【新型ウイルス】サプライチェーンは「効率最優先」型から「臨機応変」型へ転換を

【新型ウイルス】サプライチェーンは「効率最優先」型から「臨機応変」型へ転換を

経産省が20年版通商白書発表、医療物資など安定供給可能なシステム構築訴え

経済産業省は7月7日、2020年版の通商白書を公表した。

新型コロナウイルスの感染拡大で、電気機械や電子部品など一部の財で世界的に生産拠点が集中していたことが明らかとなるなど、サプライチェーンの供給途絶リスクが顕在化したと指摘。「効率最優先」型から「臨機応変」型のレジリエント(強靭)なサプライチェーンへの転換を検討していくことが必要との見解を示した。

併せて、医療物資や食料などに関し、輸出制限などの動きが見られたことを踏まえ、国際協調で緊急時にも安定的に供給可能なシステムを構築するよう求めた。

通商白書は1949年から毎年発行しており、今年で72回目となる。

デジタル化で人の移動制約を乗り越えるべし

白書は現代のサプライチェーンが有する効率的な生産体制、陸海空の機動的な物流、人の円滑な移動の3つの特徴全てで供給途絶リスクが明らかになったと分析。韓国の自動車生産でワイヤーハーネスが調達困難になり生産停止に追い込まれたケースを例に挙げ、特定部材の生産がストップするだけで生産工程全体に影響する現状に懸念を示した。

また、国境封鎖などで人の移動が減少したほか、航空機減便、税関職員や国境管理職員の不足で物流が遅滞したことにも言及。「強靭なサプライチェーンの構築には、生産拠点間を円滑につなぐ安定的な物流ネットワークの維持や緊急時の代替輸送経路確保が重要な課題」と強調した。

これまでにも災害発生を受けて調達先の多様化や在庫確保などの動きが出ていたが、コロナショックは世界規模で発生しており、デジタル技術活用も含めて従来の対応以上の対策を講じる必要性が明らかになったと訴えた。そのため、「製品の用途や性質に応じてボトルネックとなる事態を想定し、解消のためにどのような措置を講じるのか、製品の類型ごとに精緻な議論が求められる」と解説、関係者に調達先多様化などをより積極的に検討するよう促した。

また、感染拡大防止のためには人の移動をある程度制限せざるを得ないため、その代替となるデジタル技術を普及させ、コミュニケーションの制約を乗り越えていくよう要望した。

(藤原秀行)

通商白書はコチラから(経産省ウェブサイト)

災害/事故/不祥事カテゴリの最新記事