸しても全ての着車バースに仕分けが可能となる。今までにない規模とスピードを誇る佐川急便の中継センターを活用することで、新たなソリューション提案が可能となる。

国際・特殊輸送にもワンストップ型で対応可能

次に、新たなソリューションについてご説明する。まず、SGHDグループならではのワンストップソリューションについて。通常、保管や物流加工についてはお客さまの拠点で行われ、それを佐川急便が集荷し、別の場所で仕分けを行い、複数の中継センターを経て、お届け先に届けられる。グループでは物流加工と仕分け、発送といった複数の輸送工程を同じ拠点の中で行うことができる拠点、SRCと通常呼んでいるが、これを全国に32カ所保有している。Xフロンティアでは、複数の輸送工程をさらに高いレベルで行うことができるようになる。

先に説明した中継機能の処理能力アップ、そしてオートストアや自動棚搬送ロボットなどによる自動化、省人化によりリードタイムを短縮、コストを最適化、環境負荷を低減するなど、ワンストップでのソリューションをさらに進化させることができる。

佐川グローバルロジスティクスのスペースには通常の保管スペースに加えて、従来の3倍の収容能力がある自動型倉庫、商品の保管された棚を作業場まで自動搬送するロボット、さらに自動梱包機などさまざまなロボティクス技術を導入することで、安価にシェアリングが可能なEC事業者向けのオープンプラットフォームを提供する。

さらに、Xフロンティアでは国際・特殊輸送にもワンストップ型で対応可能。SGムービングが提供するテクニカルネットワークを活用した家電や家具の設置、大型特殊輸送への対応、そしてSGHグローバル・ジャパンによる輸出入対応など、グループのリソースを1カ所で効率良く提供することで、お客さまのご要望に非常に幅広くお応えできる拠点になっている。

SGムービングでは関東4拠点をここXフロンティアに集約することで輸送の効率化を実現、また佐川急便の中継センターと直結することで、新たなソリューション提案を実現する。また、国際輸送を担うSGHグローバル・ジャパンでは海外から到着するコンテナをデバンニングし、ECプラットフォームセンターや佐川急急便の中継センターに直結することでお客さまのビジネスに最適なソリューションを提供する。


ワンストップでのソリューション提供(SGホールディングス資料より引用)※クリックで拡大

働く人の作業負荷を軽減

もう少しイメージを膨らませていただくために、考えられる事例をご紹介する。例えば、海外でアルミホイールを製造され、日本で販売するお客さまの事例。通常であれば、海外にあるお客さまの倉庫から輸入後、お客さま倉庫に入庫、仕分けなどを行った後で、全国の店舗に配送という流れになっている。この物流では、複数の物流業者をお客さま自身が手配する必要があり、手間と時間とコストがかかってしまう。しかし、当社の「スマート・インポート」とXフロンティアを掛け合わせることで、SGHDグループが一括でお引き受けし、リードタイム短縮も可能になる。海外ではSGHグループが検品や加工を事前に行う。国内ではXフロンティアに港から直送し、デバンニングを行い、そのまま全国発送に対応できることで、リードタイムの短縮が実現する。もちろん、大口の納品には貸し切り輸送で対応、また複数の店舗へのルート配送など、お客さまのニーズに合わせた輸配送手配もワンストップで提供可能となる。

もう1つ事例をご紹介する。「スマート納品」では、通常であれば納品後に行う仕分け作業を、納品前に当社の拠点で行うというサービスを提供している。商品をカテゴリーごとや納品先ごと、ロケーションごとなど、事前に仕分けされた状態にすることで、お客さまの入荷後の作業負荷軽減につながる。通常は佐川急便の営業所でこの事前仕分けを行うが、Xフロンティアでも仕分け作業を行うことで、営業所を経由しない分、リードタイムを短くすることができる。また、複数の営業所で対応していた案件を、Xフロンティア1カ所で対応することも可能となり、さらなる効率化を実現する。さらにより細かく、最大236アイテムまで仕分け可能になる。

最後に、XフロンティアによるSDGsへの貢献についてご説明する。11、13番に関連する環境負荷軽減と3、8、9番に関連する職場環境改善に貢献することができる。まず環境負荷軽減は、Xフロンティアは複数の中継センターを統合した拠点。経由地を減らすことでトラック台数を減らし、発生するCO2を削減する。職場環境の改善という観点では、荷卸しバースの拡充、荷物仕分けスピードの向上により、荷卸し待ちしている車両の回転率を向上させることで、社会問題にもなっているドライバーの待機時間を削減する。また、処理能力の高いマテハンやロボットの導入などにより、自動化・効率化を促進し、働く人の作業負荷を軽減する。

これまで、お話ししてきた通り、進化したこのフラッグシップ拠点で、輸送能力の進化、新たなソリューション、SDGsへの貢献という3つの価値を提供してまいる。SGHDグループのこれまでの知見を結集し、お客さまに対して新たな価値を提供していくXフロンティアにぜひご期待いただきたい。


会見後の記念撮影に応じる荒木社長

(藤原秀行)

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