【独自取材】三菱商事が物流ロボット導入支援やシェアリング型倉庫寄託のサービス強化

【独自取材】三菱商事が物流ロボット導入支援やシェアリング型倉庫寄託のサービス強化

新たに人と協働型AMRのレンタル開始、扱う荷姿拡充も検討

三菱商事は、今年4月に提供を開始した物流現場向けのロボット導入支援サービス「Roboware(ロボウェア)」を強化している。取り扱うロボットのラインアップを増やし、物流施設内の業務効率化に関する多様なニーズにより的確に応えられるよう配慮。さらに、オンラインを利用した視察会も展開するなど、新型コロナウイルス禍の中でもロボット導入の効果をなるべく詳しく紹介できるよう努めている。

併せて、倉庫の空きスペースと預けたい荷物をオンライン経由でマッチングするシェアリング型の倉庫寄託サービス「Ware(ウェア)X」に関しても、新規利用開始のハードルを下げるための新たな期間限定キャンペーンに踏み切るなど、顧客対応の拡充に乗り出している。

三菱商事は新たな施策として物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現支援に注力しており、ロボウェアとウェアXもその一環。菅義偉首相の誕生で産業界もデジタル化の機運が高まっているだけに、両サービスを浸透させていきたい考えだ。

ピッキング効率が2倍に向上などと効果想定

ロボウェアは、物流施設内のピッキング作業などを手助けするロボットを月額料金の従量課金制で貸し出す「Robot As A Service(RaaS)」の形態を採用。ユーザーが取り扱う荷物量の増減に応じて適切な台数を使えるようにし、コストを抑えることでよりロボットを使いやすくすることを主眼に置いている。

ロボウェアで提供するロボットとして、既に活躍しているインド発祥のロボットベンチャーGreyOrange(グレイオレンジ)製の「Ranger(レンジャー) GTP」(旧名Butler=バトラー=)のほかに、中国の新興ロボットメーカー、シリウスロボティクスの自律走行型ロボット(AMR)「FlexComet(フレックスコメット)」を追加、本格的に取り扱いを開始した。

レンジャーGTPは商品を納めた専用棚の下に潜り込んで持ち上げ、ピッキング担当の作業員が待つエリアまで運ぶタイプ。一方、フレックスコメットは作業員のピッキングを補助し、歩行距離を減らす協働型ロボット。庫内のレイアウト変更なしに導入可能で、Wi-FiとSIMカードで稼働を始められるため、初期導入が早いのが強みだ。

レンジャーGTPはある程度規模が大きい物流施設でコスト削減や業務効率化の成果を発揮しやすい半面、フレックスコメットは中小規模のEC事業者などでも使いやすい。特性が異なるロボットをそろえ、荷主企業や物流事業者の多様な要望へ柔軟に対応できるようにする狙いがある。


シリウスロボティクスのAMR

ロボウェアは単にロボットを貸し出すだけにとどまらず、導入前の分析・戦略立案から導入後の運用フォローまで包括的に顧客のロボット活用を支援することに力点を置き、初期提案までは無料で対応している。画面のUI(ユーザーインターフェース)を分かりやすくするなど、直感的な操作が可能で初心者でも使いやすくなるよう工夫を凝らしている。三菱商事はロボウェア活用でピッキング効率が2倍に向上したり、移動距離が8割減少したりといった効果を想定している。

さらに、顧客の基幹システムと連携可能な独自のロボット管理ソフトウエア「Roboware Stream(ロボウェアストリーム)」を準備。ロボット導入台数を増やす中で、最適な基幹システムとの連携を進めるため、基幹システム側の改修は最小限で済ませられるのがメリットだ。

ロボットメーカーとも連携し、実際の物流現場でロボット導入の実証を継続。加えて、新たな取り組みとしてウェビナー形式でのオンライン視察会を毎週開催し、コロナ禍でも導入を検討できるよう後押ししている。ロボットのラインアップ自体も別の機種導入でさらに広げていく方針だ。

「申し込みから2営業日内に必ず空き倉庫を提案」

ロボウェアと同じく、物流DX実現のための有力な手段として三菱商事が取り組むウェアXは、同社が米国の倉庫シェアリング業界のリーディングカンパニーとして知名度を高めている在シアトルのスタートアップ企業Flexe(フレックス)と資本・業務提携し、日本にそのモデルを持ち込んだもので、日本の実情に合わせて内容を一部修正している。

専用ウェブサイト上で空きスペースを提供したい倉庫事業者と借りたい荷主企業や物流事業者らをマッチングする。荷物を預ける側は設備や作業スタッフの手配が不要で、保管料は日割り・パレット建てを採用し、使った分だけ支払う仕組み。倉庫スペースを提供する側も、標準価格を設定しているため、細かい料金交渉や見積もりが不要だ。

倉庫スペースを使う側は、ニーズに合った倉庫スペースの検索から料金精算まで一連の過程をサイト上で一元管理できる。ウェアXとマスターの寄託契約を締結することで、案件ごとに簡単な個別契約を結ぶだけで全国各地の最適な倉庫を利用可能となる。

現状はパレット荷姿とかご車が対象だが、引き合いが盛んに寄せられているため、今後は他の荷姿や作業の取り扱いも始めていく予定だ。さらに、今年12月末までの間、申し込みから2営業日内に必ず空き倉庫を提案するキャンペーンを展開中だ。利用者に加え、倉庫スペース提供者にとってもメリットがあるよう配慮している。


キャンペーンの概要(三菱商事ウェブサイトより引用)※クリックで拡大

(藤原秀行)

(了)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事