道路は現状通り運営、大混乱は回避か
政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき発令している緊急事態宣言の対象を、現在の東京など7都府県から全国に拡大する方針を決めた。
特措法では対象の都道府県知事が、医薬品などの緊急物資の運送をあらかじめ「指定公共機関」と定められている物流事業者に要請できると規定。物流事業者が従わない場合は、より強制力のある「指示」を出すとともに事業者名を公表できるようにしている。併せて、指定公共機関の物流事業者は既に作成している業務計画を基に、適切に運送できるよう必要な措置を講じることを義務付けられている。
現時点では当初から宣言の対象となっている7都府県の知事がこれまでに指定公共機関の物流事業者に要請や指示をしたと発表はされていない。対象が47都道府県に拡大することから、指定公共機関は協力会社や自治体と連携し、より広範囲で対応を準備しておく必要に迫られる。その際は都道府県からも物流関係者の感染予防をバックアップすることが不可欠。運送事業者などからは「荷主からマスク着用を求められるが不足している」といった困惑の声が多数上がっており、マスクや消毒液の確保といった早急な対応が強く求められる。
営業時間短縮や宅配遅れの可能性も
一方、緊急事態宣言の対象となってもスーパーやコンビニ、ホームセンターなどは生活に不可欠な商品を扱う店舗として都道府県から営業休止を求められない公算が大きく、通常の物流も一般の消費者が絡む領域については、これまで通り継続される見込み。宅配サービスも同様で、以前のような特定の商品の買い占め騒動などが起きない限り、宣言の発令が物流に直接大きな混乱を引き起こす事態は回避できそうだ。
ただ、政府や都道府県知事が外出自粛をさらに強く要請してくることは確実なだけに、物流事業者の営業所の営業時間短縮などの動きが広がりそうだ。外出を控えるためにインターネット通販の利用が増え、配送現場の負荷も大きくなっている中、今後も取扱量が急増していけば宅配に遅れが出ることも予想される。
特措法では、感染が拡大した場合でも政府や都道府県が公共交通機関を止めたり、道路を封鎖したりできる規定は盛り込まれていないため、電車やバス、航空便などは基本的に営業を続ける見通し。ただ、外出自粛の関係で政府や都道府県知事が減便を要請する可能性がある。
感染症法では、新型コロナウイルスを含む「1類感染症」のまん延防止へ緊急の必要があると認められる場合、都道府県知事は72時間以内に限り、感染症の患者がいる場所や病原体に汚染された危険性がある場所の交通を制限・遮断できると定めている。しかし、あくまで消毒を目的としているため、広範囲で長期間交通をストップさせることはできない。海外のような強制的な「ロックアウト(都市封鎖)」は法的根拠が乏しいのが実情だ。
(藤原秀行)