関係者と連携したエコシステム構築や専用機体開発でドローン物流加速

関係者と連携したエコシステム構築や専用機体開発でドローン物流加速

ANAHDとACSL担当者、「Japan Drone 2020」で決意表明

ドローン(無人飛行機)に関する日本最大級の国際展示会「Japan Drone(ジャパンドローン)2020 ―Expo for Commercial UAS Market-」(主催・日本UAS産業振興協議会=JUIDA、共催・コングレ)が9月29日、千葉市の幕張メッセで開幕した。

会場で行ったパネルセッションでは、ドローン物流の実現に取り組むANAホールディングス(HD)デジタル・デザイン・ラボエアモビリティ事業化プロジェクトの保理江裕己リーダーと、ドローン機体開発などを手掛ける自律制御システム研究所(ACSL)の六門直哉事業開発本部長がパネリストとして参加。ブルーイノベーションの熊田貴之社長が進行役を務め、ドローン物流の将来像などについて議論した。

保理江、六門の両氏は都市部でのドローン物流という「レベル4」の実現を見据え、多岐にわたる関係者との連携や物流専用の機体開発などを通じて貢献していきたいとの姿勢を強くアピールした。


パネルセッションに参加した保理江、六門の両氏(「Japan Drone 2020」のオンライン配信画面より引用・クリックで拡大)

大阪万博で「空飛ぶクルマ」活用も視野

保理江氏は、長崎県五島市で離島への物資輸送実証実験を展開した際、ドローン運航自体は東京のANA運航管理センターで一元管理したことを紹介。「事業性を考えれば(人件費を抑えるため)いかに人を介在させないかがポイント」と指摘し、事業として成り立たせるためにはオペレーションの自動化を徹底する必要があるとの見解を示した。

併せて、東京都がドローン物流のビジネスモデル構築に関するプロジェクトに、NTTドコモやACSLと連携して小売店舗へのドローン配送に関する実験を行うことにも言及。「ドローンの総合オペレーターを目指したい。さまざまな関係者と連携した『エコシステム』を作る気概を持っている。当社は機体の製造はしていないが、機材を調達して安全運航の人材を育成し、運航を管理するというエアラインと同じことを実現していきたい」と強調した。

さらに、2025年の大阪万博で垂直離発着が可能な「空飛ぶクルマ」で来場者を輸送することを視野に入れていると明かした。

六門氏は、これまでにANAHDや日本郵便などと組んで展開してきたドローン配送の実証実験の成果を披露。政府とドローン関係事業者らによる協議会で30年代の中核事業領域として都市部など有人地帯でのドローンの目視外飛行を実現しているとのシナリオを描いていることに触れ、ACSLの事業戦略として用途別の機体開発、ドローン定額利用のサブスクリプションモデル導入、シンガポールを軸としたASEAN(東南アジア諸国連合)領域への進出本格化、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)設立による有望な新技術の発掘を進めていくとプレゼンテーションした。

さらに、ドローン物流に関し、輸送効率を高めるため、都市部での目視外飛行を想定した中型の物流専用ドローンを開発していく方針を表明した。六角氏は「荷物を入れた箱を持っていると箱自体が空気抵抗を受けてしまう。そうした課題をどうクリアするか、試行錯誤しながら検討している」と述べ、風が強くても飛行できるといった機能を持たせていく考えをのぞかせるとともに、「レベル4が解禁されるころには安心して使える機体を整備していく」との決意を示した。

(藤原秀行)

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