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【独自取材】「作り手側の論理で進める物流施設開発の限界を崩したい」

【独自取材】「作り手側の論理で進める物流施設開発の限界を崩したい」

大和ハウス工業・浦川取締役常務執行役員インタビュー(前編)

大和ハウス工業で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

浦川氏は現行の中期経営計画で物流施設への投資額を大幅に引き上げる方針を示したことに関し、都市部と地方エリアの両方で優良な開発用地を想定以上に確保できた結果、建設費が必然的に増加していると説明。新型コロナウイルスの感染拡大で経済情勢が悪化している中でも、先進的な機能を持つ物流施設の需要は依然活発と指摘し、同社の事業に関するポートフォリオの中で物流施設の重要度がさらに高まると展望した。

併せて、コロナ禍で物流施設内の密集状態解消が強く求められる中、汎用性が求められるマルチテナント型の物流施設でも、自動化・省人化に関するテナント企業のニーズをより的確に反映できる新たな開発手法にチャレンジする姿勢を示した。

インタビュー内容を前後編の2回に分けて紹介する。


浦川取締役常務執行役員(2019年4月・中島祐撮影)

計画より10~15カ所は多く用地を仕込めている

――御社は今年6月、現行の第6次中期経営計画(2019~21年度)で盛り込んでいる不動産開発投資計画のうち、物流施設を軸とする「事業施設」への投資額を従来の3500億円から2倍近い6500億円へ引き上げると発表しました。その狙いについてあらためて教えてください。
「方針を発表した後、かなりいろいろな方から聞かれましたが(笑)、投資計画が予想を上回るほど順調に進み、優良な開発用地を取得することができたため、それに合わせて建設費が必然的に増えるということです。建設費の高騰分に充てるとの報道もありましたが、そうではありません。投資額が3500億円を超えることは中計対象期間の途中で予測が付いていましたが、だからといって優良な用地の仕込みをストップするようなことはやめようと考えていました」

――そんなに好調なのですか。
「千葉県の浦安や松戸、神奈川の戸塚といったような物流適地で比較的良い場所を押さえられています。箇所数で言えば、計画より10~15くらいは多く仕込むことができているのではないでしょうか」

――その理由をどう自己分析しますか。
「一概には言えませんが、やはりきっちりと取りに行く物件と必ずしもそうではない物件を明確に仕分けしていることが1つあると思います。それは利便性の良い場所では同一エリア内で複数の物流施設を開発していくということでもあります。例えば、千葉の浦安ではマルチテナント型物流施設を既に2棟開発しており、さらに2棟を新規で開発することを計画しています。1棟目の用地は15年ほど前に取得しましたが、そのころは今から考えると信じられないくらいのリーズナブルな価格で購入できています。最後に購入した用地の数分の1くらいの金額だったと思います。その代わり、お客さまの賃料も安く設定することができました」
「同じエリアで続けて購入した用地が最初の案件から値上がりしていても、お客さまがそのエリアで当社の複数の施設に入居される場合、加重平均すれば賃料は現在の相場よりぐんと安く抑えられます。これはお客さまも全く同じ意見とお話されています。隣地は2倍の金額を出しても購入すべし、とも言われますが、既に入居いただいているお客さまからも続けて物流施設を同一エリア内で開発するよう後押しされました。これはまさに国内で早くから賃貸物流施設の開発に取り組んできた先行者利益をお客さまとともに享受させていただいているということなのかなと思います」

――他にもエリアで複数の物流施設を続けて開発するケースは多いですか。
「結構多いですね。例えば千葉県の松戸でもこれまでに2棟開発し、今さらに2棟の開発計画を進行中です。先行して展開できている物件があるところは、エリア全体で地価上昇などの影響を薄められる効果があります。そのあたりの強みはこれからも活用していきます。もちろん、都心エリアなど超優良地でチャンスがある時は周りに先行して開発した場所がなくても動くべきときには迅速に動きます」

