JLL意識調査、「入国制限や外出自粛で情報取得に支障」の声も
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は5月26日、新型コロナウイルスの感染拡大が不動産市場に与える影響について、国内外の不動産投資家を対象とした意識調査結果を公表した。
現在の投資姿勢としては、全体の7割強が積極的に新規投資を行う姿勢を示し、投資意欲は依然強いことをうかがわせた。セクター別ではオフィスビルやレジデンシャル(賃貸住宅)、物流施設への注目度が高かった。
JLLは「景気後退局面で耐性を持つとされる、いわゆる『インフラ系』セクターの賃貸住宅と物流を併せた三本柱が今後の投資戦略として支持されたといえる」との見解を示した。ただ、民間企業の中にはリモートワークの普及や経済情勢の悪化でオフィスを解約・縮小する動きが出ており、今後の投資戦略にも影響する可能性がある。
また、新型コロナウイルスの感染拡大で日本への入国制限や外出自粛、テレワーク導入が広がり、投資判断に必要な情報の取得に支障が出ているとの回答も一定数見られた。
調査は4月20~27日にインターネット経由で実施。デベロッパーや国内外のファンド、不動産賃貸業、ビルオーナー、金融機関など235件の有効回答を得た。
福岡への注目度、首都圏に次ぐ水準
現在の投資スタンスとして、「価格調整があれば新規投資を積極的に行う」が67・2%、「物件のクオリティーさえ良ければ新型コロナウイルス発生前と変わらぬ価格で新規投資を積極的に行う」が7・7%に上った。経済情勢悪化で不動産価格が下落するとにらみ、投資機会をうかがっている向きが多いことを示唆した。
「状況が落ち着くまで当面、新規投資を控える」は20・9%、「現保有資産の値洗い中」が1・7%、「既存保有物件の一部売却を行う」が1・7%、「既存保有物件の売却を行う」が0・9%だった。
投資スタンスと価格の予想(JLL資料より引用・クリックで拡大)
投資対象のエリアとしては(複数回答)、東京都心5区が16・5%、首都圏全域が14・7%、東京23区が14・3%に達し、首都圏優先の姿勢があらためて鮮明になった。首都圏以外は福岡が11・7%、大阪都心3区が11・1%、名古屋圏が10・5%、関西圏が10・4%、大阪市が8・3%などとなった。4大都市圏の中でも福岡への注目度が高いことが浮き彫りとなった。アジア主要都市に近接し、九州全域をカバーできる地理的優位性や人口増加が続いていることがプラスに評価されているもようだ。
セクター別の投資動向は、オフィスビルが22・6%、レジデンシャル(賃貸住宅)が22・3%、物流施設が17・3%、リテール(商業施設)が9・8%、データセンターが8・0%、学生寮が6・6%などとなった。物流施設の人気の高さが続いていることがあらためて示された。
物件取得に当たっての障害を尋ねたところ、「売り物件の価格が投資目線に合うかどうか」が21・1%で最も多く、「レンダーの融資姿勢が不明確・レンダーの意思決定に遅延が生じること」が15・3%、「投資判断に必要な情報が不足している」が14・7%と続いた。
「入国制限、外出自粛などでデューデリジェンスに支障が出ている」が13・3%、「テレワーク導入などで意思決定プロセスに遅延が生じている」が12・0%に上り、新型コロナウイルスの感染拡大が投資判断に影を落としていることが分かった。
(藤原秀行)