【独自取材】「コロナ禍でも拠点増強継続、20年は青森と大阪・堺で新センター整備へ」

【独自取材】「コロナ禍でも拠点増強継続、20年は青森と大阪・堺で新センター整備へ」

キリングループロジスティクス・山田社長独占インタビュー(前編)

今年3月に就任したキリングループロジスティクス(KGL)の山田崇文社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

山田社長は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、物流事業はキリングループの飲食店向け酒類販売が外出自粛の影響で落ち込むなど逆風を受けているものの、基盤となる拠点の増強は継続するとの基本姿勢を強調。2020年は青森と大阪・堺で新たな物流センターを開設させる意向を示した。

 
 

かねて重視している物流サービスの外販拡大は、自社の輸送力向上に加えて荷量を確保し協力会社に利益として還元するとの狙いを実現していくため、引き続き注力する姿勢をアピール。食品や飲料、医療品といった領域に重点を置き営業活動を展開していく考えを明らかにした。インタビュー内容を2回に分けて紹介する。


山田社長(KGL提供)

倉庫確保の難度向上、長期契約締結などでカバー

――今年の3月に就任されましたが、次期社長という話があったのはいつごろですか。
「新社長人事の正式発表が2月14日でしたが、内示を受けたのは1月下旬くらいです。全く予想していなかったので本当に驚きました。話を聞いた時は一瞬、頭の中が真っ白になりました」

――キリンビールで長く営業部門を歩まれたようですね。
「おっしゃる通り営業系ではありますが、実は取引先の酒類卸の方々が抱えておられた納品先のトラック待機時間改善といった課題解決の窓口を担当するなど、物流の領域にも携わってきました。また、米国で従業員が10人くらいの小さなグループ会社の社長を務めていたこともあり、そうした経験から候補に選ばれたのではないかと推察しています」
「人手不足など物流領域の課題は年々厳しさを増しています。営業の現場でもそうした現実を認識していました。キリングループの中でもKGL単体だけではなく、製造部門や営業部門も物流を念頭に置いて対応を考えないといけないということで、物流とは違う畑の人間がさまざまな部門の橋渡しをする役割を担っていると感じています」

――KGL社長に就任されて新たに感じたことはありますか。
「前任の戸叶(弘氏、現キリンビール監査役)から引き継ぎをいろいろと受ける中で、さまざまなステークホルダーの存在を強く感じています。一般貨物の外販のお客さま、輸配送のパートナー企業の方々、構内作業のパートナー企業の方々、親会社のキリングループホールディングスとグループ内の主な事業会社、そして当社の従業員です。それぞれの存在としっかり真摯にお付き合いしていくことが重要な経営戦略そのものだと思います」
「数多くのステークホルダーの中でも当社の高品質な物流業務の礎となり、輸送の完遂を下支えしているのは1人1人の従業員です。社長就任の際に当社内で発信したメッセージでも、そうした思いを伝えました」

――新型コロナウイルスの感染拡大の影響は経営にも影響が出ていますか。
「飲料は外出自粛に伴って消費者の方々が自宅で飲食される機会が増えたため、ミネラルウオーターや清涼飲料水の出荷が増えました。その一方で、緊急事態宣言が発令された後は外出自粛や在宅勤務の動きが広がったことにより、自動販売機やオフィス街のコンビニ店舗など向けの紅茶やコーヒー、緑茶といった商品の出荷がかなり厳しくなりました。お酒も家飲み需要が拡大する一方で、飲食店向けの樽生ビールや瓶ビールなど業務用が大きく落ち込みました。需要は引き続き厳しいですが、キリングループ以外の貨物も含め食品・飲料を中心に取り扱っていますので、何とか持ちこたえられている感じです」

 
 

――新型コロナウイルス感染症の影響がどこまで続くかはなかなか見通しにくいですが、深刻なトラックドライバー不足などを受け、2020年はどのように物流体制の強化を図りますか。
「18年の豪雨災害で物流危機が発生して以来、当社は中期的に計画を立てて、拠点の増強を実行しています。今年も引き続き予定通り進めていきます。飲料に関しては19年に3大都市圏で計5拠点を拡充しました。20年も青森と大阪・堺で新たにセンターを稼働させる予定です。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響で稼働に向けた準備の完了が少しずれ込むかもしれません」

――近年は特に先進的な機能を持つ物流施設の需要が伸び、空室率も首都圏を中心として歴史的に低い水準まで下がっています。適正な物流施設を見つけるのがかなり難しくなっているのでは?
「ご指摘の通り、かなり倉庫が埋まってきています。それに加えて、新型コロナウイルス感染症を踏まえ、リスク回避のため在庫を比較的しっかり持とうという流れになってきているので適当な倉庫を探し当てるのが難しいという感触になってきているのは事実です。かなり大型の案件になると相当長期的に、15年や20年といった契約のレベルで考えていかないとなかなか拠点を見つけにくい環境になっていくのではないかと予想しています。将来の変化への対応もある程度見据えた上で拠点戦略を整備しなければいけないので難易度は確実に上がっていますね」

安全品質管理の出張研修、協力会社とも連携して再開

――以前よりKGLとして注力されている物流サービスの外販拡大にはどう取り組みますか。
「外販拡大の目的は自社の輸送力向上であるとともに、効率的な輸送を組み合わせることで荷量を確保し、協力会社に利益として還元していくことです。もちろん当社としても収益を確保していくことが重要です。そうした目的に資するのはどの案件か、ということを考え、ターゲットを決めて営業担当がアプローチし、仕事を広げていくというのが基本的な戦略です。採算度外視でむやみやたらに仕事を取りに行くようなことはしません」

――外販の主なターゲットはどの分野に据えていますか。
「当社は飲料や食品を運ぶことを生業にしていますので、親和性の高い食品や飲料、医療品といった業界が、当社からのご提案が割合刺さりやすいところですね。カテゴリーとしてはその辺りを想定しています」
「当社が理念として掲げている『運びきる』ということに関しては、先ほども申し上げたように、拠点の整備と固定したトラックの確保、協力会社の皆さまへの確実な利益の還元をかなり意識しています。あとは、やはり誤受注、誤積み、誤配といったミスの発生率をかなり低く抑えられる『キリン品質』が外部のお客さまに評価されることで、外販拡大も進められていると思っています。外販を一気に拡大できるような奇策はありませんが、地道に活動してミスを減らしていく取り組みを今後も粛々と行っていきます」

――サービス品質向上の点ではどういった施策を展開されますか。
「専任部署の『安全・品質・環境室』が安全品質管理の出張研修を手掛けています。おかげさまで自社の各拠点に加え、物流業務に関わっている協力会社の方々からも出張に来てほしいとのご要望をいただいています。新型コロナウイルスの感染拡大で一時期は活動をストップしていましたが、われわれとしては協力会社の皆さまと一緒にサービスの安全品質を向上させたい。感染リスクを抑えられるよう万全を期しながら徐々に活動を再開していきます」


協力会社も参加した安全研修の様子(2018年)

 
 

後編記事:【独自取材】検品レスや出荷日前々日受注、「どの企業にもデメリットはない」とパートナー拡大に意欲

(藤原秀行)

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