市街地上空飛行のレベル4、飛行実現にはあと数年必要と展望
ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大名誉教授、東京大未来ビジョン研究センター特任教授)は1月21日、年初の記者会見をオンラインで実施した。
鈴木理事長は毎年年初に示しているドローン普及の目標として、2021年は「ドローン災害活躍元年」を掲げ、災害時の援助物資輸送や上空からの被災状況把握、被災者救出などの領域でドローンが広く使われるようJUIDAとしても後押ししていく方針を強調した。
また、JUIDAで21年に取り組む重点事業として、ドローンの産業利用加速のため、特定の用途に求められる高度な操縦や安全管理の技能・知識を有していると証明するライセンス「専門操縦士証明証」の本格運用、ドローンの大規模展示会「Japan Drone(ジャパンドローン)」の地方版開催などを列挙。国際的な活動にも継続して注力する意向を表明した。
一方、政府が22年度の実現を目指している、人口が多い市街地上空で操縦者の目が届かない遠距離までドローンが自律飛行する「レベル4」については、個人的見解として、制度整備が22年度に完了しても、実際にレベル4の条件を満たしてドローンが飛ぶようになるには、技術的な課題などからあと数年は掛かるとの見通しを示し、ドローンの安全飛行技術の研究開発などが進むよう期待をにじませた。
21年は「ドローン災害活躍元年」に(JUIDA資料より引用)
ドローンでプログラミング教育も
鈴木理事長は20年の活動やドローンの利用状況を振り返り、JUIDAの会員が法人と個人などを合わせて昨年12月時点で1万3687、ドローンの安全な操縦や運航管理を教えることが可能とJUIDAが認定したスクールも国内外で238(うち海外は1)に達したことなどを紹介。新型コロナウイルスの感染拡大下でもドローン利用に携わろうとする動きが着実に広がったことを歓迎した。
また、非接触で物を届けることなどが可能なドローンの有用性がコロナ禍で着目されていると分析。「(ドローン物流などの)追い風になっている」と期待を示した。
JUIDAの重点事業として、JUIDAの認定スクールで新たに、小中高校生を対象としたプログラミング教育「ドロミングラボ」を広める方針を表明。JUIDAなどが開発したテキストやカリキュラム、教材を利用し、プログラミングで実際にドローンを動かし、プログラミング教育につなげることを視野に入れていると解説した。
また、JUIDA認定スクールで取得可能な専門ライセンスの第1弾として、石油化学プラントの点検をドローンで行うための「プラント点検専門操縦士」と、林業従事者向けに森林の測量などをドローンで実施できるようにする「森林測量専門操縦士」を展開すると説明。
政府が「レベル4」実現に向けて創設を目指している操縦の免許制度は安全な操縦と運航管理に不可欠な基本的事項をカバーする一方、より高度な領域をJUIDAの専門操縦士のライセンスが補うことを想定しており、必要に応じて物流や他の設備点検などにも専門操縦士証明証を創設していく可能性を示唆した。
また、都市部に加えて地方でもドローンの産業利用への機運を高めていくため、毎年千葉市の幕張メッセで開いている「Japan Drone」の地方版実現を図るほか、大分県で1~3月の間、新規のドローン活用サービスを展開しようとしている人たちを対象に人材育成を図る事業を行っていることに触れた。
鈴木理事長(JUIDA提供)
海外の団体と協力協定拡大
国際展開では、インドネシアで昨年2月、初のJUIDA認定スクールを開いたのに続き、マレーシアやサウジアラビアでも展開していく方向で準備しているほか、既に21カ国・30のドローン産業振興関連団体と締結しているMOU(協力協定)をさらに広げる方針をあらためて明言。
かねて注力しているISO(国際標準化機構)でのドローンの運用手順に関する国際標準化の活動のうち、人材教育で日本発のISO規格が1月26日に制定される予定と明らかにし、日本が他の領域でも積極的に標準化の議論をリードしていくことに強い意欲をのぞかせた。
災害時のドローン活躍については、救助物資輸送の面で、国土交通省と連携して物流拠点に使えるような離発着場の標準化に向けたガイドラインの作成、適切に操縦できる人材の育成などを視野に入れていることを明かした。
(藤原秀行)