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現行の物流改革道半ばの認識多く、次期総合物流施策大綱での取り組み継続に強い期待

現行の物流改革道半ばの認識多く、次期総合物流施策大綱での取り組み継続に強い期待

官民検討会の委員発言再録(後編)

物流に関する関係省庁の施策の方向性を示す「総合物流施策大綱」の策定に向け、官民の検討会(座長・根本敏則敬愛大教授)による議論がスタートした。2021年度から5年間の次期計画に盛り込むべき内容について、今年末までに提言をまとめる予定。

次期大綱は新型コロナウイルスの感染拡大や大規模災害の続発を受け、いかに物流ネットワークの持続可能性を高めるかや、人手不足を踏まえた業務効率化へ機械化・デジタル化をどのように加速させていくかといった点がポイントとなる。

7月16日の検討会初会合では、荷主企業や物流事業者などさまざまな立場の委員から、現在進めている物流現場の省力化や業務効率化の改革で効果が見られるものの、まだ道半ばとの認識が多く出され、次期大綱でもデジタル化などの取り組みを継続していくことへの強い期待感が浮き彫りとなった。各委員の発言内容の概要を2回に分けて紹介する(肩書は検討会事務局資料に基づく)。

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検討会の初会合

テクノロジー活用がマストだが1社の取り組みでは限界

宿谷肇・日本物流団体連合会(物流連)理事・事務局長
「ウィズコロナ」の時代における物流の確立が必要。ラストワンマイル荷物の非接触型受け渡しも重要だが、より重視すべきは物流の大半を占めるBtoBの領域だろう。センターの自動化、省人化や在庫をある程度確保することなどを進めるべきだ。物流の標準化、パレット輸送の徹底、持続可能な物流への転換、現業部門の働き方改革や担い手を増やすための取り組みも必要だ。

田中謙司・東京大准教授
現場をデータ化できているのは実際には現場業務の2~3割にとどまっていたりするので、データベースの整備などができてくると非常に面白いと思う。需要予測も技術進歩で結構正確になってくるだろう。今の取り組みをさらに膨らませていくと、物流のデータを他業種のサービスにもつなげていける。20年後にどんな物流があり得るのかを考えながら大綱も検討していく中長期的な視点が必要ではないか。

野澤知広・イオングローバルSCM社長
1日当たり5000台のトラックと7000人のスタッフが当社の日々の活動を支えている。人をどう確保するかがテーマ。買い物の姿が時間、頻度、まとめ買いなどと従来の姿から大きく変わり、物流も。テクノロジー活用がマスト。1社でやるには限界。川上から川下までどう連携するかが非常に重要なテーマだ。

箱守和之・京葉流通倉庫社長
緊急事態宣言の中で、24時間じゃなくて48時間デリバリーでいいなどの声をお客さまから聞いたが、宣言が終了すると元に戻った。何か(仕組みなどを)共通化できないか。人手不足解消へ業界全体の戦略が必要。メーカー、ベンダー、小売りの連携ももっと取れないか。共通化すればもっと生産性が上がる。

兵藤哲朗・東京海洋大教授
物流関連のインフラ整備が現状に追い付いていない。特に高速道路はSAやPAのトラック用駐車場が足りなかったり、合流部の安全がなかなか確保できていなかったりする問題がある。倉庫の中の自動化などの新技術はだいたい中国から来ているという話も聞いているので、諸外国でどんなものが開発されているのか目配りした資料が欲しい。


発言する根本座長

究極の共同配送ネットワーク「フィジカルインターネット」を研究

藤野直明・野村総合研究所産業ITイノベーション事業本部主席研究員
欧州、米国、アジアでも今議論になっている「フィジカルインターネット」という構想がある。究極の共同配送ネットワークで、デジタル化でトラックドライバーと物流資産の効率をどれだけ上げられるか。研究を進めていきたい。自動運転の活用、データ連携も。

二村真理子・東京女子大教授
環境問題は必ず対応しなければならないので、きちんと検証可能な状況を各社で維持してほしいし、政策的にもサポートが必要。労働力問題も。効率化、標準化、規格化が必要。新たな工夫と新技術で乗り越える中で、政策的対応で規制緩和が今後必要になってくると思う。

堀尾仁・味の素上席理事食品事業本部物流企画部長
2015年に当社を含む食品メーカー6社で共同幹線輸送などを始めた。この6社プラス2社の計8社で製配販の課題にも取り組んでいる。「点」ではいろいろな技術が導入され、工夫もされているが「全体」として物流を取り巻く習慣などはまだ変わっていない。IT、自動化、データ連携は当然見据えておかなければいけない目標と分かるが、現実に抱える問題をどう解決していくか、ぜひ皆さまと共有したい。

(日本通運・溝田氏=堀切智副社長執行役員の代理出席)
金融や製造業と違い、物流は国家を挙げて保護育成されてきた業界ではない。本来、物の価値を最大限高める経済活動が物流。もう1つはやはりDX(デジタルトランスフォーメーション)。電気自動車プラス自動運転は欧米の方が早く、日本の生産性向上が後れを取ることを危惧している。そういう話をぜひ前に進めていきたい。

牧浦真司・ヤマトホールディングス専務執行役員
当社で経営のグランドデザインを発表している。DXの実践はよく言われているが、実際取り組むと難しい。抜本的構造改革とDXを同時に進めようとしている。われわれ自身、まだDXが進んでいないので、サプライチェーンをつなげていくという観点も必要だろう。

馬渡雅敏・松浦通運代表取締役(全日本トラック協会副会長)
トラック運送業界は8割以上が本当に小さい中小零細事業者。大企業は自分たちでデジタル化投資が可能だが、中小零細がデジタル化・合理化に付いていけなければ物流が破綻するとの認識を持っていただきたい。できれば共有できる物流のデジタル化をやっていただきたい。全体で費用分担していただくとわれわれも進んで参加できる。何度も災害やコロナのような感染症が起こると想定してほしい。

矢野裕児・流通経済大教授
オープンな物流情報プラットフォームを構築していくか、連携が重要だ。いかに先を読んだロジスティクスにしていくか、計画的に行っていくかにつなげるのが重要。最終的には作業手順全体を標準化する必要がある。長距離輸送が完全に破綻している。非常に難しい問題。地域物流ごとの物流計画を支えることが重要。いかに付加価値を付けられるか、安定供給できるサプライチェーンを構築すべき。

(藤原秀行)

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