【独自取材】物流系Jリート銘柄の買い戻し進む、年初来安値から2~7割上昇

【独自取材】物流系Jリート銘柄の買い戻し進む、年初来安値から2~7割上昇

EC需要拡大で収益に期待、コロナ拡大下の混乱相場でも存在感

新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の株式市場も大きな影響を受ける中、Jリート(不動産投資信託)も一時、投資口価格(企業の株価に相当)が大きく値下がりした。ただ、投資対象を物流施設に特化しているか、ポートフォリオの中で物流施設が相当な割合を占めているJリート11銘柄は総じて投資口価格が上昇しており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けている商業施設やホテルなどを投資対象とする銘柄の軟調ぶりとは対照的だ。

感染拡大で外出自粛の動きが広がる中、インターネット通販の利用が増えていることから、多岐にわたる商品を迅速に出荷できる先進的機能を持った物流施設は今後も需要が底堅く続き、投資に対するリターンも期待できるとの見方との期待が投資家らの間で広がっていることが背景にありそうだ。

半分の6銘柄が50%以上値を戻す

11銘柄の投資口価格の推移を見ると、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の株式相場が下落していた3月19日に年初来安値を記録。1~2月に付けていた年初来高値から3~5割も下落した計算だ。

Jリートは不動産物件に投資し、得られた賃料や不動産売却益から分配金を投資家に還元する金融商品で、投資家にとっては中長期的に安定した収益が上がることが魅力。本来は株式市場の動きとは連動していないが、世界中の金融市場を“コロナショック”を襲う中、投資家がリスクのある資産を現金化しようと急いだことから、物流施設系のJリートも投資口が売られ、価格が大きく下がった。

その後、4月に入って株式市場が落ち着きを取り戻すのとともに、11銘柄はいずれも値を戻している。年初来安値を記録した3月19日と直近の4月27日の終値を比較すると、74・6%上昇したCREロジスティクスファンド投資法人を筆頭に、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人が70・1%、ラサールロジポート投資法人が69・7%、GLP投資法人が67・4%、日本ロジスティクスファンド投資法人が58・2%など、半分の6銘柄が50%以上も上昇している。

11銘柄とも1~2月の年初来高値にはまだ届いていない。しかし、Jリートの総合的な値動きを示す東証REIT指数は2月20日の年初来高値(2250・65)から3月19日には5割近く下落し1145・33となった後、4月27日の終値時点で1586・58と、年初来安値から38・5%の上昇率なのに比べれば、物流系Jリートの投資口価格が大きく戻っていることがうかがえる。

物流業界では新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な景気悪化への懸念が強まる一方で、先進的物流施設はeコマースの利用増に加え、施設自体が省人化のためのロボット活用をしやすいこともあってテナントニーズが見込まれるとの見方も多い。物流系のJリート銘柄は引き続き、コロナショックが重しとなっている世界中の株式市場で存在感を発揮しそうだ。

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済の成長減速への懸念は依然強く、今後も感染状況によっては収益性に構わず物流系Jリート銘柄が再び売られる場面が起こる可能性は否定できない。スポンサー企業や資産運用会社は安定した収益を挙げるための取り組みが引き続き求められそうだ。

物流系Jリート11銘柄の投資口価格比較(4月27日終値ベース)

年初来高値比 年初来安値比
CREロジスティクスファンド -3.4% 74.6%
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス -6.4% 70.1%
ラサールロジポート -15.9% 69.7%
GLP -11.1% 67.4%
日本ロジスティクスファンド -14.7% 58.2%
産業ファンド -20.3% 57.2%
SOSiLA物流リート -8.6% 45.5%
大和ハウスリート -12.6% 44.7%
三菱地所物流リート -18.9% 37.5%
三井不動産ロジスティクスパーク -17.9% 31.7%
日本プロロジスリート -10.3% 29.4%

(藤原秀行)

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