株式85%取得計画、AI活用の需要予測や“レジなし決済”などDX加速狙う
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米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と楽天は11月16日、スーパー大手の西友に共同で出資すると発表した。
西友の親会社、米小売り大手のウォルマートから西友株をKKRが60%、楽天が2021年1月に新設する予定の子会社「楽天DXソリューション(仮称)」が25%をそれぞれ取得する。ウォルマートは残る15%を継続して保有する予定。株の取得額は開示していない。KKRと楽天は西友株式取得に際し、西友の企業価値を1725億円と算出している。株式取得は21年の第1四半期(1~3月)に完了する見通し。
西友は02年、ウォルマートと資本・業務提携を結び、08年にウォルマートが西友を完全子会社化していた。その後、楽天とウォルマートは18年に日本国内のEC領域で提携。同年秋からは楽天と西友が共同でインターネットスーパーを展開するなど、相互に協力関係を構築している。
新型コロナウイルスの感染拡大でECの利用急増など事業環境が激変しているのを受け、今後は世界各地の小売業に投資してきた経験を持つKKRと楽天、ウォルマートが連携し、西友の流通領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる。
具体的には楽天DXソリューションを軸として、AI(人工知能)を駆使した需要予測に基づく在庫管理や価格決定の効率化・迅速化、スマートフォンのアプリを活用した買い物の利便性向上、“レジなし決済”の導入、ECと実店舗を融合したオムニチャネルの展開拡大などに取り組むことを視野に入れている。楽天DXソリューションはさまざまな企業とタッグを組む構えを見せており、東急が既に提携を検討しているという。
西友のリオネル・デスクリーCEO(最高経営責任者)はKKRと楽天の株取得手続き完了後、ウォルマートに移る見通し。その後はKKRと楽天、ウォルマート各社が選出する取締役で構成する取締役会で新たなスタートを切る。
ウォルマート国際部門のジュディス・マッキーナ社長兼CEOは「今後はKKRや楽天と協業しながら、ウォルマートは少数株主として引き続き、西友の成長を支える」とコメント。
KKRアジア・パシフィックのプライベート・エクイティ共同責任者(KKRジャパン社長)の平野博文氏は「コロナ感染拡大という厳しい環境の中で日々消費者のために働いているアソシエイトの方たちに感謝するとともに、今後は西友のさらなる発展に向けて共に働くことを楽しみにしている。将来的にはデジタル化を一段と進め、大きく変わりつつある消費者のニーズを捉えながら買い物がより利便性の高いものとなるよう、経営陣やアソシエイト、そして楽天やウォルマートと連携し、協業していく」との談話を発表した。
楽天の武田和徳副社長執行役員コマースカンパニープレジデントは「『楽天西友ネットスーパー』協業での成功から得たノウハウに加え、eコマースやデータマーケティングなど楽天の有する知見を生かし、西友の実店舗におけるDXを加速させる」と語った。
(藤原秀行)※西友店舗写真は楽天プレスリリースより引用