【独自取材】8Kカメラと5G回線で倉庫などの事故状況を遠隔把握、再発防止提案へ

【独自取材】8Kカメラと5G回線で倉庫などの事故状況を遠隔把握、再発防止提案へ

東京海上日動火災保険が対応強化、3年間で30件程度の実施目指す

東京海上日動火災保険は、損害保険の契約企業が構えている倉庫や工場などで発生した事故の内容を分析、具体的な再発防止策をアドバイスする「ロスプリベンション(ロスプリサービス)」の対応を強化している。

新型コロナウイルスの感染拡大で同社社員が現地を訪問して調査する活動が制限される中、広角撮影が可能な超高精細の8K映像カメラと5G(次世代超高速通信規格)の回線を活用し、同社社員が現地に赴かなくても遠隔地から現場の様子を細かく把握できるようにする試みをスタートした。

今年3月に実証実験を行い、効果を確認した。同社は5G回線の普及を前提として、今後3年間で30件程度の調査に活用していきたい考えだ。


遠隔調査のイメージ(東京海上日動火災保険提供)

ロスプリサービスは、人間が効率的に動けるよう環境を整えることで事故やミスを極力低減する学問「人間工学」の考え方を基に、日々の現場オペレーションを細かく観察。さまざまな事故現場を調査、蓄積してきた膨大なデータも踏まえ、転倒や衝突、落下、体の挟まれといったトラブルの危険性が潜んでいる場所や作業内容を特定、改善を後押しして事故を未然に防ぐことを目指している。

例えば、作業時に腰や肩へ負荷が掛かる姿勢となっている場合はマテハン設備のレイアウトを変更して動きやすい作業の流れに変更するよう提案。現場に事故防止の注意喚起のポスターを貼る場合は、警告色を使ったり文言を簡略化したりして目につきやすいデザインを施すよう助言する。損害保険金の迅速な支払いにとどまらず、顧客の事故防止サポートという新たな付加価値を提供することで差別化を図るのが狙いだ。

コロナ禍拡大後の2020年には、ウェブを経由して現地のスマートフォンやタブレット端末と東京海上日動のパソコンを接続、改善点を提案する遠隔調査を開始した。ただ、現場でスマホなどを使って動画を撮影する従業員らはもともと事故調査に慣れていないため、同社からの指示内容がどうしても増え、業務が煩雑になるため通常の調査より時間を要していた。

そこで、画像解析技術開発のブライセン、8Kカメラを提供するシャープ、5G回線を提供するNTTドコモと連携。電機機器製造・販売の北菱電興(金沢市)のいなほ工場「Smart Smile Factory」内で実証実験を行った。

その結果、8Kカメラで撮影した高解像度の映像を5G回線で伝送し、遠隔地でもリアルタイムで広い工場や倉庫内の細部に至るまで鮮明に診断できることを確認できた。8Kカメラは撮影側が広角に撮影することが可能となり、施設内の目が届きにくい箇所まで記録するなど、現場のリスクを詳細につかめるという。

従来行ってきたウェブ活用の遠隔調査は丸1日必要なケースもあったが、8Kと5Gの活用により約2~3時間に短縮できると期待している。東京海上日動は5G回線の利用可能な工場で導入を進めていく方針だ。

(藤原秀行)

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