――御社の物流施設開発の大きな特徴となっている地方エリアでの事業展開はいかがですか。
「先ほどお話のあった投資額の上積みも、都市部に加えて地方でも順調に開発用地を獲得できていることが1つの要因にもなっています。物流施設の需要は都市部ほど強くはありませんから事業展開が難しい。だからこそ当社が先行して取り組んでいくことに意義があります。東北一帯から北関東、東京へと続くラインの各地で物流施設を数多く開発できているのはデベロッパーの中でも当社くらいだと思います。地方エリアでは区画整理事業から携わり、生産施設や研究施設などを整備するとともに物流施設を開発していくといったサプライチェーン全体にわたる開発手法がわれわれの特色の1つでもあります。長野の千曲、富山の射水、沖縄など今後も順次開発を進めていきます」


中計における投資計画の概要(大和ハウス工業プレスリリースより引用)※クリックで拡大

「自動化・省人化先行型物流センター」に挑戦したい

――新型コロナウイルスの感染拡大で経済情勢が厳しくなり、先行きも不透明さが増しています。物流施設開発にも影響が出ているのでは?
「経済情勢が厳しいのは事実ですが、Jリートを見ても物流施設をメーンの投資対象とする銘柄の投資口価格(企業の株価に相当)が非常に伸びていますし、賃貸物流施設の需要は引き続き活発です。施設売却の市況も極めて好調です。物流施設は事業のポートフォリオの中でもより重要度が増してくるでしょう。当社グループの中でも先ほどお話したような区画整理事業を強みとする(建設準大手の)フジタと共同開発するケースがさらに増えてくると思います」
「“ウィズコロナ”時代の物流やものづくりに関しては『非接触』を増やす、極力人同士の接触を減らす、人の数を減らして機械化・自動化で補おうとする動きは当面変わらないでしょう。人とAGV(無人搬送機)など機器の棲み分けをどんどん広げていく流れは今後も続くと思います。この先10年、20年、30年と新たな感染症の脅威が現れる可能性はありますから、物流施設でどのように感染防止へ取り組むのかをデベロッパーとしても真剣に考えていかなければいけません」

――自動化・機械化はそもそも物流現場の人手不足が深刻になっていることもあり、デベロッパーとしても今後ますます取り組みが不可欠になると思います。御社としては具体的にどういったことに取り組みますか。
「まだこれは私の頭の中の構想ですが、これからの時代の物流施設の在り方として、お客さまが理想とされる自動化・省人化の姿をより的確に実現するため、まず想定される機械の配置や物の流れなどを考えた上で、その内容に即した建物の設計にしていく、つまりハードからソフトではなく、ソフトからハードを作り上げるという方向に持っていきたいと思っています。建築する側の発想ではどうしてもマルチテナント型の物流施設では階高が5・5メートル、床荷重が1平方メートル当たり1・5トンといった標準的なスペックを採用することが多くなります。これは使い勝手の問題だけでなく、建物の作り手にとっての経済コストの問題が大きい」
「BTS型の専用施設では当然、お客さまのご要望に最大限応じた作り方をしますが、今後はある程度の汎用性が求められるマルチテナント型の物流施設でも、テナント候補のお客さまのご要望をうかがいながら、『自動化・省人化先行型物流センター』とも言えるような、新しい開発の進め方ができないかを探っていきたい。フロアにAGVは何台入れるのが最も有効なのか、そのために柱の間隔はどう設定すべきか、AGVが移動しやすいフロアはどういったものか、といったような点に関し、建築コストなどの面とうまくバランスを取りながら最適な答えを見つけ出していく。汎用性は持たせつつ自動化、機械化をうまく進められるようにするという発想ですね。特に開発当初は入居されるお客さまの顔が見えにくいマルチテナント型は作り手側の論理で開発していくことが一般的です。そうした物流施設開発の限界を崩していかないといけない時代になったと思いますね」

――新たな開発の進め方はどの物流施設で取り入れていきますか。
「今後首都圏で手掛ける施設でトライしてみたいですね。当社内でも今議論しています」

(藤原秀行)

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