セイノーHDとエアロネクスト、早期に国内初の常時運用目指す
ドローン(無人飛行機)開発などを手掛けるスタートアップ企業のエアロネクストは5月22日、山梨県小菅村でセイノーホールディングスグループと連携して実施しているドローン配送の試験運用を、ロジビズ・オンラインなど一部メディアに公開した。
住民が商品を注文すると、ドローンが自律飛行し、村内の専用受け渡し場所に届けている。現在は村内の8集落のうち1集落で実施しており、年内をめどに全ての集落へ配送ルートを開設することを目指す。
併せて、2021年の早期に国内で民間企業として初めて常時ドローン配送を実施できる体制を確立したい考えだ。
小菅村の空を飛ぶドローン
注文なくても飛ばしてデータを蓄積
小菅村は東京都との県境エリアの山間に位置し、人口は約700人。村内に大型スーパーがなく、買い物は近隣の大月市などへ出掛ける必要があるため、両社はドローンによる日用品や食料品の配送で地域に貢献できるとみて、4月末から小菅村の協力を得て試験運用を続けている。その前段として、エアロネクストはドローン配送による地域活性化に向け、小菅村と協力協定を締結した。
配送は村内の空き家を改修した拠点「ドローンデポ」で注文を電話やメールなどで受け付け、ドローンに商品を積み込み、受け取り場所の空き地まで約500メートルを数分で飛行。電話で連絡を受けた住民が空き地へ取りに行くとの流れだ。商品が入った箱を切り離すとドローンは再びドローンデポ近隣の離発着場まで自動で戻っていく。
現在は週2日、午前11時半と午後1時、午後3時の計3回配送している。取り扱っている商品は牛乳や野菜、パン、卵などで、複数の商品を組み合わせた「朝食セット」や「ビールセット」なども注文が可能。
「ドローンデポ」
将来のドローン飛行のイメージ(エアロネクスト提供)
注文があった商品を箱に詰め込み、ドローンに搭載する
受け取り場所に向けて自律飛行
どのような商品が必要とされているのか村民のニーズを探っており、今後ラインアップを増やしていくことも検討。配達する時間帯も臨機応変に対応している。飛行実績を積み重ねて安全に飛行可能な風速の条件といったデータを把握するため、商品の注文が入らなくても時間が来ればドローンを飛ばしている。
この日は3回とも注文が入り、このうち午前11時半は2件の注文を受けたため、2回に分けて配送した。午後3時の便で朝食セットを注文した同村の川池地区の女性は、この日初めてドローンが飛ぶところを見たという。そのスピードの速さに目を丸くしながらも「とても便利。また利用したい」と満足そうだった。
現状ではドローンから切り離した商品をスタッフが注文した住民に手渡ししているが、将来は専用の台(ドローンスタンド)に荷物を置くことで、完全に人手を介さず商品を届けられるようにすることを視野に入れている。
自動的に着陸し、荷物を切り離す(写真を一部加工しています)
注文した女性に手渡し
無事届いた朝食セット(写真を一部加工しています)
セイノーHDとエアロネクストは、山間部などの過疎地でも確実に荷物を各世帯へ届けられる「スマートサプライチェーン」の確立を目指しており、今年1月に業務提携。小菅村でもドローンなどを使った配送「SkyHub(スカイハブ)」として提供しており、トラック配送とドローン配送を組み合わせて運営している。
トラック配送に関してはセイノーHD子会社のココネットが実施し、ドローンデポで地元スーパーからの商品を一時保管、仕分けして各住戸へ配達している。ドローンありきではなく、その時々で住民にとって最適な手段で物を確実に運ぶことを重視している。
セイノーHDとしては現場の人手不足を踏まえ、より効率的に全国へ物を届けられる体制に移行し、持続可能な物流網を目指したいとの狙いがある。両社は小菅村で「SkyHub」を実用化し、全国に817存在している過疎地域がある自治体に順次横展開していくことをイメージしている。
「SkyHub」の運用イメージ(セイノーHDとエアロネクスト提供)
(藤原秀行)