米C&Wがリポートで自動化の動き継続との見解示唆
米不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は7月30日、日本の賃貸物流施設市場の動向に関するリポートを公表した。
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛でインターネット通販を利用する“巣ごもり消費”が拡大するなど、物流施設市場には追い風が吹いていると指摘。慢性的な人手不足解消に向け、ロボット導入の機運が高まっており、いち早く技術革新に取り組んできた物流施設オーナーが強みを発揮していると分析、自動化の動きは今後も止まらず続くとのスタンスを示唆した。
リポートはベースとなる景気動向について「6月も新型コロナウイルスの勢いは衰えておらず、景気は第2四半期(7~9月)も低調に推移すると思われるが、トヨタ自動車が7月には減産幅縮小見通しを発表するなど、少しずつ回復基調が見えている」と分析。
物流施設に関しては、以前より続く人手不足の中で需要が増加しているため、配送遅延などの課題が残るものの、大手デベロッパーがラストワンマイル用拠点開発を発表するなど、「物流環境は今後大きく整っていくことが期待される」との見解を示した。
背景として、アパレルが店舗売り上げの減少もあって在庫を保管する倉庫需要が増加していることがあると解説。「eコマースを通じた販路確保がリテール業界を通じて活発化する一方で、物流施設の新規供給が追い付いていない」と強調した。
その一例として、神奈川内陸エリアは募集賃料が上昇しており、上限付近にある坪当たり賃料(トップ賃料)は第1四半期から2・0%上昇の5100円、前年同期比でも6・3%の上昇を記録したことに言及。下限付近の賃料(ボトム賃料)でも前年同期比4・9%上がったという。
他にも福岡エリアでは新規供給の影響もあって、トップ賃料が前年同期比で9・4%成長し3500円に達したり、大阪内陸エリアのトップ賃料が6・0%の上昇を記録したりと、データセンター用地の人気も相まって「産業用地買収がさらに困難になっている」と総括した。
人手不足に加え、施設内で働く人の間で感染者が発生したことによる一時休止も起きており、「施設内クラスター(感染の集中的発生)への懸念が強まっていると分析。そのリスク軽減のため、梱包作業の自動化や施設内の搬送用ロボット導入など自動機器導入の取り組みが加速する動きを見せていることに触れ、「テナント企業向けにロボティクス技術導入のためのサービスを提供するなど、いち早く技術革新に取り組んできた物流施設オーナーがその強みを発揮してきている」と説明。物流施設デベロッパーやオーナーによる自動化支援にも期待を示した。
(藤原秀行)