EY調査で判明、「停滞は短期的」と予測
国際会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング(EY)は11月2日、世界主要企業のM&Aに関する動向などをリサーチした「第19回EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査」の結果を公表した。
「今後12カ月間に買収を計画している」と回答した日本企業の割合は50%で、半年前の調査時の73%から20ポイント以上低下した。調査は日本を含む45カ国・地域における2600人以上の経営層を対象に年2回行っている。
EYは「グローバル市場におけるM&A数が過去最高に近い数であるにもかかわらず、企業の買収意欲はここ4年間で最も低いレベルになっている」と指摘した。米中両国の貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱交渉などが影響した可能性がある。
ただ、短期的にマーケットの安定性や株式価値が低下すると予想している割合はわずか2%にとどまった一方、採算が取れないことなどを理由に売却すべき事業を決めていると答えた日本企業は全体の65%に上るなど、M&Aへの意欲が本格的に冷え込んでいるわけではないことを示唆した。
日本企業の経営層の20%は、英国内を含む国際的な投資機会に着目していると回答した。
EYトランザクション・アドバイザリー・サービスのヴィンセント・スミス会長は調査結果に関し「地政学上の、あるいは貿易および関税の不確実性により、M&A活動については“一時停止ボタン”が押されたような状況と考えている」と指摘。
M&Aの件数は年初に比べやや停滞したまま推移するとみているものの、「企業はおそらくこの小休止期間を、過去12カ月間に行われた多くの案件を統合し、シナジーを出すことに注力する良い機会として捉えている。M&A活動は停止したのではなく、あくまでも一時的な充電期間にすぎないと考えている」との見方を示した。
先行きについても「日本では経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は力強く、また案件に対する戦略的必要性は国内外問わず依然高いため、買収への意欲は2019年の後半に向けて再び高まってくる」と予測している。
(藤原秀行)