【独自取材】EC市場拡大には「物流代行や効率化ツールの課題解決し利用促進」が不可欠

【独自取材】EC市場拡大には「物流代行や効率化ツールの課題解決し利用促進」が不可欠

ロジレスと「ECのミカタ」が初の受注・出荷業務アンケート調査結果から分析

EC事業者の受注・在庫管理などを一括支援するスタートアップ企業のロジレス(東京・南大塚)とEC業界の情報を専門に扱うウェブメディア「ECのミカタ」を運営しているMIKATA(東京・恵比寿西)はこのほど、EC事業者を対象とした受注・出荷業務に関する初のアンケート調査を実施した。

EC事業者が業務面で最大の課題と捉えているのは「配送コストの高騰」であり、「業務の属人化」や「複数サイト運営に伴う受注業務の煩雑化」などを懸念している向きも多かったことが明らかになった。そうした事情を背景に、物流代行事業者を利用している割合は3割強に達したほか、外部の受注管理や倉庫管理のシステムを利用するEC事業者も一定数存在していることが分かった。

ただ、両社は「物流代行や効率化ツールの導入はまだまだ進んでいるとは言えない」と指摘。今後EC市場拡大を促進していくために、システムの機能充実などの課題を克服し、適正なEC物流効率化支援のサービスを普及させていくことが不可欠との認識を示した。

調査は今年3~4月、「ECのミカタ」読者を対象にアンケートを行い、ECサイト運営者329人から有効回答を得た。6月17日に調査結果を正式発表した。

物流代行は「柔軟な対応できなくなった」が課題

EC業務の課題を尋ねたところ(複数回答)、「送料含む配送コストの高騰」が約180件で全体の約56%に上り、最多だった。「業務の属人化」が約100件、「複数サイト運営に伴う受注業務の煩雑化」が約90件、「事業拡大に伴う人手不足」が約80件などと続いた。


EC業務の課題(以下、ロジレス・「ECのミカタ」調査資料より引用、クリックで拡大)

物流代行事業者を利用しているかどうか聞いた結果、「現在利用している」が37・1%で最も多く、「過去利用していたことがある」の5・2%を合わせると4割強が利用経験を有していることが浮かび上がった。「検討のみしたことがある」は23・7%だった。ただ、「利用も検討もしていない」が34・0%で、「現在利用している」に並ぶほどの割合で存在していた。

現在物流代行を利用している事業者にメリットを確認したところ(複数回答)、「業務効率化が進んだ」が約70件(約57%)、「自社で労働力を確保しなくてよくなった」が約65件(約53%)とこの2項目が圧倒的に多かった。

一方、課題に感じていることとしては(複数回答)、「状況に応じた柔軟な対応ができなくなった」が約50件(約41%)とトップで、「利用前と比べてコストが高くなった」の約35件、「他の物流代行事業者に変えるのが大変になった」の約25件などを大きく引き離した。

物流代行に対しては業務効率化や労働力確保の面で効果を感じているものの、外部委託することでオペレーションを自社で自由に変えるのが難しくなることや、コストアップすることが課題とみなされている姿が浮かび上がった。利用をさらに増やしていくためには、こうした点で利用者が不安を解消できるようメリットを訴えていく必要性がありそうだ。


物流代行の課題

OMSは「機能充実」、WMSは「料金の安さ」で選択

受注管理システム(OMS)の利用に関しては、外部システムが38・3%、自社開発システムが17・6%で、合計すると55・9%に達した。「利用していない」は44・1%だった。

現在OMSを使っているEC事業者に、そのシステムを選んだ理由を答えてもらったところ、「機能の充実」が約80件でトップとなり、「利用料金の安さ」の約70件、「操作性の良さ」の約65件などと続いた。同時に、今使っているシステムに感じている不満でも、「機能が不十分」が約75件で首位となり、続いて「サポート体制が不十分」の約45件、「操作性の悪さ」の約40件などとなった。EC事業者が総じてOMSの機能を重視している傾向が見て取れた。


OMSの課題

倉庫管理システム(WMS)の利用については、外部システムが12・5%、自社開発システムが17・6%で合計30・1%となり、受注管理システムほどではないものの利用が広がっていることが見て取れた。「利用していない」は69・9%。

現在WMSを活用しているEC事業者に、そのシステムを選んだ理由を選択してもらった結果、「利用料金の安さ」が約35件で1位となり、「機能の充実」の約25件、「第三者からの推薦(コンサルティング会社、物流倉庫など)」の約25件と続いた。併せて、今使っているシステムに覚えている課題としては「機能が不十分」が約35件で、「操作性の悪さ」の約25件、「サポート体制が不十分」の約20件などとなった。OMSやWMSの利用を促すには機能面の拡充が大きな鍵を握っているようだ。


WMSの課題

(藤原秀行)

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