ZHD・ヤマト業務提携発表会見詳報(中編)
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詳報前編:「欲しい物が欲しい時に手に入るEC」実現しナンバーワンに
市場が一気に小売り全体150兆円に拡大
Zホールディングス(HD)・川邊健太郎社長
「梱包や集荷の手間が削減できる、費用を変動費化できるということで、ストアさまにとっては大変メリットのあるサービスだと考えている。このような素晴らしいサービスが開始されるのに併せて、ヤフーの方でも今度はユーザーの皆さまにメリットあるキャンペーンを実施したいと考えている。それは、ヤマトの今回説明いただいた新サービスを利用するストアさまの商品限定だが、ユーザーの送料を実質無料にさせていただくキャンペーン。送料に相当する金額をユーザーの皆さまにPayPayボーナスライトでお返しする形で実現する。なお、キャンペーンにおいて、ストアの皆さまにコストを負担いただくことはない。キャンペーンはサービスが開始する6月30日から年内の間を予定している。詳細は今後発表させていただく。ぜひ多くのストアさまに、このヤマトの新サービスをご利用いただき、多くのユーザーによりお得な、送料実質無料のキャンペーンをご利用いただければ、と思う」
「さて、欲しい物が欲しい時に手に入るヤフーのeコマースの進化だが、お手元に商品を届ける物流の考えもわれわれにはある。リアルな店舗との連携について説明する」
会見で説明する川邊社長(写真は全てZHD提供)
ZHD・小澤隆生取締役専務執行役員
「インターネットで物を買った場合は当然(購入者に)届けるということで、届けるところはヤマトさんとの今回の提携で非常にクオリティーの高いものが出来上がるのかなと考えている。ただ、買ったものを受け取る方法としてもう1つ、お店に取りに行くというのも、細々ながら今も存在している。お店は、インターネットにとって、eコマースにとってどれくらい重要なのかということで長らく議論があったが、われわれ、この度、お店があるからeコマースを含めたコマース全体が盛り上がっていくということを考え、新しいサービスを作ろうと思っている」
「今までなかったようなことを織り込んで、さらに展開していこうと思う。お店の在庫が検索の中に出てきた。欲しい商品があのお店にあるんだということが分かる。それで購入すると、もう既に用意されている。お店に行ったらついで買いも起きる。これがまさに、消費者にとっても、お店にとっても、非常に良いことなのではないかと。またeコマースというインターネットに閉じた世界観だけではなく、お店とインターネットを行ったり来たりする、行く前に注文入れたからすっとお店に行って買い物をすると、そういったことがどんどんこれから起きる。お店なのか、ECなのかと分けること自体がばかばかしい、必ず垣根がなくなると、われわれこれをクロスショッピングという新しい概念を提示して、世の中にどんどん広げていきたいと思っている」
会見に臨むZHD・小澤氏
「クロスショッピングをもう少し具体的に説明する。まず在庫がぐっと広がるというお話。これは多くの、お店を持っている企業さまも含めての話だが、EC用に在庫を切り分けて、倉庫にeコマース用という形で在庫を切り分けて、それを表示して検索し、販売していただいていた。もちろんそれはそれでいいが、当然たくさんの種類の中から一部だけだから、種類とかサイズとか色が限定的になってしまう。ただ、クロスショッピングの世界になると、お店の在庫も全てデータとしては、インターネット上に表示しましょうと。実際、お店ごとにしっかりデータを持っていらっしゃる会社がある。そうすることで、インターネット上で掲載されるデータとしては非常に増える」
「お客さまからすると、これはネット上で買える、これはお店にある、という感じ。お店に行く前に、今までお店に行く前、在庫があるのかなという、あの欲しい商品のサイズがあるのかなと、もちろん電話をすれば分かったが、なかなか面倒くさい。インターネット上ですっと検索し、ふっと買いに行く、はずれがない、こういう世界が起きるんじゃないかと。お店からすると、やはりネットを通じてどんどんお客さんが来るという状態がクロスショッピングによって起きるんじゃないかと考えている」
「また、地図を開いて、欲しい商品がここにあると、ぽんぽんと、ここが一番安いんだということを調べてからお店に行くと、こういったことも起きるんじゃないか。これはわれわれ、今特許を申請していて、独自のものになればいいなと思っている」
「ZHDから見ると、市場が非常に拡大することになる。eコマース、単体でも9兆円、10兆円という大きなマーケットだが、お店での購入もわれわれからするとサービスの提供先となるので、市場が一気に小売り全体150兆円に拡大し、われわれがサービスを提供できることになる。PayPayモールもお店にある商品が検索や購入できるサービスに生まれ変わる。これまではできなかった、日本全国のいろんなお店の在庫が、今までできなかった、行くまで分からなかったお店の在庫が検索できるようになる、購入もできるようになる」
