【大雪,解説】繰り返された立ち往生、総合的な検証不可避

【大雪,解説】繰り返された立ち往生、総合的な検証不可避

通行止めなど対応遅れ、悪天候時の物流の在り方も協議へ

先週末を挟んで各地で大雪に見舞われ、高速道路では一時、大量の車両が立ち往生した。国土交通省や高速道路運営会社は過去の教訓を踏まえ、早めに対策を繰り返し呼び掛けるなどしたが、交通の動脈が機能不全に陥る深刻な事態は昨年末に続き、再び起きてしまった。

赤羽一嘉国土交通相は1月12日の閣議後記者会見で、再発防止策を早急に検討する構えを見せた。短時間に想定外の降雪量を記録し関係者の対応が遅れたことが響いたとみられるが、事前の備えがどの程度生かせたのか、総合的な検証が不可避となっている。

北陸自動車道では福井県内の複数箇所で雪による立ち往生が起こり、高速道路運営会社などによると最大約1600台を超える車が巻き込まれた。東海北陸自動車道の富山県内区間、中部循環自動車道の福井県内区間でも同様に動けなく車が大量に発生。両県の災害派遣要請を受けた自衛隊員や国交省と両県の関係者らが懸命の救助、除雪作業を続け、同12日朝には全て解消となった。

大雪による車の立ち往生と言えば、2018年の「福井豪雪」がいまだ記憶に新しい。福井県内で当時、通行止めになった高速道路を避けようとして多くの車両が迂回路の国道8号に流れ込んだ結果、一時は1500台規模の立ち往生となった。

福井豪雪による立ち往生を受け、国交省や高速道路会社などは対策を協議。SNSを使って積極的に道路や気象の情報を発信するほか、除雪車両の配備、関係者間の情報伝達迅速化、立ち往生した際の救出訓練拡充などを打ち出していた。併せて、AI(人工知能)を活用した交通障害自動検知システムを運用、交通量の変化などから車両の滞留を早期に察知し、迅速に救出できるようにすることにも取り組んでいる。

今回の大雪でも、除雪のため高速道路を予防的に通行規制するなど、国交省や高速道路会社が積極的に対応してきたが、地元自治体などの関係者からは「短い時間で急速に多くの雪が積もったため、通行止めなどの対応が後手になってしまった」と悔やむ声が聞かれる。

赤羽国交相も閣議後会見で、立ち往生の理由として通行止めにするタイミングが遅れたことや、渋滞の状況把握が不十分だったことを列挙。併せて、車両滞留に大型トラックが含まれていた点を踏まえ、大雪の際に荷主企業の対応を含めた物流の在り方を協議する必要があると指摘した。


昨年末から今年の年始にかけて関越自動車道で実施した集中除雪作業の様子(国交省報道発表資料より引用)

納品日や走行ルート変更など柔軟な対応の有無が問われる

大雪の予報が伝えられる中、多くの運送事業者は大雪が見込まれるエリアでトラックの運行を見合わせたり、納品日の変更を荷主企業に求めたりするなど、対策を講じている。しかし、一部の運送事業者からは「できるだけ配送してほしいと荷主サイドから強く要請され、やむなくトラックを出した」との話も出ている。

国交省は暴風や大雨など異常気象時に運送事業者へトラック運行を強要する荷主企業に対し、社名の公表などがあり得ると警告、危険行為をけん制している。今回の大雪でも、運送事業者が事前に万全の備えをしていたかどうかに加え、荷主が運送事業者の要請に応じて納品日や運行経路の変更など柔軟な対応をしていたかどうかが問われる。

政府が働き方改革の一環として、トラックドライバーの長時間労働改善などの旗振り役を務めている「ホワイト物流推進運動」でも、異常気象時の安全確保が大きなテーマの1つとなっている。長時間雪の中で立ち往生を強いられるのはドライバーの健康や生命にも脅威になりかねないだけに、同運動の趣旨を実現していくためにも、国交省などが率先して今回の事態が起きた背景をより深堀りし、公表することが責務となっている。

(藤原秀行)

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