JLLリポート、コロナ禍でもEC拡大が追い風と展望
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は3月30日、関西圏の不動産市場に関するリポートを公表した。
この中でJLL日本の関西支社でリサーチディレクターを務める山口武氏は、大型の賃貸物流施設に関し、2021年は過去最多の供給量が見込まれると指摘。併せて、需要もeコマース市場の伸びを背景に堅調のため、「需給バランスが悪化する可能性は低い」と展望した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は限定的との見解を示した。
リポートは20年の市場を振り返り、新規供給が45万1000平方メートルと前年の3倍に拡大したが、供給に見合う需要が創出され、20年末の空室率は前年同期比0・1ポイント上昇の3・3%で依然低水準を維持したと指摘。「大手のEC事業者がさらに業容を拡大し、新たな通販事業者の参入やメーカーによる直販なども相次いで見られ、需要拡大につながった」と説明した。
20年末の坪当たり月額賃料も2・3%アップの3987円で、15年から5年連続で上昇。初の4000円台も21年の早々に到達すると予想した。
需要に関しては、ここ数年は内陸エリアに集中し、内陸エリアと湾岸エリアの格差が拡大しながら全体の賃料が上がっていたと解説。20年は内陸エリアの上昇がやや鈍化する半面、湾岸エリアの上昇が顕著となり、全体の賃料がアップしたとの見方を示した。
21年については、新規供給が現時点で約110万平方メートルと見込まれ、大量供給だった17年をさらに上回ると予測。そのうち9割はテナントのニーズが旺盛な内陸エリアという。JLLは「コロナ禍でもEC市場の拡大は追い風となっており、今後も需要が減退する可能性は小さく、新規供給によって需給バランスが悪化する可能性は低い」と総括した。
今後に関しては、関西圏で物流マーケットのエリアは着実に広域へ展開していると明言。その背景に、新名神高速道路の拡充や先進技術導入による省力化の実現性向上を挙げた。
需給バランスの推移と予測(JLL資料より引用)
(藤原秀行)