「今、第1弾としてお店の在庫が検索できるようになり、第2弾として購入、受け取り、今回のような新型コロナウイルスのような問題が起きると、お店に行くのもちょっと、ということであれば、これはやはりお店から送っていただく。ただ、いつまでもコロナが続くわけではない、3年後、5年後まで恐らく、お店に受け取りに行くという流れは非常に大きくなるだろう。既に3月からここにたくさんあるような会社さまと実店舗の在庫をPayPayモール上で表示が始まっている。お客さまがかなり多く使っていただいていて、われわれも強い手ごたえを感じている」
「そしてクロスショッピングは、恐らくファッションのジャンルにおいて、ものすごく効果を発揮するんじゃないかということで、ここはしっかりとZOZO社長兼CEO(最高経営責任者)の澤田さんに、これからの展望をお話しいただきたい」
「クロスショッピング」を力説
ファッション業界全体を盛り上げるきっかけに
ZOZO・澤田宏太郎社長兼CEO
「クロスショッピングをZOZOとしてどうやって実現していくかをご説明したい。まず昨年12月17日、PayPayモールの中にZOZOをオープンさせていただいた。おかげさまで売り上げはかなり順調に伸びている。今ではPayPayモールの全カテゴリーの中でのナンバーワンショップという状況で走り続けさせていただいている。非常に好調な結果になっている」
「なぜここまで順調な立ち上がりができたかというところだが、やはりまず1つは1100のブランドさんを一気にPayPayモールの中にオープンできた。もう1つは、ZHDでかなり積極的な集客ができた。要はすごくシンプルな話だが、お互いの強みと強みをがっちり組み合わせた結果として、垂直的な立ち上がりができているといったような状況にある」
「そして今回、このクロスショッピングの流れにおいて、もう1つZOZOとして何ができるかを考えた結果、クロスショッピングには店舗の在庫情報が必要だが、今ZOZOタウン本店を運営している状況において、われわれブランドさんの店舗さんの在庫状況を一定数保持している。もちろん、資産としてはブランドさんの持ち物だが、それをPayPayモール店の方に展開しようかと思っている。まず何が不思議かというと、どうしてZOZOの本店がブランドさんの在庫丈夫尾を持っているのか、実はZOZOTOWN本店においては、ZOZOTOWNの中で品切れになった商品については、一部リアル店舗さんの在庫を引き当てるような仕組みを導入させていただいている。そこに参加いただいているブランドさんも結構数多くいる。今回、そのデータをもちろんブランドさんの許可を得た上で、参加しませんかという承諾を得た上で、いったんクロスショッピングの流れの中で、在庫表示に生かしてみようかなと考えている」
会見する澤田氏
「おかげさまで、FREAK’S STORE(フリークストア)さん、Lui’s(ルイス)さん、CIAOPANIC(チャオパニック)さんという大手を中心とした3ブランドさんがぜひやってみたいといったお話を伺っている。大変ありがたいお話。このように、またいくつかのブランドさんも参加していただいた上で、PayPayモールの中での在庫表示、クロスショッピングを試してみたい。試すことでどういうお客さんの動きになるのかとか、売り上げ等々どうなるのか、だいたい見えてくると思うので、そこでうまく行けばZOZOTOWN本店の方に同じような形でサービスを導入していくような流れをわれわれとしては考えている」
「もう少し、じゃあこのサービスについてどういう文脈があるのかといったところを詳しくご説明する。われわれZOZOTOWN本店については、1日に数百万のお客さまが訪れてくれている。一方でECサイトはだいたいそうだが、そこで本当に買っていただけるお客さまは数%。残りの90何%のお客さまは、一部はやはりどうしてもECでは買うのが怖い、やはり店舗に行って触ってみたい、着てみたいという方が一定数存在するのは事実。昔からずっと変わらないが、今回、やはりそういったお客さまのニーズにも応えないといけないんじゃないかという思いがあり、この店頭における在庫の表示を試していこうという流れになっている」
「結局、お客さまのニーズに応えるということが非常に第一義だと思っており、そういうお客さまがいれば、応えていく。そうすることでZOZOTOWNとしてはどんどん便利になる、そうなればいろんなお客さまがサイトに来て下さるということで、より一層ZOZOTOWNとしては盛り上げることができるんじゃないかと思っているし、一方で店舗に送客ができることになると、ファッション業界全体として結構盛り上がるきっかけになるんじゃないかということも考えているので、ぜひこれをきっかけに、業界全体が非常に、なかなか今苦しい市場環境にあるが、業界全体を盛り上げるきっかけになれば、と思っている」
(藤原秀行)